まさか、アレ?
シリウスはガンナーで眼鏡をかけており、性別は男。多少童顔だが、顔の造形は整っている。
アスクは魔法剣士で、凛とした雰囲気を漂わせている。性別は女。ツンデレかどうかは分からないが、十人が見れば十人ともが美人と認める容姿だろう。
互いが互いの条件に奇跡的に一致している。何よりも、問題事を一つにまとめられることが最大のメリットだろう。パーティーとして組めるのは4人までなので、この二人を一つのパーティーにまとめてしまえば、あとの仲間は二人で済む。
少なくとも、妙な注文をつけられてパーティー二組分の仲間を紹介するよりかは楽になるだろう。そう考えた老店主は、カウンター席で瞑想を始めたアスクに声をかけた。
「お前さん、ちょっとよいかの」
「む、どうした? ご老人。まさか、もう見つかったのか。だとすればなんと仕事が早いのだ、感服するほかない」
「とりあえず、一人だけじゃがな。眼鏡男子のガンナーとやらならば見つかったぞ。ほれ、そこにおるシリウスという男なんじゃが、仲間にどうじゃ?」
すみのテーブル席に座り、食事を続けているガンナーの若者を指差す老店主。
美貌の魔法剣士は、老店主の指先が示す方向へ期待の眼差しをこめて振り返ったが、しばし視線をさまよわせると怪訝そうに眉をひそめた。
「ご老人、からかってもらっては困る。そんな人物、どこにもいないではないか」
「いや、お前さんこそ何を言っておるんじゃ。そこにおるではないか」
現在、この店の中にいるのはテーブル席に座ったガンナーと、カウンター席に座った剣士、その目の前の老店主の三人しかいない。見間違い、人違いなど起こりようもない状況だ。
だが、視線を巡らせた魔法剣士は再び老店主の言葉を否定した。
「やはりいないぞ、ご老人。少なくとも、私にはご老人のいうようなガンナーの姿は見受けられん」
「何じゃと?」
老店主は困惑した。まさかと思い、彼女の目の前で指を二本立ててみる。
「お前さん、これが何本に見えるかの?」
「何をいきなり。二本だろう? ……ああ、私の視力ならば心配無用だ。ご老人の深刻そうな顔も、よく見えているよ」
これで、アスクの視力の問題という線は消えた。
では、残る可能性は?
「ご老人。急にこんなことを尋ねるのは失礼かもしれないが、ひょっとして何か重篤な病を患ってはいないだろうか? もしくは生死の境をさ迷ったことは? これまでに何か、あの世からのお迎えとかこの世に未練を残した魂といった、見えてはいけないものが見えてしまったことがあったりはなかっただろうか?」




