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犬神様の乳母  作者: 高木一
3、誰が悪いわけでもない
31/81

3-2

「グルルル」


 弛んでいたリードが少し引っ張られる。その感触とともに小梅の唸る声が聞こえた。恵は小梅が威嚇している相手へ視線を向ける。


「あっ」


 そこには昨日、恵に嫌悪感を抱かせたエルティオが立っていた。謁見の間に一緒にいた、カーディガンに似た半獣のクーリはいないようだ。恵の視線に気づいたのか、ゆっくりとこちらに向かってくる。


 黒は王の象徴なのだろうか。今日も黒い長衣を着ている。ただ、昨日とは違い濃紫の帯を腰に巻いていた。


 颯爽と歩くエルティオの姿に目を奪われる。恵は小梅を罵倒した奴なんかを見惚れてしまった自分を不甲斐なく思った。それを誤魔化すように、ずっと唸ったままでいる小梅を抱き上げた。


「何をしている」


 抱き上げている間に随分と近づいていたようだ。エルティオは、お互いの表情がハッキリと見えるくらいの場所で立ち止まっていた。


「えっと、その」


 迷子になったなどという情けないことを知られたくはなかった。しかし、上手い言い訳が思いつかない。結局出てきた言葉は、迷う前に考えていたことだった。


「散歩。そう、小梅と探検しながら散歩してました」


「ほう」


 怒気を抑え込んだような低音でエルティオが呟く。恵の目を捕らえて離さない青藍色の瞳は、明らかに侮蔑の色を含んでいた。突然のエルティオの変化に恵は怯んだ。何が彼をそんな瞳にさせてしまったのだろうか。


「ここの現状も知らずに散歩とは。はん、暢気なものだな!」


「なっ」


「ついて来い。貴様に見せてやろう。貴様が大事に抱えている奴が犯した罪を」


 言い返そうとしたときには、既にエルティオはいなかった。恵を置いて、来た道を戻るようにさっさと歩きだしていた。


 言いたいことだけ言って去ったエルティオに、文句の一言でも言いたい。恵は、小梅を抱きながらエルティオの後を追った。






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