16
「入れっ!」
あたしと夜耶も、手を重ねて祈った。
ボールは、バスケットゴールに向けて飛んでいく。
そして、ゴールの金属の淵に当たり、鈍い音を立ててはじかれた。
それと同時に漏れる会場のため息、あたしもため息をしてがっくりした。
何よりシュートを打った山喜君は、その場に愕然と両手をついて倒れこんでしまった。
顔面蒼白で、涙があふれ、完全に腰が砕けていた。
勝負は、時として残酷よ。
隣では、喜ぶ赤いユニホームの選手たち。
白のユニホームの選手たちは山喜君に近づいて、涙するものもいた。
肩をたたいた、選手たちはショックで立てない山喜君を両脇に抱えていた。
彼は、顔をぐちゃぐちゃにして泣いていたからだ。
「ううっ……ずいません」
大きな震えた声で、山喜君は謝っていた。
そういえば、山喜君は涙もろかったわね。
そこに、会場全体から惜しげもない拍手が送られた。
「なんかいいわね、バスケ」
妙に一体感のあった体育館の感動に、あたしもやっぱり泣きそうになっていた。
ようやく立ち上がった山喜君を抱え、選手たちが礼をしていた。
礼の後、体育館の中は拍手が鳴りやまない。あたしも、その一人。
あれ、もしかして泣いていない?おかしいなぁ。
すると、隣の夜耶がハンカチをあたしに渡してきた。
「菜々ちゃん、山喜君のこと好きになった?」
夜耶が、拍手しながらあたしの方にやはり少し泣きそうな顔を見せてきた。
あたしは、素直に夜耶のハンカチを受け取って目頭を押さえた。
「えっ、違うわ。そんなことしたら、桃に睨まれるじゃない」
「ふふっ、そうね」そんな夜耶の言葉とは対照的に聞こえた、ヒソヒソ話。
後ろにいる女子だろうか、その言葉がよく聞こえた。
「あ~あ、これで最強世代の三年生が引退か」
「うん。ようやく今回は、優勝のチャンスが来たんだけどね」
そのヒソヒソ話が、なんだかあたしに引っかかっていた。