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犬神様の乳母  作者: 高木一
6、嫌い、が変わるとき
56/81

6-1

「今日も良い天気だね、小梅」


 雲一つない空から注がれる日の光が、木の葉についた朝露に反射して光っている。恵は凝り固まった体を伸ばすように、両手を挙げて深呼吸をした。


 あの後、イギーと話し合うことができなかったため、恵はもちろん帰ることもできず。いつの間にかヘリアの家に泊まることになっていた。


 疲れていたからなのか。日本にいた頃とは違いすることがないからなのか。早々に寝てしまった恵は、案の定、早く目が覚めた。時計がないから、正確な時間はわからないが、朝日が昇るのを目で確認できたのだから早起きなのだろう。元旦でもないのにご来光を浴びることができて、なんとなく朝から得した気分になる。


「これ畑なんだよね?」


 散歩がてら小梅と集落を歩いていた恵は、昨日見た畑で立ち止まった。イギーに確認したので畑であることは間違いない。だが、やはりお世辞にも畑と言えるような場所ではなかった。


 至る所に存在する、大小さまざまな石や枝などをどけて土を掘り返したら、畑らしくなるだろうか。幼い頃、学校の授業で習ったことを思い出しながら恵は石をどけ始めた。一つ一つはそんなに重たくないのに、結構な重労働だ。恵は日頃の運動不足を悔やみつつ、ひたすら畑を綺麗にし続けた。


「ふー。これくらいでいいかな」


 何もしないで恵の足元をうろちょろしていた小梅が、恵の独り言に応えるように吠えた。まるで、自分も頑張って働いたとでも言うような表情に恵は苦笑する。


「小梅は何もしてないでしょうが。さて、次は……スコップみたいなのってないのかな?」


 土を掘り返すための道具を探すが、見当たらない。先ほど平たい板のような木を拾ったはずだ。それを使えば、簡易的ではあるがスコップと同じ動作ができるかもしれない。恵は早速それを拾い使ってみることにした。しかし、スコップのように地面に突きさしても、思うように土を掘り返すことができない。掘るというよりかは表面を削るだけで、一向に恵の想像通りには進まなかった。


「あーあ、モグラみたく土をボコボコにできるといいのに」


 ついつい愚痴がこぼれる。それでも、恵は手を休めることなく作業を続けた。






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