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犬神様の乳母  作者: 高木一
6、嫌い、が変わるとき
62/81

6-7

 うやむやのまま、三人が集落に残ることになった日の夕方。恵はゾイに連れてきてもらった湖まで小梅と散歩に来ていた。


「あっ」


 湖の淵にエルティオがしゃがんでいた。何かを調べているのか、こちらの気配を感じ立ち上がる。

「どうして?」


 まさか、こんな所で再会すると思わなかった。


「昨日、クーリと会ったそうだな」


 今日は機嫌が良いのだろうか。ぶっきらぼうな言い方は変わらないが、それでもどこか口調が柔らかい

気がする。


「はい。でもどうして」


 ここにいるのだろう。そう尋ねる前にエルティオが口を開いた。


「お前は変わってるな。嫌いな相手の半獣を、よくなでられるものだ。しかも俺が仔神を……」


「え?」


 徐々に小さくなっていくエルティオの声を、恵は最後まで聞き取れなかった。


「いや、王の俺に伝言を頼むとはな。と言ったんだ」


「ご、ごめんなさい」


 慌てて謝罪を口にする恵を見ていたエルティオの口元が、微かではあるが上がった。


(笑えるんだこの人)


 初めて見るエルティオの表情に、恵は目を見張る。


「別にかまわない。その分の駄賃をクーリがしっかり受け取ったらしいからな」


「え?」


 本当にどうしたのだろう。恵は、友好的なエルティオの態度に戸惑った。それに気づいたのか、エルティオは気を取り直すように咳払いをする。


「それはそうとお前は何をしているんだ?」


「散歩です。……そうだ。私、王様にお願いがあるんです」


 恵は、ここに連れて来られた経緯を省いてイギーたちのことを話し始めた。集落のこと。役人が税金を取り立てる代わりに人を連れて行ってしまったこと。


 恵は自分の説明が伝わっているか不安になるたびに、エルティオの表情を窺った。始めは驚いているような表情をしていたエルティオだったが、話が進むにつれ眉間の皺が深くなる。それが、ちゃんと伝わっている証のようで恵を安心させた。






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