7-13
「パパがね、発明したんだって」
呆けたように翠を見ていると、自慢げに言う藍の声が聞こえた。何かを納得したようにエルティオは頷いて見せると、急き立てるように説明を促した。
「それで、一体どうやって使うのだ?」
「んっとね、この樽の中に取り出した魔力を入れるんだって。そうすると、そのままその魔力が神殿に転送されるんだって」
エルティオが急き立てる理由が、藍の拙い説明で恵にもわかった。この機械に魔力を入れれば噴火が弱まる。それは、つまり火山活動の終息を意味していた。だが、藍の説明にはその抽出方法がない。
「だから、それをどうするのかと聞いているのだ」
「んー? わかんない」
舌を出しておどける。普段なら恵をなごませるに充分な藍の姿だったが、今は違った。怯えさせないように、恵は意識して声を出す。
「わかんないって藍君。井上さん何も言ってなかったの?」
「いってたかなー?」
「あんた、あれほどちゃんと聞いて来いっていったじゃない」
首を傾げて考える素振りをする藍の頭に、怒った紫のゲンコツが降りる。かなりの音がしたから、随分と痛かったのだろう。藍は頭をさすりながら泣き出した。しかし、それを宥める者はこの場に誰一人いなかった。
「とりあえず、僕が試してみます」
「紫もやってみる」
翠と紫が、自分たちの半獣を見つめる。心話でやり方を伝えているのだろう。
翠が樽の側面についているスイッチを動かすと、微かだがモーターのような音が聞こえてきた。この黒い棒に魔力をぶつければ良いのだろうか。恵は翠と紫を見ながら、機械の使い方を考えていた。
翠の半獣であるサツキと紫の半獣であるキサラギは固まったように動かなくなってしまっている。
(やっぱり、ダメなんじゃ……)
そう口に出そうとした言葉を飲み込んだ。エルティオが黙ってそれを見つめていたからだ。恵は、何も知らない自分が口に出すべきことではないと思った。
ふと足元に温もりを感じ、恵は顔を下に向ける。そこには、穴を作っているはずの小梅がこちらを見ていた。
「どうしたの小梅? もう終わったの?」
「ウフッ」
どうやら違うらしい。何か問題があったのだろうか。恵は小梅に問うてみたが、それも違うらしい。恵にはめずらしく、小梅の言いたいことがわからなかった。翠たちが気になって、気もそぞろだからかもしれない。
「恵。そいつにやらせてみたらどうだ?」
恵は心底驚いた。まさか、エルティオの口からそんな言葉が出てくるとは。小梅のことを疎ましく思っているのではなかったのだろうか。
「でも」
「あの二人では無理のようだ。それに、クーリにも無理だろう」
有無を言わせない、真っ直ぐこちらを見ているエルティオの瞳に胸が高鳴る。場違いな自分の反応に恵は戸惑った。昨日からあの青藍色の瞳に見つめられると自分が自分ではなくなってしまうような気がしてならない。
「わ、わかった。やってみる」
どうにか落ち着こうと小梅の頭をなで、小さく深呼吸をする。小梅にどうやって説明しようかと考え始めたとき気がついた。なぜ小梅が恵のそばにやって来たのか。




