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「仔神って何ですか?」
「そうでしたね。では、大まかに説明いたしましょう」
小梅に視線を向けていた井上は、こちらに視線を戻した。恵はそれに無言で頷いた。
「このキニギアースにはパテウス様とミゼア様と言う、犬に似た二匹の神がいます」
井上が腕を上げて指差した場所は、先ほどよりもさらに大きく見える神殿の屋根部分だった。
白い三角形部分に狼のような犬が描かれている。その二匹を囲むように、五匹の犬が描かれていた。その五匹は、ラブラドール・レトリバー、ボルゾイ、ボクサー、グレート・ピレニーズ、そして小梅と同じ犬種のウェルシュ・コーギー・ペンブロークに良く似ている。
「彼らの子供である五匹の仔神は、各国の神殿に住むことになっています。
我がボイジー国ではその仔神を、ティヒア様またはティヒウス様と呼んでいます。
つまり小梅ちゃんのことですね」
「神の仔。仔神がティヒア。ティヒアが小梅」
恵は言葉の意味を理解するために噛み締めるように呟いた。しかし、やはりまだ信じられない気持ちが強い。
「でも、どう見ても小梅はただのコーギーです。そんな神だなんて、信じられません」
「まー、そうですよね。見た目はコーギーに似てますからね。
でも、小梅ちゃんが仔神だと言うことに間違いはありませんよ。それは私が保証します」
「保証されても困ります。それより地球へ帰してもらえるんですよね?」
やっと聞くことができた。何よりも恵が一番知りたいこと。キニギアースなんていう世界はどうでもいい。小梅と一緒に地球へ帰る方法。それを恵は知りたかった。
「恵さん一人なら、なんとかなるかもしれません。
ですが、小梅ちゃんと一緒じゃないと嫌だと言いますよね?」
「当たり前です!」
「なら無理ですね」
間を空けずに言う井上の返答は、恵の願いを潰すものだった。




