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第九十七話

「ぶわっははははっ」

そう金色の短髪の男が笑う。

「へへっでねこいつ。寮生が犬を飼うことに一番反対してたくせに」


酒を口につける。泡が無精ひげに残った。

「一番面倒見るのはやっぱりジャンなんだよなあ!」

「もうやめてくださいよゴーディさん。昔の話は」


そう男、三人顔を見合わせて笑い合ってる。

私は完全蚊帳の外だ。同窓会か。

さっきまでの警戒心はどこに消えたんだねジャン君、クルス君。


「いやあカーシャちゃん。ゴーディさんにはねもう騎士学校の時代からお世話になっててね。まだ灰騎士でしたよね? もうその頃から最強の剣士だった!」


「やめろよーそんな話は! 最強なんてよせよー! 俺嫌いだなーその呼び名」

そう黒騎士は眼を細めて笑う。

もうどっからどうみてもそこら辺の無精髭を蓄えた中年男性だ。


「騎士学校時代、何回こっそりと訓練用の剣を借りにいったか!」

「お前ら忘れすぎなんだよ!」

「いやあ申し訳ない。でも教官が怖くって!」


あははと三人で空を見て笑い合う。

なんだこの状況。


「はは。ああそうだ。ゴーディさん。いい加減俺を黒騎士に推薦してくださいよ。現職の黒騎士の推薦が一番早く試験を受けられるんですから」

そうジャンが笑いながら言う。


「駄目だ」


そう黒騎士は冷たい声で言った。

まるで酒なんて今まで飲んでなかった様な声の鋭さだった。

その声にジャンは戸惑う。


「……なっ何でですか? 俺は剣の腕だってもう」

「俺はお前に黒騎士になって欲しくない」

彼はそうはっきり言った。


「はっきり言って推薦するならクルスの方が実績的には近いぞ。この前の手柄もあるし剣の腕も申し分無い。比べてお前は何だ? 今回の戦で何をした? 魔法使い一人、女一人守れもしないで?」


ジャンは黙る。

「……過去に縛られるのはよせよ。お前の動機はそこだろ? 黒騎士というのは全てを教会に捧げる覚悟を持つ人間がなるんだ。黒というのはその象徴だ。全ての汚れを引き受ける精神をお前は持ってるのか? ……お前には無理だ。お前は優し過ぎる」


ジャンは唇を震わせながら反論する。

「……勝手に俺を決めつけないでください」

ゴーディさんは冷ややかな眼で彼を見た。


それから私に指を向ける。

「ふーん。よしじゃあ。そこの魔法使いを殺せ。そうしたら推薦してやる」

ジャンは明らかに動揺した顔をした。


「おいおいどうした? まだ始まりだぞ。黒騎士ってのはな。女や子供を殺した家で家族が食べるはずだったステーキを堪能できるぐらいの精神力じゃないとつとまらんぞ?」


彼は挑発する様にジャンの顔を覗き見る。

「あれどうしたんだ? ん? 妹を助けたいんじゃなかったのかな? まあそんなもんだよ誰も。自分の言葉に酔うだけで正義の実行者たりえない。だから言ったろ。そんな中途半端なお前は中途半端な色……」


ジャンの柄を握った手が震えている。

「『灰騎士』がお似合いなんだよ」

そう無精髭の男は歪んだ笑みを見せた。

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