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少し考え込むように空を見上げていた井上が、ゆっくりと恵の方へ視線を戻した。
「そうですね。恵さん流で言うと、地球にあたる惑星のことをキニギアースと言います。
国の名前がボイジー」
「地球? 国?」
井上の突拍子もない言葉に、恵は頭がついて行かなかった。それなのに井上の話はどんどん進んでしまう。
「ええ。ここは恵さんが暮らしていた地球という惑星ではありません。俗に言う異世界です」
「異世界?」
「はい。そして今、私たちのいる神殿がある王都をティヒと言います」
「神殿? えっ、ここって草原じゃないんですか?」
恵はきょろきょろと周りを見る。しかし、どこを見ても緑、緑、たまに茶色の木が目に入るくらいだった。神殿などというような建物は恵の目には入ってこない。
「違いますよ。ここは神殿の内部です。もうすぐ見えてくると思いますが。あー、あれです」
井上の指差す方に、小さな白い物体が見えてきた。
「この草原を取り囲むようにドーナツ状の建物が建っているんですよ」
最初に目についたのは、連なっている白い三角形だった。近づけば近づくほど、その下が見えてくる。三角形の下には白い長方形が置かれている。一部分だけを切り取ったミルククラウンのような形だった。
(あれが、この草原を囲んでるの?)
大きすぎるため全貌を確認することはできないが、なんとなく想像できた。
さらに近づくと、屋根部分の長方形を支えるように太い円柱が聳えたっている。色といい、形といい、歴史の授業で習ったギリシアにある神殿を思い出した。白い石の壁が太陽に反射して、キラキラ光っている。
(キレイ)
装飾がほとんどされていないそれが、恵にはとても美しく感じた。
近づくにつれ、大きくなっていく建物に目を奪われる。そこへ、また井上から爆弾が投下された。
「ちなみに、恵さんが言っていた木。あれが御神木です」
「えっ!」
聞こえた言葉に血の気が下がった。恵自身そんなに大層な信仰心を持っているわけではない。しかし、それは普段馴染みがないだけの話だ。お墓参りや初詣だって欠かさない程度には信仰心を持ち合わせていた。だから御神木がどの程度神聖なものなのかくらいはわかっている。わかっているからこそ、焦ったのだ。
「大丈夫ですよ。そもそも、この場所は歴代の仔神様方の遊び場なんですから。
そうですねー、地球流に言うなれば、ドッグランみたいなものです」
「ど、ドッグランって」
あまりの井上の言いように呆れてしまった。しかし、そのおかげで気が楽になったのも確かだ。神様を犬扱いした井上には驚いたが、それ以上に恵は気になる言葉があった。
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