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溶岩の被害を最小限に治めた一向は、集落へ戻ることになった。先に戻っていた集落の人たちの喜んでいる笑顔が、恵の疲れを一瞬にして吹き飛ばす。この集落はこれからきっと良くなる。そのことを伝えたくてエルティオを見た。
そこには辺りを興味深そうに見回すエルティオの姿があった。初めて見る集落の様子にエルティオは驚いているようだ。そんなエルティオの元へヘリアが近づくと、膝を地面について土下座をした。
「エルティオ王。このたびは我らをお助け下さり、真にありがとうございました。集落の民一同、言い表せない感謝の気持ちで一杯にございます」
ヘリアの言葉と行動に、集落の民も急いで同じように跪く。ただ、イギーだけがエルティオを指差したまま口を開けていた。それをイエリアが、叩いて気づかせると、慌ててイギーも同じように跪いた。
「いや、そなたたちには苦労をかけた。よく今まで耐えてくれた」
「もったいないお言葉」
「これより、この集落を王家直轄の村と制定する」
顔を上げ、立てと命令するエルティオの姿は堂々としていた。この人はやはり王なのだと、今さらながらに恵は実感する。どこか気安さがあったエルティオが遠くに感じた。
「これからは遊牧している民たちの癒しの場となって欲しい。そのための援助はもちろん、相談役として信頼の置ける者を派遣しよう」
「ありがたき幸せにございます」
堅苦しい挨拶が続く中、突然エルティオがわざとらしい咳払いをした。
「あー、それと、たまに俺も視察に来る。そのときは王としてではなく一人の民として扱って欲しい」
エルティオの言葉に、その場にいたほとんどの者が驚いているようだった。目を見開く者、口を開けたままの者、指をさす者、隣の人と向き合う者。そんな中、一人だけ小さく笑い出した者がいた。ヘリアだ。そして優しい笑顔をエルティオに向けた。
「わかりました。では、貴方様がいらっしゃったときは一人の民として迎え入れましょう」
ヘリアはエルティオに向かって話し終えると、口元に手を当てて再び笑い始める。気恥ずかしそうに首の後ろを掻くエルティオの姿に、恵は先ほど遠くに感じた距離がまた縮まったように思えた。




