復讐者+1=地球の滅亡
簡単に言うと、人類は滅亡しただけなのだろう。
ぼくが暮らす地球はなんの前触れもなく、なんの予兆も起こるまもなく、異世界の怪物に襲われた。 異世界という存在に――侵された。
まあ、異世界最大の柱において最悪にして最凶にして最低だったあの怪物に手を出されたのだから、仕方がなかったのかもしれない。
よく地震や嵐といった大災害が起こる前触れとして動物たちの大移動であったり大空の変化だったりがあるとか言われているけど、そんなものまったくなかった(と、ぼくは思う)。
天気の変化といえば、前日は大雨で当日は曇りから晴れただけだった。まあ、それはぼくが暮らす日本の話であって、地球の反対側や北極、南極とかどこかで不可思議な変化があったのかもしれないけど、今になってそれを知るすべはぼくにはない。
まあ、いきなりすぎて心の準備というより、現状を把握できずというか何も知らずに多くの人が殺されたり、消されたり、死んでいった。
核兵器廃絶だとか、地球温暖化だとか、地雷撤去だとか、人類が感じていた恐怖なんて足音にもおよばない、想像を絶するレベルの破壊であり、恐怖であり、絶望だった。
いや、きっと多くの人にとって絶望する時間すら与えられなかったであろう。
何も感じる事もなく、大切なものも守れないまま(守る事は不可能だったのだろうけど)いつのまにか意識が途絶えていたのだろう。
そして途絶えた意識だからこそなにも分らないと思う。
それもそうだ。ぼくたち人間は三次元に生きていて、映画や漫画、アニメなどのフィクションの世界では悪魔とか化け物とか神とか色々でてきたりするのだけれど、実際の世の中にいきなりそんなものが現れたとしたら、なすすべがないのも分る。フィクションとは違い、救世主が現れる事も、人類の隠された力が目覚める事も、勇者が現れる事もない。
彼ら異世界にとって、地球が歩んできた科学の歴史はまったくの、無力だった。
いや、科学自体は有能だったのだろう。
今の科学は、宇宙に飛びたてるし、原子の世界すら手に取っていたのだろう。だからこそ多くの海をこえた国をまわる事もできたし、生中継としてワールドカップとかを楽しむことだって出来たし、病気や怪我だってほとんど治せたじゃないか。
誰か有名な人だったか、本だったかがいっていた気がする。『本当に恐ろしいのは幽霊や怪物ではなく人間だ』みたいなことを。
まあ、そんなことはなく人間は弱くもろかったのだけれど。
異世界の力のほうが、怪物の奇抜さのほうが、人類の想像をはるかにしのぎ超えていた。
だからこそ、人類という文明は滅んだのだ。
怪物たちの本能によって、抗う暇もなく滅ぼされたのだろう。
ぼく一人を残して。
いや、ぼくの心に負った絶望と悲しみを残して。
しかし、不幸中の幸いか。
その化け物がやってきたと同時に、その化け物と戦っていた異世界人も現れたのだ。
異世界に対応する力がなかった『異世界から見たら異世界』の地球よりはるかに強い地球から見たほかの異世界人が。
ただし、翼をもがれた天使だったり、力を欲する発展途上の天才だったり、心に傷しか負っていないトラウマだらけの破壊神だったり、ただのバカだったり、怪物と互角以上に戦える力を持たない異世界者だったのだけれど。
しかし彼らもまた、怪物に故郷を奪われた、悲しみにくれる復讐者だった。
簡単に言うと人類は滅亡しただけなのだろう。
そして、ぼくは復讐者となっただけなのだろう。
この異世界を旅する彼らとともに。