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「さっちゃんたちってみんなの誕生日に合わせて飼い始めたんじゃないんですか?」
「違うのよ。サツキもキサラギもヤヨイも、ホークが産んだのよ」
「えっ? ホー君って男の仔ですよね」
自分の勘違いだっただろうか。恵はぐるぐると考え始めた。
「うーん? 私もよく知らないんだけど性別関係ないみたい」
「はい?」
ますます訳がわからない。どんな生き物だって子供を産むのは雌ではなかっただろうか。恵は自分の考えに自信が持てなくなっていた。だからというわけではないが、平然と話す麻由美との温度差に頭を抱えたくなった。
「彼らは犬ではないんですよ」
お茶の用意をしてくると言って出て行った井上が戻ってきた。テーブルにティーセットを置くと、当たり前のように麻由美の隣に座る。
「は?」
井上から出た言葉の意味が恵には理解できず、瞳を何度も瞬かせた。どう見ても犬にしか見えないのだから仕方がないだろう。
「ふふふ。いきなりそんなこと言われてもわからないわよ。ブロード」
困惑している恵の姿が面白かったのか、それとも他の理由からなのか。カップにお茶を注ぎながら楽しそうに笑っている麻由美を、恵はぼんやりと眺めた。
「そうだったね。じゃあ、半獣について話をしようか」
恵は聞き逃さないよう居住まいを正し、ゆっくりと頷いて見せた。
「キニギアースに生存する生き物には皆、魔力があります。もちろん私にもあります。
遥か昔、魔力の制御ができない人間たちを、犬神様であるパテウス様とミゼア様が救ってください
ました。そのとき人間たちの魔力を制御するために、半獣と言う生き物を授けてくださった。
それが、私で言えばホークになります。つまりホークは私の半身なんです」
井上が丁寧に話してくれた内容を理解しようとしたが、難しかった。人間、言葉よりも目に見えるものの方が信じやすい。井上とホークが何か突飛なことでもしていれば、恵も簡単に信じられただろう。実感も沸いたはずだ。だが、恵が知っている井上とホークの関係は、普通の飼い主とペットの関係となんら変わりなく見えていた。
「えっと、それってあの、気持ちの問題ではなくてですか?」
「気持ち的にも、もちろん半身ですが、ホークは私自身なんですよ。
だからホークと私は意思疎通ができます」
得意げな顔をした井上の言葉に、恵は何も感じなかった。




