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「麻由美さんたちに会えるなんて嬉しいです」
元に戻った麻由美に、立ち話もなんだから、と言われ、井上たちの部屋へ移ることになった。翠たちは犬たちと一緒に神殿内の探検に行ってしまい、部屋にはいない。今、この部屋にいるのは井上と麻由美、小梅と恵の三人と一匹だけだった。
「ふふふ。そうよね。私もまさか恵ちゃんにここで会えるとは思ってもみなかったわ」
クリーム色の下地に、葉の形をした模様が白く浮かび上がっている壁紙が室内を包んでいる。窓から差し込む光が壁紙に反射して、部屋の中を明るくしていた。中央には、自分たちの部屋にある家具と同じ作りの物が設置されている。
初めて入った部屋なのに、恵は懐かしく思った。たぶん、麻由美が作ったパッチワークキルトがいたるところに置かれているからだろう。
「あのー、麻由美さんたちも地球の人じゃないんですか?」
体面する形で長椅子に座っている麻由美に、おずおずと話しかけた。
小梅は、恵の隣で伏せたまま眠っている。恵は、手持ち無沙汰を誤魔化すように小梅の頭をなでていた。
「私は恵ちゃんと同じ地球人よ。子供たちはハーフっていうのかしらね?」
「そうなんですか? あの、信じられましたか? その井上さんが」
尋ねていいものかわからなかったが、興味の方が勝ってしまった。
「最初は変な人だと思ったわよ。しかも、出会った日にいうんですもの。
ちょっと危ない人なのかなって。ふふふ」
昔を思い出したのだろうか、麻由美はやわらかい笑みを浮かべた。
「結局、ブロードが異世界の人だって信じるようになったのって、私が翠を産んだときなの」
「翠君をですか?」
「ええ。だって、翠を産んだらサツキが産まれたんですもの」
サツキが産まれたことが異世界とどう繋がるのだろう。恵は意味がわからず、首を傾げた。
井上家の子供たちは、産まれたときから一匹ずつコーギーが宛がわれている。でもそれは、麻由美たちがわざとそうしたのだと思っていた。




