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犬神様の乳母  作者: 高木一
1、夢じゃない
13/81

1-13

「仔神って何ですか?」


「そうでしたね。では、大まかに説明いたしましょう」


 小梅に視線を向けていた井上は、こちらに視線を戻した。恵はそれに無言で頷いた。


「このキニギアースにはパテウス様とミゼア様と言う、犬に似た二匹の神がいます」


 井上が腕を上げて指差した場所は、先ほどよりもさらに大きく見える神殿の屋根部分だった。


 白い三角形部分に狼のような犬が描かれている。その二匹を囲むように、五匹の犬が描かれていた。その五匹は、ラブラドール・レトリバー、ボルゾイ、ボクサー、グレート・ピレニーズ、そして小梅と同じ犬種のウェルシュ・コーギー・ペンブロークに良く似ている。


「彼らの子供である五匹の仔神は、各国の神殿に住むことになっています。

 我がボイジー国ではその仔神を、ティヒア様またはティヒウス様と呼んでいます。

 つまり小梅ちゃんのことですね」


「神の仔。仔神がティヒア。ティヒアが小梅」


 恵は言葉の意味を理解するために噛み締めるように呟いた。しかし、やはりまだ信じられない気持ちが強い。


「でも、どう見ても小梅はただのコーギーです。そんな神だなんて、信じられません」


「まー、そうですよね。見た目はコーギーに似てますからね。

 でも、小梅ちゃんが仔神だと言うことに間違いはありませんよ。それは私が保証します」


「保証されても困ります。それより地球へ帰してもらえるんですよね?」


 やっと聞くことができた。何よりも恵が一番知りたいこと。キニギアースなんていう世界はどうでもいい。小梅と一緒に地球へ帰る方法。それを恵は知りたかった。


「恵さん一人なら、なんとかなるかもしれません。

 ですが、小梅ちゃんと一緒じゃないと嫌だと言いますよね?」


「当たり前です!」


「なら無理ですね」


 間を空けずに言う井上の返答は、恵の願いを潰すものだった。






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