5-3
「オレさ、金欲しいんだよね。アンタを無事に家に帰す代わりに金をオレに渡して欲しいんだ。金さえもらえれば、アンタに危害は加えねーよ」
随分と身勝手なことを話すものだと恵は思った。イギーからは罪悪感のかけらも見えない。
そもそも恵は居候の身で無一文だ。たまたま井上からもらったお金を持っているが、それだって自分の持ち物ではない。
恵は、イギーの思惑通りには行かないから考え直すよう伝える。しかし、そんな恵の言葉など彼には聞こえていないようだった。
「アンタが持ってなくても親が持ってるだろう? それにアンタら貴族は王に守られてるから金にも生活にも困ってない。そうだろ?」
「だからってお金目当てで誘拐だなんて。それに私は別に貴族じゃ」
どうやら自分は、イギーの勘違いから誘拐されたらしい。そのことだけはわかった。それを訂正しようと口を開くが、それすらもイギーの言葉に遮られてしまう。
「オレだってできることなら自分で稼いだりしたいさ。でも時間がないんだよ」
「どういうこと?」
今までどこかお気楽な雰囲気で話していたイギーの表情が一瞬にして重苦しくなる。そのあまりの変化に恵は理由を聞きたくなった。
「その話をする前に、アンタの同情でもひこうかな。アンタ、情に弱そうだ」
表情がよく変わる人だ。したり顔で話したイギーは、そのままジェドを伴ってテントの外へ行ってしまった。そんなイギーの態度に、このまま居座って困らせてみようかとも考えた。だが、自分がいる場所くらいは知っておいた方がいいだろう。恵は重い腰を上げてイギーの後を追った。




