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第一話
布団で寝転んでいると木戸を叩く音が聞える。
「カーシャさん。いいかげん家賃を払ってくださいよ」
起きていたが無視する。
魔学院に行くまでもうちょっと寝ていたい。
そう汚れた毛布を身体にひきよせる。
「くそっ!」
そう大家のおじさんが怒った声を出す。
彼が階段を降りていくと木板が軋む。
銅貨も銀貨も持ってないんだから勘弁してよと思う。
「払えるものがないから仕方ないよね」
そう頭を掻きながら起きた。
ベッドの向かいにある化粧台の割れた鏡を見る。
「ひどい寝癖だなあ」
そうはねた黒髪をなおす。