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犬神様の乳母  作者: 高木一
2、キニギアースの神様
26/81

2-8

「さっ、あちらへお座りください」


 井上が、扉の前で静かに立っている神官長たちをソファへと促した。


「失礼します」


 オリスが言うと、もう一人の方が遠慮なくこちらへ近づいてきた。


「うわー、本当にティヒア様が人間に懐いてる」


 砕けた口調で言いながらオルクと呼ばれた人は、恵たちの前の長椅子に座った。


 大きな体格をしたその人は、黒地の長衣を身に纏っている。服の上からでも筋肉質な体だとわかった。先ほどの集団とは違い、フードを被っていないため顔の造りがハッキリとわかる。恵はその容姿をマジマジと見つめた。


 年は二十五、六だろうか。無造作に立ち上がっている短い金色の髪。色黒の肌に堀の深い顔立ち、エルティオと同じくらい端正な顔立ちをしている。深紅しんく色をした二重の瞳が、興味深げにこちらを見ていた。


「オルク、無礼だ。申し訳ありません。ティヒア様」


 オリスはオルクを諌めながら、彼の隣に座った。フードを被ったままなので、顔つきはわからないが、銀色の髪を確認することができた。


 恵の存在を一切無視しているかのようなオリスの態度に、恵は眉をひそめた。神殿の中庭で感じた通り、自分を好意的に思っていないようだ。


「あー、わりーわりー。で、なんで俺らがここへ呼ばれたんだ、ブロード殿?」


 オリクは、オリスの苦言をおざなりにかわす。恵としても友好的ではないオリスより、オルクの方が好感は持てた。だが、あまりお近づきになりたくないタイプだ。


「オルク殿も相変わらずですね。ところでオリス殿、室内ではフードを取るのが礼儀ですよ」


「これは失礼しました」


 井上に注意され、オリスは被っていたフードを外した。


 波打つ銀糸のような髪が光に反射してキラキラ光る。切れ長で紅色べにいろの瞳が肌の色白さを際立たせていた。中性的な顔つきは、オルクとは違った意味で整っていた。


 まだ、この世界で井上を含めて四人くらいしか会っていないが、男前率が高すぎる。外国の人が美形に見えるのと同じ原理なのだろうか。オリスの顔をまじまじと見ながら、恵はそんなことを考えていた。






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