1-11
どのくらい歩いただろうか。恵が、落ち着きを取り戻した頃である。
「あのー」
それでも、またいつ、あの笑顔に遭遇するかと思うと声が小さくなってしまった。
井上の後ろを言われるままに着いてきた恵は、井上に声を掛ける。
「これからどこへ向かうんですか?」
「王のところです」
「へ?」
建物の名前を言われると思っていた。それなのに、井上が出したのは予想を斜め上に行く言葉だった。
耳慣れない単語に恵が足を止めると、軽く持っていたリードが手から外れた。
小梅は恵の手から離れたことに気づいていないようだ。地面にリードを引きずったまま井上の後を追う。
「ティヒア様、あー、小梅ちゃんの方が恵さんにはわかりやすいですよね」
立ち止まった恵に気づかずに、井上は先を歩いている。恵は慌ててリードを掴むため、小梅の後を追った。
「小梅ちゃんが地球からこの世界、キニギアースへ戻ってきたので今後のことを話し合わなくてはいけないのですよ」
「はあー」
無事にリードを回収できた恵は、なんとか井上の話を聞いていた。しかし聞いたところで、さっぱりわからない。どうしても曖昧な相槌しかできなかった。
「急に言われてもわかりませんよね」
「すみません」
「いえ、いいんですよ。そうですねー、何からお話すればいいですかねー」
どんな話が出てくるのか検討もつかない恵は、ゴクリと唾を飲み込んだ。




