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昼から夕方に差し掛かる頃、あたしと夜耶は帰り道を歩いていた。

このあたりは、大きな川が流れていて橋もかかっていた。

電車が通る橋の河川敷の隣を、帰り道としていつも通る。

あれから、魂体探しを再開。

学校内を歩き回ったけど、見つかるわけもないか。

今日はインターハイというお祭り騒ぎで、学校は賑やかだし魂体も出てこられないんじゃないかも、などとあたしは結論をづけていた。


「今日は、墓真に邪魔されずに探せそうだったんだけどね」

「まあ、無理もないわ」

隣を歩く夜耶は、白い『霊体電話』を片手に見ていた。


「逆によかったんじゃない、迷いのない魂体がいないってことは。

平和だし、魂体が取り込んでいないように見守るのがあたしたちでしょ」

「そうね」と、そこは同意した夜耶。


死んだことを後悔して、現世に魂体がとどまること自体、悲しいこと。

だから、成果がないことは現世、今の世の中がいいことを意味しているわ。

「でも、あの子はいない」

夜耶の言葉が、あたしに刺さる。

落ち込んだ夜耶は、ため息をついていた。

そんな夜耶に、あたしが軽やかに躍り出た。


「大丈夫だって、何とかなる。あたしたち『鎮魂少女』でしょ。

絶対、見つけ出して彼女に共感して、そして魂を鎮魂させるの。

あのバスケ、山喜君のシュートみたいにね」

「知ってる、菜々ちゃん?

バスケで、ブザー終了時にシュートすることを、『ブザービーター』っていうんだよ」

「へえ~、じゃああたしたちも『ブザービーター』なんだ」

あたしは、バスケのシュートのふりをして見せた。


「じゃあ、なおさらあの魂体を探さないとね。『ブザービーター』に、ならないと」

「そうだね、諦めちゃいけないね」

落ち込んだ夜耶の顔が、明るくなる。

そのことが、あたしには嬉しかった。

そんな時、カキーンと金属の音が河川敷から聞こえた。


少し寒い秋のこの日、あたしは河川敷に目を移していた。

結構広い河川敷は、少年野球をやっている姿が見えた。

そして、その隣では少し離れた広場で見慣れた二人組を見かけた。


「あれは、桃ちゃん?」

小さな桃が、ジャージ姿とスカートというアンバランスな格好でうなだれていた。

百々の隣では、哀愁漂う顔をした背の高いブレザー姿の山喜君がいた。

身長差三〇センチの二人組は、同級生というより、親子にも見える。

もちろん、桃が娘ね。


「放っておいた方が……」

「大丈夫よ、ちょっと気になるから」

夜耶の制止を振り切り、あたしはすぐさま河川敷に降りて行った。


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