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犬神様の乳母  作者: 高木一
7、大団円までの道のり
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7-12

「藍君!」


「はー、疲れた。もうメグ姉ちゃんを探すの大変だったんだよ」


 緊迫した空気を壊すような藍の言葉に、恵は体の力が抜ける気がした。藍は、わざとらしく額の汗を拭うような仕草をしている。その後ろから別の声が聞こえてきた。


「疲れているのはヤヨイとサツキであって藍ではないでしょう」


「そうだよ、それにこっちについたら全部紫たちに任せて」


 大きな樽を乗せたリアカーみたいな台車を、翠たちの半獣が引いてこちらにやってくるのが見えた。しかし、声の主である翠と紫の姿が見えない。


「翠君に紫ちゃん?」


「あっ、メグちゃん。また黙って消えちゃったでしょう。心配したんだからね」


 台車の後ろ側から、怒ったように紫と翠が出てきた。どうやら、台車の後ろ側を押してここまでやってきたらしい。


「ご、ごめんね」


 あれだけ紫たちを心配させていたのに、恵はそのことをすっかり忘れていた。ここが外ではなかったら正座させられていたに違いない。だが、怒っているはずの紫がどこか楽しそうに見えて、恵は不思議に思った。


「でも、今回はお兄ちゃんが予想してたから」


「翠君が?」


「メグミさんなら、きっとこういう行動するだろうなと、予測していました」


 瞳の奥が笑っていない井上とそっくりな笑顔が、恵の背筋を冷たくさせた。


「ご、ごめんなさい」


 翠と紫の言葉にうなだれている恵の横をエルティオが颯爽と歩いて行った。興味深げに台車の周りを回り、上に乗っている樽を触っている。それはまるで、初めて機械に触る幼児のようだった。


「ずいぶん小さくなったな? これが試作品か?」


 その言葉に、本来の目的を思い出したのだろう。翠は恵の傍を離れ、台車の方へ戻って行った。その後ろを恵も着いて行く。


 近くで見ると、注ぎ口をつけるような部分に黒い棒が刺さっていた。側面にはオンオフを切り替えるスイッチのような物が並んでいる。見学したときにはなかった物だ。これも充電器のようなものなのだろうか。


「試作ではなく完成品です。でも王様が知っている物とは違います。あれから父さんがさらに開発して、地中から抽出した魔力を貯蔵場所へと転送できるようにしたみたいです」


『転送?』


 エルティオと恵は、同時に同じ言葉を発した。






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