17
昼から夕方に差し掛かる頃、あたしと夜耶は帰り道を歩いていた。
このあたりは、大きな川が流れていて橋もかかっていた。
電車が通る橋の河川敷の隣を、帰り道としていつも通る。
あれから、魂体探しを再開。
学校内を歩き回ったけど、見つかるわけもないか。
今日はインターハイというお祭り騒ぎで、学校は賑やかだし魂体も出てこられないんじゃないかも、などとあたしは結論をづけていた。
「今日は、墓真に邪魔されずに探せそうだったんだけどね」
「まあ、無理もないわ」
隣を歩く夜耶は、白い『霊体電話』を片手に見ていた。
「逆によかったんじゃない、迷いのない魂体がいないってことは。
平和だし、魂体が取り込んでいないように見守るのがあたしたちでしょ」
「そうね」と、そこは同意した夜耶。
死んだことを後悔して、現世に魂体がとどまること自体、悲しいこと。
だから、成果がないことは現世、今の世の中がいいことを意味しているわ。
「でも、あの子はいない」
夜耶の言葉が、あたしに刺さる。
落ち込んだ夜耶は、ため息をついていた。
そんな夜耶に、あたしが軽やかに躍り出た。
「大丈夫だって、何とかなる。あたしたち『鎮魂少女』でしょ。
絶対、見つけ出して彼女に共感して、そして魂を鎮魂させるの。
あのバスケ、山喜君のシュートみたいにね」
「知ってる、菜々ちゃん?
バスケで、ブザー終了時にシュートすることを、『ブザービーター』っていうんだよ」
「へえ~、じゃああたしたちも『ブザービーター』なんだ」
あたしは、バスケのシュートのふりをして見せた。
「じゃあ、なおさらあの魂体を探さないとね。『ブザービーター』に、ならないと」
「そうだね、諦めちゃいけないね」
落ち込んだ夜耶の顔が、明るくなる。
そのことが、あたしには嬉しかった。
そんな時、カキーンと金属の音が河川敷から聞こえた。
少し寒い秋のこの日、あたしは河川敷に目を移していた。
結構広い河川敷は、少年野球をやっている姿が見えた。
そして、その隣では少し離れた広場で見慣れた二人組を見かけた。
「あれは、桃ちゃん?」
小さな桃が、ジャージ姿とスカートというアンバランスな格好でうなだれていた。
百々の隣では、哀愁漂う顔をした背の高いブレザー姿の山喜君がいた。
身長差三〇センチの二人組は、同級生というより、親子にも見える。
もちろん、桃が娘ね。
「放っておいた方が……」
「大丈夫よ、ちょっと気になるから」
夜耶の制止を振り切り、あたしはすぐさま河川敷に降りて行った。