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犬神様の乳母  作者: 高木一
6、嫌い、が変わるとき
64/81

6-9

「なあ、さっきの話本当なのか?」


 今まで隠れて聞いていたのだろうか。イギーが頭に枯れ草をつけて出てきた。


 エルティオの胸倉を掴む勢いで問い詰めるイギーの勢いに、恵は呆気にとられた。切羽詰ったイギーの態度を気にもせず、無言でこちらを見るエルティオの顔を見て恵は我に返る。


「ああ、この人がイギー。さっき言っていた集落の人。イギー、この人が……」


 次の言葉を言うのを躊躇った。イギーが詰め寄っている相手は、この国の王だ。それをここで告げてしまっても良いのだろうか。だが、今のイギーにはどうでもいいことのようだった。


「なあ、聞いてるのかよ。さっきの話、本当か?」


「ああ、本当だ」


 言葉少なく、だがはっきりと肯定したエルティオの足元にイギーは土下座するように跪いた。


「それならオレも明日、仲間に入れてくれ。この手で皆を助けたいんだ。頼む、頼むよ」


 イギーの必死さに、自然と恵も一緒になって頭を下げていた。恵の態度に驚いたのか、イギーが地面につけていた顔を上げこちらを凝視する。しかし、驚いたのはイギーだけではなかった。


「どうして、そんなに必死になってお前まで頼むんだ? お前、そいつに誘拐されたのだろう?」


 次に驚いたのは恵の方だった。敢えて言わなかった部分をエルティオが簡単に言葉にしたのだ。まるで、元からそのことを知っていたかのように。


「なんで?」


 恵の驚きを不思議そうな顔をして見ていたエルティオは、呆れたように溜息をついた。


「あれほど、クーリに言っておいて今更何を言っている」


「えっ、あっ! いや、でも」


 心話がそんなに事細かく伝わってしまうものだったとは知らなかった。雰囲気だけが伝わると思っていたのだ。だからこそ、たわいのないことも話した。それが全部伝わっているというのだろうか。顔が熱くなる同時に、すぐさま全ての血が下がっていった。一瞬にしてクーリに呟いた内容を思い出したのだ。


(ど、どうしよう。怒りん坊とか、頑固とか、嫌な奴とか言っちゃったよ)


 上手い言い訳が見つからず黙り込んでいると、エルティオの溜息た聞こえた。


「まあ、良い。それよりも、答えを聞かせてもらおう。なぜ、そんなに必死になる。お前には関係のないことだろう」


 エルティオの鋭い眼差しに恵は気を引き締める。






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