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犬神様の乳母  作者: 高木一
2、キニギアースの神様
27/81

2-9

「恵さん、こちらがオルク神官長殿です。

 そして隣に座っていらっしゃるのが、先ほどお会いしました、オリス神官長殿です。

 オリス殿にはご紹介しましたが、こちらの方がティヒア様を地球で保護して下さった篠山恵さんです」


 井上の方を向いていたオルクが、こちらへと視線を向ける。目が合った瞬間、オルクが八重歯を覗かせて笑った。


「俺は、パテウス様の眷属でオルクと言う。仔神様方の教育係を仰せつかっているもんだ。

 今までご苦労さんだったな」


 なぜかオルクに労いの言葉をもらった。恵は言葉の主旨がわからず、曖昧な返答をする。それに被せるように、オリスが口を開いた。


「先ほどは失礼しました。改めて、私も自己紹介をさせていただきます。

 私はミゼア様の眷属であり、オルクと同じく仔神様の教育係を仰せ遣っておりますオリスと申します。

 ティヒア様をお守りくださりありがとうございました。

 これより私たちが、ティヒア様を立派な仔神様へとお導きいたしますので、ご安心くださいませ」


 オルクの言葉のときも違和感を感じたが、オリスの言葉で確信した。この人たちは小梅と引き離そうとしている。そんなことはさせない。恵は慌てて言い募った。


「ちょ、ちょっと待ってください。小梅をどこかへ連れて行くつもりなんですか?

 私、小梅と離れるつもりはありません」


 自分で発した言葉を態度で示すため、小梅を抱きかかえた。オリスは一人がけの椅子に座っている井上に視線を向ける。恵の発言と行動に驚いているのか、オルクは何度も目を瞬かせていた。


「どう言うことですか、ブロード殿?」


「それをご説明するために、お二人をお呼びしたんですよ」


 一人成り行きを見守っていた井上は相変わらず冷静だった。恵の行動を見越していたのかもしれない。


「なんなんだよ、説明って」


 オリスとオルクの視線を確認したあと、井上はこちらに視線を向けた。


「ですが、その前に恵さんに仔神様の役割というものを説明しなければなりませんね」


「仔神の役割? と言うことは、小梅は何かしなくちゃいけないんですか?」


 抱きかかえていた力を少し緩め、小梅の顔を見ると小梅と目が合った。恵の不安を敏感に察したのか、小梅が恵の顎を優しく舐める。


「ありがとう、小梅。私は大丈夫だよ。それより、小梅が何かしないといけないんだって。

 ちゃんと聞いておかないと」


「オゥフ」


「大丈夫だよ。何があっても私は小梅の傍にいるから」


 小梅の後ろ足を優しくなでながら恵は自身の気持ちを落ち着かせる。


「もしや、こちらの方はティヒア様と話ができるのですか?」


 恵と小梅の会話を聞いて驚いたのか、オリスの切れ長の目が大きく見開かれていた。






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