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「入れっ!」

あたしと夜耶も、手を重ねて祈った。

ボールは、バスケットゴールに向けて飛んでいく。

そして、ゴールの金属の淵に当たり、鈍い音を立ててはじかれた。


それと同時に漏れる会場のため息、あたしもため息をしてがっくりした。

何よりシュートを打った山喜君は、その場に愕然と両手をついて倒れこんでしまった。

顔面蒼白で、涙があふれ、完全に腰が砕けていた。


勝負は、時として残酷よ。

隣では、喜ぶ赤いユニホームの選手たち。

白のユニホームの選手たちは山喜君に近づいて、涙するものもいた。

肩をたたいた、選手たちはショックで立てない山喜君を両脇に抱えていた。

彼は、顔をぐちゃぐちゃにして泣いていたからだ。


「ううっ……ずいません」

大きな震えた声で、山喜君は謝っていた。

そういえば、山喜君は涙もろかったわね。

そこに、会場全体から惜しげもない拍手が送られた。


「なんかいいわね、バスケ」

妙に一体感のあった体育館の感動に、あたしもやっぱり泣きそうになっていた。

ようやく立ち上がった山喜君を抱え、選手たちが礼をしていた。

礼の後、体育館の中は拍手が鳴りやまない。あたしも、その一人。


あれ、もしかして泣いていない?おかしいなぁ。

すると、隣の夜耶がハンカチをあたしに渡してきた。

「菜々ちゃん、山喜君のこと好きになった?」

夜耶が、拍手しながらあたしの方にやはり少し泣きそうな顔を見せてきた。

あたしは、素直に夜耶のハンカチを受け取って目頭を押さえた。


「えっ、違うわ。そんなことしたら、桃に睨まれるじゃない」

「ふふっ、そうね」そんな夜耶の言葉とは対照的に聞こえた、ヒソヒソ話。

後ろにいる女子だろうか、その言葉がよく聞こえた。


「あ~あ、これで最強世代の三年生が引退か」

「うん。ようやく今回は、優勝のチャンスが来たんだけどね」

そのヒソヒソ話が、なんだかあたしに引っかかっていた。


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