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「ところでさ、シンワって何だかわかる?」
「シンワ?」
「うん。さっき井上さんが翠君に言ってたでしょう」
「あ、シンワのことか! えっとね、自分の半獣と心の中で話すことだよ」
「心の中で話すから心話? って心の中で話せるの?」
常識では考えられないことが起こる場所にいるとはいえ、やはり確認のため聞き返してしまう。しかし、それは紫にとっては当たり前のことだったらしい。
「うん。紫もできるよ」
平然と応える紫に、恵は目を見開く。
「そ、そうなんだ。すごいね」
「すごくないよ。藍だってできるし」
「えっ? そうなの?」
いい加減慣れてもいい頃だと思うが、なかなか慣れることができない。井上自身が地球人ではないのだから、その子供たちも不思議な力を持っているのは当たり前だろう。恵は自分の応用のなさにげんなりした。
「うん」
「誰にでもできるものなの?」
「自分の半獣がいる人なら誰にでもできるってパパが言ってたよ。メグちゃんだって小梅ちゃんとお話できるじゃない」
「いや、あれは小梅の表情とか声でわかるだけで実際は話してるわけじゃ」
勘違いしている紫に否定の言葉を続けようとしたができなかった。
「恵さんに紫ちゃん! 聞いてますか?」
三人と四匹の視線が恵と紫に集まっていた。どうやら井上が話しかけてきていたらしい。全く気づかなかった恵と紫は慌てて同時に返事をした。
「あ、はい。すみません」
「ごめんなさーい」
「仕方ないですね。ではもう一度説明しますよ。今度はちゃんと聞いていてくださいね」
井上は溜息をついた後、呆れ気味に言葉を続けた。
「恵さんは紫ちゃんと手を繋いでください。紫ちゃん、絶対恵さんの手を放してはいけませんよ」
「わかったー」
この場合、恵の方が手を放さないように気をつけるべきなのではないだろうか。明らかに恵の方が勝手に離れていくように思われているみたいだ。だが、井上の次の言葉で恵は納得した。
「恵さんは心話を使えませんから、もし迷子になってしまった場合、連絡手段がありません。できるだけ離れないように気をつけますが、この人出ではどうなるかわかりませんしね。絶対に紫ちゃんの手を放さないでくださいね」
「わかりました」
「それでは、皆さんにコレをプレゼントしましょう」
井上は腰に巻いている、こげ茶色の帯の中からオリーブブラウンの小袋を二つ出した。




