6-7
うやむやのまま、三人が集落に残ることになった日の夕方。恵はゾイに連れてきてもらった湖まで小梅と散歩に来ていた。
「あっ」
湖の淵にエルティオがしゃがんでいた。何かを調べているのか、こちらの気配を感じ立ち上がる。
「どうして?」
まさか、こんな所で再会すると思わなかった。
「昨日、クーリと会ったそうだな」
今日は機嫌が良いのだろうか。ぶっきらぼうな言い方は変わらないが、それでもどこか口調が柔らかい
気がする。
「はい。でもどうして」
ここにいるのだろう。そう尋ねる前にエルティオが口を開いた。
「お前は変わってるな。嫌いな相手の半獣を、よくなでられるものだ。しかも俺が仔神を……」
「え?」
徐々に小さくなっていくエルティオの声を、恵は最後まで聞き取れなかった。
「いや、王の俺に伝言を頼むとはな。と言ったんだ」
「ご、ごめんなさい」
慌てて謝罪を口にする恵を見ていたエルティオの口元が、微かではあるが上がった。
(笑えるんだこの人)
初めて見るエルティオの表情に、恵は目を見張る。
「別にかまわない。その分の駄賃をクーリがしっかり受け取ったらしいからな」
「え?」
本当にどうしたのだろう。恵は、友好的なエルティオの態度に戸惑った。それに気づいたのか、エルティオは気を取り直すように咳払いをする。
「それはそうとお前は何をしているんだ?」
「散歩です。……そうだ。私、王様にお願いがあるんです」
恵は、ここに連れて来られた経緯を省いてイギーたちのことを話し始めた。集落のこと。役人が税金を取り立てる代わりに人を連れて行ってしまったこと。
恵は自分の説明が伝わっているか不安になるたびに、エルティオの表情を窺った。始めは驚いているような表情をしていたエルティオだったが、話が進むにつれ眉間の皺が深くなる。それが、ちゃんと伝わっている証のようで恵を安心させた。




