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犬神様の乳母  作者: 高木一
3、誰が悪いわけでもない
36/81

3-7

「いいえ、違いません。むしろわたくしが動けない小梅ちゃんを誘拐したのです」


「百歩譲ってブロードの言う通りだとしよう。だがなぜ地球へなど行った? わざわざどこかへ行かずとも、ここで治せば良かったんだ。膨大な力を持っているのだからな。そして自分が壊した国を復興させるために力を注げば良かったんだ」


 その言葉で気づいた。エルティオのどこに違和感を感じていたのか。


「何言ってんのよ! 魔力の使い方も知らない赤ちゃんの小梅に何ができたっての言うのよ。しかも瀕死の重傷を負っていたって言うじゃない」


 恵の言葉に、エルティオの身体が一瞬止まったように見えた。しかし、それは恵の錯覚だったかもしれない。


「どういうことだ、それは? 魔力の使い方を知らない?」


「まさか、ご存知なかったのですか? 仔神様といえど産まれたと同時に魔力が使えるわけではありません。神官長と先代仔神様のご教授の元、我々と同じように少しずつ魔力を使いこなしていかれるのですよ」


 井上が言った通りだ。誰が悪いわけでもない。悪いことがこの上なく重なってしまっただけなのだ。それをエルティオにわかって欲しい。恵は心からそう思った。


「王様が言ったことはねぇ。王になったばっかりの王様自身に言ったのと同じことなんだからね」


 その言葉を発したと同時に、井上の方を睨みつけていたエルティオが、恵の方を勢いよく振り向いた。


 伝わったのだろうか。恵は固唾を呑んでエルティオを見守った。しかし、エルティオは口を二、三度開閉したかと思うと、我に返ったように怒鳴り始めた。


「うっ、うるさい! 例えそれが本当だとしても、俺の考えは変わらん」


 残念ながら恵の気持ちはエルティオには伝わらなかったらしい。恵の視線から逃れるように、エルティオはその場から早足に去って行ってしまった。いつの間に傍へきたのか、半獣クーリがエルティオの後を追いかける。その後姿に躊躇いを感じたのは、恵の気のせいだろうか。エルティオの姿が見えなくなる頃、クーリが一度立ち止まり、こちらを振り返る。しかし、すぐにエルティオの元へ走って行った。そんな彼らの後ろ姿を見たまま立ち尽くしている恵に、井上が話しかけてきた。


「仔神様の魔力のこと、よく覚えていましたね」


「オリスさんに延々と聞かされましたから」


 休憩なしで、同じことを何度も聞かされ続けたのだ。絶対に忘れることはないだろう。恵はそのときのことを思い出し情けない気分になった。


「なるほど」


 恵の言葉に納得したからなのか、井上の表情はいつもの笑顔に戻っていた。






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