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体育館は、これでもかっていうほどの人がコートの試合に集中していた。
もちろん、男子バスケの選手がコートの主役。
得点ボードには、あたしの葛芝高がよその高校と戦っていた。
バスケはよくわからないけど、決勝と書かれていた。
点数は、七十六対七十五。
接戦みたいだけど、あたしの学校は一点リードを許していた。
試合の時間だろうか、時間はあと十秒を切っていた。
「うわっ、都大会決勝だって。夜耶、すごいね」
『都大会決勝』って書いてあったから、あたしは興奮していた。
始めて見るけど、この体育館全体はすごい熱気に包まれていた。
「そうだね、菜々ちゃん」
「葛芝高ってバスケ、強かったんだね」
母校の意外な誇れるところを見つけて、あたしは感動した。
人ごみをかき分けて、前に出たあたし。夜耶も、体育館の中を見ていた。
あたしは、コートを見ていた。どうやら、赤いビブスが相手ね。
白のユニホームが、私たちの葛芝高。名前も、入っているし。
その白いユニホームが、相手陣内に攻め込んでいた。
体育館が、大きく揺れるような歓声。
「いけー」という声と、ブラスバンドの演奏が続く。
そんな大きな声と音楽の中で、あたしは冷静にコートの中の一人の選手を見ていた。
「あれって、山喜君じゃない?」
ボールを持ったのが、サーファーの様に日に焼けて背の高い男子。
そう、この子が山喜 龍之介君。桃の幼なじみ、凛々しい男子。
あたしも、夜耶も唯一知っている一つ年下の近所の男の子。
彼が白いユニホームを着て、険しい顔でボールを手に弾ませていた。
ボールを奪いうため、赤いユニホームの男子が手を伸ばしてくる。
山喜君がいるってことは、おそらく桃も、この体育館のどこかにいるわ。
って、二階の踊り場で先頭に立って旗を振っているし。
「がんばれ~、葛芝高!」
小さな体で、懸命に降っている姿は、旗に振られているようにも見えた。
なるほどこれね、桃が頑張るっていうのは。
再びコート内に、視線をうつす。
相手選手の手を山喜君がかいくぐって、シュート体勢になった。
山喜君は、真っ直ぐゴールを見ていた。
奥にいた相手選手をかわすことなく、白い円の中に入ってからシュートを打つ。
シュートと同時に、なったブザー音。
山喜君のシュートを、相手選手が叩こうと手を伸ばすが届かない。
ボールはゴールに向かって、きれいな放物線を描いて飛んでいく。
そこにいた誰もが、ボールの軌道を目で追っていた。