欲しい仲間のタイプ
ページを開いてくれたすべての人に感謝を。
(外国の児童文学風に)
バタンッ! という音と共にドアが勢いよく開かれる。数拍遅れて取り付けられたベルがカランカラン、と酒場への来客を告げた。
「じいさん、こんちはッ!」
入ってきたのは、長銃を背負った若者だった。職業:狩人に連なる系統職なのだろう。まだ少年といってもよいあどけなさが残る顔には、銃撃手や弓兵が好む視力補正の為の眼鏡がかけられていた。あまり似合っていないが。
「おお、シリウスか。しばらく見んかったが、久しぶりじゃのう。して、今日は何の用かいのう?」
出迎えたのは、カウンターの向こう側に立つ真っ白な髪と白髭をたくわえた老人。冒険者達が日々立ち寄るこの酒場の店主だ。
「すまんが、今は銃撃手向けの仕事はないんじゃが……」
「いや、今日は依頼の受注じゃなくて、仲間を探しにきたんだ」
申し訳なさそうに告げる老店主に若者――シリウスは手を振りながら続けた。普段は適当な仕事を探しに来るのだが、今日は目的が違うらしい。
「先輩から聞いたんだけど、酒場では依頼を受けるだけじゃなく自分の欲しい仲間でパーティーを組めるって」
「うむ、その通りじゃよ。最高3人まで勧誘でき、お前さんを入れて4人のパーティーが編成できるのう」
酒場では冒険者への仕事の斡旋だけでなく、仲間の仲介もおこなっている。そうすることで、自分が不得手なことを補い合い、依頼の成功率を上げるのだ。
「お前さんなら銃主体じゃから――近接戦闘の得意な剣士や武闘家、もしくは回復を担当してくれる職業がオススメじゃな」
手元のリストをパラパラとめくり、小さな眼鏡をかけた目で登録されている冒険者を確認していく老店主。日常的にこの業務を扱っているからか、その仕草は慣れたものである。
「まあ、何か希望があるなら言うてみい。様々なタイプの冒険者がおるからの。きっとお主の求める仲間もおるはずじゃ」
「そうか? それなら――」
シリウスは真面目な顔で自分の要求を告げた。
「ツンデレ女剣士とヤンデレ女魔法使いとクーデレ女療術師の3人を頼む。もちろん、見た目は美少女を最優先で!」
「………………………………」
さすがに、そんな冒険者はいなかった。
某ゲームで、戦闘とは直接関係がない性格や好物・趣味などがキャラクターごとに設定できた・されていたことから、今回の話を思いつきました。
もし、ゲームのようなファンタジー世界に生きる住人が、現実のプレイヤーのようにキャラの性能そっちのけで仲間を募集しだしたら――?
短編を連続で投稿する予定です。