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奴隷or性奴隷


「……もう離していいか?」

「ん? ――ああ」

 悪いといって、ぼくは少しあわてながらリラを離す。 

 あれからしばらく暖かい木漏れ日の中2人で抱き合っていたのだが、そのひと時も終わりらしい。

 せっかく人間離れした美少女に抱きしめてもらっていたのに。

 別に悔しくないこともないけど、まあ、いいや。

「ふう、で、ラートが呼んでいるのだが……、どうする?」

 リラはベンチに腰を下ろしながら訊いてくる。

「まあ、少し遅れているわけだしもう少し遅れても良くないか?」

 そういってぼくもリラの隣に座る。

 やっぱりというかベンチは太陽の光を浴びて温まっていたので心地よい。まあ、心地よいのは隣に

誰かいるせいかもしれないけど。

 いや、このさい認めよう。ぼくの隣に人間ばなれしている(というより人間ではない)美少女がいるからだ。

「そうだな……」

「だろ?」

 だからこそ。

「だからこそ、リラ。もう一度抱き合おうぜ」

「……」

 あ、沈黙だ。

 つい調子に乗ってしまったか……。

「…………まあ、別にかまわないぞ?」

「マジで!?」

 嘘!? 冗談のつもりで言ったのに!

 マジで!?

「ああ、お前が今ここで死ぬのならわたしは泣き叫びながらお前を抱くだろうな」

「そんなリスクはちょっとイヤだ!」

 とんでもないことを言うな。流石の僕だって命は大事だ。

「もしくはお前が一生わたしの奴隷となるのであってもわたしはお前を抱いてやろう。……ハハハ」

「一体奴隷となったあかつきには何をさせる気だ!?」

 しかも一生って! 軽々しくいっちゃ駄目だろ!

「まあ、奴隷といっても性奴隷だがな」

「女の子がそんな言葉を発するな! どんだけ発情してんだよ!? しかも一生だぞ!?」

 恐ろしい奴隷だった。

「……ん、まてよ? 奴隷になったら抱きしめてもらえるし……」

「ちなみに性奴隷というのは流石のわたしでも冗談だ」

「やっぱり冗談なのかよ!」

 少し期待しちゃったじゃねーか!

「大丈夫だ。一生こき使ってやる」

「奴隷は冗談じゃねーのかよ!」

「なんだうるさいぞ。さっきまで赤ん坊のように泣きじゃくっていたくせにまだわめくのか」

「普通そういう恥ずかしいことは言わなくないか!?」

 人間的にも(まあ、人間じゃないのだけれど)!

「そういえばさっき、ぼくがどんな事でも受け止めよう。とか言っていたがアレは嘘か?」

「……いや、まあそれらしきことは言ったと思うけど」

「ならば奴隷となる運命も受け止めるのだな」

「なんでだよ! べつにぼくはお前の奴隷になるために誓ったわけじゃねーよ!」

 それに、なんだその言いがかりは。小学生か。

「……ん、うん……だからぼくを一人にしないでくれ」

「なんで記憶しているんだよ!?」

 たぶん、いまぼく顔真っ赤。

 ぼくそんな恥ずかしいこと言っていたのか。

 というかちょっと口調が似ているところに腹が立つよ!

「まあ、お前はこれからどこにいても独りぼっちなのだがな!」

「キメ顔で言うな」

 あと、全然うまいこと言えてないから。

 なんだよ独りぼっちって。

「ん? お前は我がチームに入ったのはいいけど、みんなよそ者にはよそよそしい態度なのに自分が浮いている事に気がついていないバカなのだろう?」

「酷いバカだな!? 流石にそれぐらいの空気は読めるわ!?」

 あと、何気によそ者とよそよそしいがかかっているのはわざとなのか?

「……え、ああ……気づいてないならいいんだ」

「はい? なんですかその態度………………、え? もしかしてぼく本当に浮いているのか!?」

 だとしたら悲しすぎるわ!?

 いやむしろ、普通にショックなんですけど。

「大丈夫だ! 安心しろ! 逆にみんなが気を使っているから」

「もっと嫌な状況だあー!!」

 ぼく、空気を読む練習をしたほうがいいのかと、本気で考えました。

「まあ、冗談だ」

「……ありがとう。その一言で本当救われたよ……」

 よそ者って、気を使うね……。

 はぁ……、もうちょっとみんなの態度に気をつけよう。

 リラは立ち上がりそんなぼくの態度を見てハハハと笑う。

 本当、人間と外見はそっくりなのになんでここまで美しいのだろう。翼が生えているからなのだろうか。

 んー、おかしな事だ。

「そういえばお前はラートが呼んでいた理由は知っているのか?」

 ふと、思い出したようにリラは問いかけてきた。

「いや、特には知らないよ。……まあ、彼の事自体そんなに知っているわけでもないしさ」

 そういってぼくは頭上に生い茂る木の枝を仰ぐ。

 ラート。

 ラート・トトゥ・グレン。

 炎の眠れる翼。発展途上の天才。時間厳守の潔癖主義。

 ぼくが入れてもらったこの復讐者が集まった集団のリーダー。

 そしてだからこそ、彼もまた復讐者。

 ラートとの一族はあと2種類の種族と共存して暮らしていたそうだ。 


 燃え盛る炎の翼を持った種族『アンディオン』。

 その体からあふれ出る炎は己の身も焦がし大地を焼いた。


 大空を翔る純白の白い翼を持った種族『ソフィア』。

 ひとたび翼を揮うと誰よりも空を踊った。


 七色に輝く透明な翼を持った種族『エレヴィラ』。

 翼というより波長のような形状をしたそれが煌けば物質に魂が宿った。


 3つの種族は豊かに文化を築きあげていた。まあ、過去にはそれなりに戦争や闘争もあったらしいのだけれど和解し、それ以来それぞれの長所を活かしてきたらしい。

 美しい自然のなか、彼らは力を合わし一生懸命営んできた。それは3つの歯車がかみ合わないと不可能なことだろう。どれかいつの種族がかけたとしたらそんな平和は訪れなかったと言っていた。

 共存、平和、愛。全てが満ち足りていた。

そんな世界に突如それは訪れた。

 邪悪なオーラでもまとっていれば良かったのだろうか? 空を裂いて現れた化け物は無機質で無表情で何事にも無関心で、3つの種族、一致団結しようと倒せなかった。

 そして種族は滅亡した。たった3人を残して。

 たった3人の復讐者をおいてその化け物は去っていったそうだ。

 その一人がラートであったり、リラであったり、ルーアダクトなのだった。

 そんなことぐらいだ。

「それで、ぼくを呼ぶ理由はなんなんだ?」

 ぼくは風に髪をなびかせているリラに聞く。

「ん……ああ、たいしたことじゃない。ただ――」


「ただ、やつらを殺す力を探しにいくとかなんだとか」


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