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犬神様の乳母  作者: 高木一
3、誰が悪いわけでもない
33/81

3-4

「井上さんとホー君!」


「探しましたよ。恵さんに小梅ちゃん」


 いつものほんわかする笑顔を向けて井上が近づいてきた。一緒にやってきたホークは小梅の方へ行き、いつものように鼻で挨拶をする。そのホークとのやりとりが、恵には小梅を気遣っているように感じられた。


「すみません。途中で道がわからなくなってしまって」


 井上の登場で無意識に硬くしていた体が緩まった気がする。


「それは大変でしたね。それはそうと、エルティオ様」


 井上の視線が恵からエルティオに移る。普段とは違ってどこか硬く感じる彼の声に、恵は再び体を硬くした。


「なんだ」


「僭越ながら申し上げます。七十五年前の出来事。あれはどなたが悪いわけでもございません。ただ、全てにおいて悪い結果が重なってしまっただけのこと」


「どういうことですか?」


 エルティオが言ったことが真実ではないのかもしれない。恵は心が少しだけ軽くなった気がした。


「では少し昔話をしましょう。この世界では仔神という存在があっても、留まることなく生み出される魔力によって数百年に一度天災が起きるのです。それは避けられない天災。ですが、それを小さな天災にすることは可能でした」


「強い魔力を持つ王族と仔神が力を合わせればなっ! だが、そいつはっ!」


 エルティオが憤りを抑えるように拳を握った。それに対して王の言葉が聞こえなかったかのように、淡々と井上は話を続ける。二人の温度差の違いに、恵が言いようのない不安を感じた。


「今から八十年前に避けられぬ天災が起きました。まだ先代王アディリオ様がご存命だったあの頃、ご長男のサーロ様は御体が弱く、とても外へ出ることはできませんでしたし、ご次男のエルティオ様においては魔力の制御もままならないお子様でした。他に強い魔力を持った王族がいれば良かったのですが、当時は先代王と同じくらい力を持つ者がほとんどおりませんでした」


 恵は窺うように視線をエルティオへ向ける。悔しそうに歯を食いしばり、より一層力を込めて手を握るエルティオの姿が見えた。


「まさかアディリオ様の力が尽きようしていただなんて誰も思わなかったでしょう」


「えっ」


「本来なら、王は自身の力が尽きることを予測できるものなのですが、アディリオ様の場合は違いました。なんとか天災を鎮めたときにはほとんど魔力が残っていなかったようです。その後、すぐにエルティオ様に王位を譲り、次代の仔神様つまり小梅ちゃんを産みだすために残りの魔力を全て使い切り、結果アディリオ様と半獣タイガ様はスピティアの地へ召されました」


「それって」


 亡くなってしまったのだろうか。小梅が産まれたことによって誰かの命が消えた。その事実を確認することが怖くてできない。恵は言葉を呑み込んだ。


「それでも天災が鎮まってさえいればまだ良かったのかもしれません」


 井上は、恵たちと並び崖下を見下ろした。


「鎮めたはずの天災が再び起きはじめました。本当に悪いことは重なるもので」


 大きな溜息をついた後、井上は恵に視線を向ける。その瞳は、覚悟を決めなさいと言われているようで。恵は手を強く握り締めた。







【お礼】

読んでくださった方・お気に入り登録してくださった方・評価してくださった方

ありがとうございます(嬉泣)。・゜゜ '゜(*/□\*) '゜゜゜・。 ウワァーン!!


おかげさまで、累計ユニークが1500を超えました~♪

塵も積もればヤマトナデシコなのです。感謝・感激・飴・アラレです。

ありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします(●´ω`●)


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