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犬神様の乳母  作者: 高木一
2、キニギアースの神様
29/81

2-11

「ちなみに半獣たちは各国の仔神様を模しています。ですので、この国の半獣は皆小梅ちゃん、つまりコーギーに似ているというわけです」


 コーギーだらけ。それは恵の願望を形にした夢の世界だ。仔神と言う重責を考え、沈んでいた気分が少しだけ浮上する。


「それでですね、明日から小梅ちゃんには魔力の使い方を勉強してもらいます」


「えっ?」


 コーギーをはべらせている自分の姿を想像していた恵は、井上の言葉に我に返った。


「勉強ですか?」


「そうです。我々が教育係としてこの神殿にいるというのは、全て仔神様に魔力の使い方を伝授するためなのです」


 井上の言葉尻に乗る形でオリスが話を続ける。


 確かにあの映像に映っていた仔神たちは、簡単に力を使いこなしていたように見えた。果たしてそれと同じことを小梅もできるのだろうか。その前にもう一度だけ、確認したいことがあった。


「本当に、小梅に魔力なんてあるんですか?」


「もちろんございますよ。私どもよりも遥かに強大な魔力をお持ちでいらっしゃいます」


 オリスの口調は、バカにしているようだった。映像を見せながら説明したにも関わらず、あまりわかっていない恵に呆れたのかもしれない。


「凄いねー、小梅。魔力が使えるんだー。って、あれ? でもそんな力見たことないよ私」


 恵の膝の上に座っている小梅に視線を向けると、小梅は首を傾げて恵を見ていた。


「当たり前だろ。ティヒア様は魔力の勉強をする前に地球って所へ飛ばされたんだから」


 向き合っている恵たちの横からオルクの呆れたような声が聞こえてくる。視線を移すと、今にも舌打ちが聞こえてくるような、しかめっ面をしたオルクの顔が見えた。


 何か気に触ることを言ってしまったのだろうか。恵は自分の言ったことを思い出そうする。だが恵の答えが出る前にオルクは表情を切り替え、話を続けた。


「仔神様ったって、産まれたときから魔力が使えるわけじゃねえんだよ。そんなのができんのは、犬神様か、犬神様の眷属である俺らくらいだ」


「そうなんですか。あれ? でも小梅がいなくても大丈夫なんじゃないんですか? 今まで小梅は地球にいたんだし、王様もそんなこと言ってまし」


「とんでもございません」


 オリスが身を乗り出す勢いで、恵の語尾に被せる。思いもよらないオリスの行動に、背凭れに勢いよくぶつかるほど仰け反った。


「いいですか。先ほどもお見せしましたように、仔神様はこの国、この世界にとってなくてはならない存在なのです。聞いていますか? だいたい、貴方は先ほどから何を聞いていらしたんですか」


 自分の言葉の何が気に入らなかったのか。オリスのつり上がった目を見ながら、恵は内心で首を傾げた。それでも一つだけわかった。


(この人、絶対教育ママ並に厳しそう)


 オリスの顔にあるはずもない銀縁の眼鏡が見えた。何だかわからないが、オリスの逆鱗に触れてしまったらしい。恵は先生から説教されている気分のまま、終わりの見えないオリスの話を聞かされ続けた。






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