表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
犬神様の乳母  作者: 高木一
7、大団円までの道のり
68/81

7-3

 イギーたちが出発した後、恵は小梅と一緒に翠たちの目を欺いて集落を出た。恵も皆に内緒で討伐隊に加わるつもりなのだ。しかし、恵たちが集落を出たときには、すでにイギーたちの姿はなかった。だからといって諦めるつもりは毛頭ない。恵はエルティオから聞いた話を頼りに湖の場所まで急いだ。


「確か、この湖の向こう側って言ってたよね」


 湖まで来れば、何か手がかりが見えるかもしれない。そう思い、何も考えずに走ってきたのだが、それらしいものは見当たらない。ただ昨日と違っている部分が一つだけあった。


「待て。小梅、それ飲んじゃダメ。昨日来たときより湯気が濃いから熱いよ。こっちにおいで、お水持ってきたから」


 ずっと走りっぱなしだったので喉が渇いたのだろう。腰にぶら下げている水筒を取り出し、手をかざして水を受け止めた。小梅はそれを一心不乱に飲み始める。


「さてと、早く行かないと置いてかれちゃうね。小梅、クーリ君がどっちに行ったかわかる?」


 自分の喉も潤した後、水筒をまた腰に提げてから恵は小梅に話しかけた。きっと、クーリたちもこの場所を通っただろう。もしかしたら匂いで後を追うことができるかもしれない。小梅にそんな高度な技が身についているとは思えなかったが、今は小梅に頼るしか方法はなかった。しかし、恵が思っていたよりも小梅の鼻は有能だったようだ。恵の言葉にすぐさま反応した小梅は、そのまま地面の匂いを嗅ぎ始め躊躇いなく進んで行く。


(本当にわかってるのかな?)


 恵は小梅が意気揚々と歩く後ろ姿を眺めながら少しだけ不安を覚えたが、黙って小梅の後ろを着いて行くことにした。


 しばらくすると、前方から話し声が聞こえてきた。


「小梅、こっちおいで。そうっと行くよ」


 小さな声で、前を歩く小梅に声をかける。気づかれないように、生い茂っている草に隠れながら恵は人の気配がする方へ近づいて行った。


 そこには、赤味がかった茶色い革の鎧を身に着けている集団が四列に並んでいた。十六人以上いるだろうか。腰には柄が曲がっている剣を携えている。一番恵の目を惹いたのは、ティーポットの蓋のような帽子だ。その下には首を守るためだろうか、鎧と同じ革がつけられている。帽子の先端にある、色の違う細長い布が微かに風で揺れていた。足元には彼らの半獣たちが思い思いの姿勢で前を向いている。もちろん半獣たちも合羽のような革の鎧を身に着けていた。


 兵士たちの先頭。つまり恵と向かい合う形で立っている三人が指示を出しているのだろう。兵士たちの頭で顔は見えないが、赤味がかった茶色の兵士二人に挟まれて立っているのがエルティオに違いない。一人だけ鎧の色が違った。緑がかった黒の鎧。彼もまた、兵士たちと同じようにティーポットの蓋のような帽子を被っていた。恵のところからはイギーの姿は確認できなかったが、きっと彼もあの中にいるのだろう。


「良かった、追いつけたみたい。ありがとう、小梅のお鼻のおかげ」


 足元にぴったりとついている小梅の鼻先を、恵は人差し指で優しくなでた。そして、そのまま指を耳の後ろへ持っていく。


「見つかると怒られるかもしれないから、静かにね」


 気持ち良さそうに瞳を細める小梅を見ながら、恵はさらに小さな声で話しかけた。そんな今の状況が、鬼に見つからないように隠れているみたいで、わくわくした。それを小梅も感じ取ったらしい。


「ウォフ」


「わっ、そんな大きな声出したら」


 予想外の大きさに驚き、恵も隠れていることを忘れて大きな声を出した。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ