第十話
「俺はもう我慢が出来ない!」
そう生徒の一人が酒場で声を荒らげる。
私は黙って貴族の家で稼いだ給金を数える。
「俺たちとあいつらの何が違うっていうんだ!?」
「魔法使いの特徴を述べよと先生は言うだろね」
そう一人の生徒が眼鏡を直す真似をする。
「魔晶石に反応するからか?」
「他にも体力が著しく低い」
「精神的に不安定などが挙げられるね」
他の生徒達が惰性的に答える。
「だからって差別していいのかよ?」
「政策なんだよ。政策」
そう諦めた様に言う生徒の胸倉を声を荒らげた男の子が掴む。
「誰かを犠牲にして作る平和が正義なのか!?」
皮肉気な口調の生徒は答える。
「もちろん違う」
彼はへへっと笑う。
「だがそれを容認する多数派がいる限り弱者を虐げる構図は無くならない」
「クソ野郎が!」
彼はその皮肉気な男の子を突き飛ばす。
「カーシャはどう思う?」
「そんな社会が間違ってると思う。でも、」
私は言葉に詰まる。
「私達には変えられる力が無いよ……」
皮肉気な男の子は笑う。
怒りっぽい男の子は机を叩く。
「俺は戦争に行きたいよ」
彼は酒を煽る。
「戦って自分の居場所を作りたい。もう馬鹿にされるのはうんざりだ!」
そう彼は汚れた酒場で叫んだ。