7-1
日が昇り始めたばかりにも関わらず、恵たちはすでに起きて外に出ていた。雲一つ見当たらない。
(今日もいい天気になりそうだ)
空を見上げている恵から少し離れた場所で、翠と紫が藍を囲んで話をしている。
「それじゃ、藍、頼むぞ」
力強く言葉をかける翠だが、その顔は心配が隠せていないようだった。
昨夜話し合った結果、翠の半獣であるサツキが連絡係りとして井上の元へ戻る予定だった。それが、藍とその半獣であるヤヨイも一緒に戻ることになったのだから、翠が心配するのも無理はないだろう。恵としては翠と紫も一緒に戻って欲しかったのだが、それを頑なに断られてしまった。せめて、藍だけでも安全な場所へ戻らせたい。その気持ちを汲んでくれたのか、藍を半獣たちに加えることを認めてくれた。もしかしたら翠自身も、幼い弟を井上の元へ帰したかったのかもしれない。
「うん」
木でできている二輪のタイヤ。その上には大人が二人くらいは乗れるだろうか、柵のついた板がついている。二輪戦車のようなその乗り物に乗った藍が元気良く返事をした。この二輪車をサツキとヤヨイが引っ張って走るのだろう。ハーネスをつけたサツキとヤヨイが待機していた。翠が近づき、二匹の頭を優しくなでる。二匹は気持ち良さそうに瞳を細めた。翠が心話でサツキと話しているのかもしれない。いつもとは違い真剣な表情で二匹の頭をなでていた。
「藍君。気をつけてね」
「うん。任せて」
恵も藍に近づき話しかける。胸を張って応える藍が微笑ましく、自然と顔がほころんだ。そんな藍をからかうように、紫は藍が乗っている二輪車の柵部分を掴んで揺らした。
「知らないうちに落ちてるかもよー」
「大丈夫だよ。もう、揺らすなー」
紫と藍が、いつものようにじゃれあい始めた。この光景だけは、どこにいようと変わらない。その事実が恵には嬉しかった。夢中になって遊び始める二人をそのままに、恵はサツキとヤヨイの元へ近寄る。
「私のお願い聞いてくれて、ありがとう。サッちゃん、ヤッくん」
恵の両足に、二匹はそれぞれの頭を擦りつける。それは、まるで気にするなと言っているようだった。恵は腰を曲げて、サツキとヤヨイの耳の裏をなでた。いつもだったらここで、小梅の邪魔が入るはずだ。それなのに今日は、大人しくお座りをしたままこちらを見ている。恵は、そんな小梅の態度に驚きつつも、小梅も時と場所を考えているのかもしれないと思い直した。




