日差しの中で
ふと目を開けると日差しが降り注いだ。
「ん」
眩しい。
眩しいので少しまぶたを閉じ、ゆっくりと目が周りの明るさに慣れるのを待つ。
もう少しで夏も真っ盛りになるのだろうか。別にぼくは夏が嫌いなわけじゃないからセミの鳴き声も我慢できるはずだ。ん? 季節ってここにあったのだっけ? あとで誰かにでも聞いてみようか…….
まあ、そんなことはどうでもいい。
「よっと」
ぼくは寝そべっていた体を起こす。
寝そべっていた木の下のベンチ(奇妙なデザインをしていて製作者の頭がまともではなかったか、ぼくが予想もできないような意図があったことが伺える。素材はプラスチック系でもなくも木材だ)は葉の間からこぼれる夏にしてはあまり強くない日差しでとても過ごしやすいポカポカした感じになっていた。
いや、今さらだけどここには季節があるのか知らないのだよな、ぼく。なに夏も真っ盛りだとかセミだとか、日差しとか言っちゃっているのだろうか。心の中だけど恥ずかしい。心に耳があったら誰かに聞かれるのだろうか? だから恥ずかしい?
ぼくは上を向き、背中を背もたれに任せる。
ずっとこんな風に、暖かいベンチに座って木の上に巣を作った鳥たちのさえずりを聞きながら空を流れる雲を見つめていられたらどんなに楽で幸せなのだろうか、と考える。
きっとそれは素敵なことなのだろう。どうしようもなく美しくて誰か他の人にとっては理想なのかもしれない。ぼく自身もそんなひと時はいいなと思う。
でも、それはそれ。
たぶんいまのぼくにはそんな幸せは必要ない。
いや、幸せなんてぼくは欲しくない。
……いや、コレも違う。
きっと、ぼくの大切なもの、欲しかったもの、ぼくの居場所や、ぼくの幸せなんて、もうどこにもないのだろう。
失ったのだ。
あいつのせいで。あいつらのせいで。
あいつらがやってきたせいで、ぼくの日常はこんなにも手の届かない場所にいってしまった。
ぼくが弱く、力がなく、惨めで、雑魚だったから。
ぼくのせいで、ぼくが傷つき、みんなが消えた。
ぼくの願いはもう、届かない。
……ああ、なんでだろう?
さっきまでは普通だったのに。
普通で正常で、なにごともなく存在できたのに。
さっきまでは今この場所が、美しく、素敵で、きらびやかで、なにか大切なものだと思っていたのに。
なんだ、狂っているじゃないか。
この降り注ぐ日差しも汚れている。
後ろにそびえる木だって壊れている。
ぼくが座るベンチもひどく腐っている。
ああ、世の中なんて醜いのだろう。
こんなセカイにぼくはいてはいけない。
いや、こんなセカイが存在してはいけない。
壊す。壊す。破壊だ。
跡形もなく消し去ってやる。空間ごと消滅させてやる。
本当、なにもかも。
ぼくはそっと手を挙げる。
甲を自分に向け、手のひらで日差しをさえぎるように右手を顔にかざす。
こんな世界――、
「…………消えちゃえ」