婚約破棄する相手は変更です。今度は、姉の私がお相手しましょう。
「俺は、最初からお前との婚約など、死ぬほど嫌だったんだ!」
――放課後、学園の教室。
静まり返ったその場所で、私の婚約者であるサンクと、その浮気相手のガレリアラが、床に座り込む私を冷たく見下ろした。
「……ひどい、です……婚約は、そちらから申し込まれたはずなのに……どうして……」
つい先ほど、この男に殴られたばかりの赤い頬に触れる。
できるだけ悲しい表情を作って、二人を見上げた。はぁ、この泣きそうな演技、すごく疲れるんですけどね。
「そんなの、お前の家の財産目当てに決まってるだろ! でなければ侯爵家の跡取りであるこの俺が、お前みたいなつまらない女と婚約するものか!」
……やっぱり、財産目当てだったのね。
まあそうでなければ、侯爵家が子爵家に婚約を申し込むはずないか。私の家――マグマイア家は、領地で希少な宝石の鉱脈が発見されたことで、ここ数年のうちに莫大な財産を築いた。それまでは皇都の社交界で名前が話題に上ることさえ稀な、地方の子爵家にすぎなかったのに。
「両親の命で仕方なく婚約を受け入れたが……やはり、俺にお前はふさわしくない! 俺に似合うのは、美しく華やかで聡明な、リアラのような女性だ!」
サンクがガレリアラの腰を引き寄せながら、そう口にする。
「あははっ! ほんっと惨めねぇ。あんたみたいな地味な女が、私に勝てるわけないでしょ」
口角を上げ、勝ち誇るように笑うガレリアラ。
確かに彼女は、男の目を引き付けるような容姿をしている。金の髪は美しいし、そのウェーブも色気を増し、紅を引いた赤い唇が魅力的に輝いている。
「で、では……サンク様との婚約を、止めます……!」
「馬鹿が。そんなこと許すわけないだろ」
サンクは、冷たく吐き捨てた。
「許さないって……。サンク様が、私よりもガレリアラ様を選んだのに……!」
「俺が愛しているのはリアラだけだ。だが、婚約は破棄しない」
何なの、こいつ。
勘違いの上から目線。愛しているのは浮気相手。なのに、婚約は続けてやるって? 馬鹿にしてるでしょ。
「忠告しておくが、断れば――お前の大好きな家族がどうなるか、分かってるんだろうな?」
「……どういう意味ですか?」
「はっ。そんなことも分からないのか?」
サンクは鼻で私を笑うと、私を冷たく見下した。
「侯爵家に喧嘩を売ってただで済むと思うのか? 地方の子爵家なんて、簡単に潰せるんだぞ」
「……それ、は……」
「結婚すれば、お前の家は侯爵家と姻戚関係になれる。皇宮や社交界での立場だって、今よりずっとよくなるんだぞ。有力な貴族との繋がりもできる。それなのに、その幸運を自ら捨てるつもりか? お前みたいなろくでもない娘を持って、家族はさぞ嘆き悲しむだろうな」
――なるほど。こうやって、家族を盾にして縛っていたのね。
私のもとまで来ると、サンクはぐいっと髪を掴んだ。痛いほど乱暴に。
「立場を弁えろ。お前は黙って、俺に従っていればいいんだ」
「……ひどいお言葉ですね」
大切にする気もなく、蔑み、浮気相手の存在まで当然のように認めさせて、孤独の中で惨めに生きろと?
私を――「妹」を、いったい何だと思っているのよ……! 許せない、絶対に許さない。
「…………あんまり私のことを、舐めないでくれますか?」
「い――っ!」
私の髪を掴むサンクの腕に、ぎりっと爪を立てた。
痛みに顔を歪め、ばっと手を離す。私は立ち上がると、ぱっぱっと、スカートについた汚れを払った。
「お前、何しやが――」
「私の家を、簡単に潰せる?」
静かに、低い声で言い放つ。
「我が家の財産をあてにしないといけないような借金まみれの侯爵家が、何を仰るやら――笑わせるわ」
「「……へ?」」
怒るでもなく、呆然とするサンク。その隣では、ガレリアラも同じように呆然としていた。
急に人が変わったように豹変した私に、驚いているんでしょうね。私は今まで、貴方たちに逆らったことがなかった。私を何をしても反抗してこない気弱な女だと思い込んでいたんでしょ?
でも残念。
私はただ――妹の「真似」をしていただけよ。
「お前……っ、アイシャの分際で……!」
「分際? 婚約破棄されて困るのが誰かも分からないほど頭の弱い貴方に、言われる筋合いはないわ」
「な――っ」
私は今度は、ガレリアラへと視線を向けた。
「こんな婚約相手のご機嫌も取れないような男。私はいらないから、ガレリアラにあげるわよ」
喜んで、ね。由緒正しい家柄であることだけしか取り柄がない男だけど。
「はぁ!? あんた……何様のつもり!?」
「少なくとも、貴女よりは爵位が上の令嬢のつもりですよ。ミステェナ男爵令嬢」
軽い挑発のつもりだったのに、顔を真っ赤にして怒鳴り返すガレリアラ。
私から奪った相手を、得意げに見せつけていたくせに。その相手を譲ってあげるんだから、喜んでほしいわ。
「婚約は必ず破棄します。こっちから捨ててあげるね」
「ア――アイシャ、待て!」
「五月蠅い」
冷ややかな視線を一度だけ投げつけると、私は振り返ることなく教室を後にした。
廊下をすたすたと歩きながら、ふと横の窓に映った自分の姿が目に入る。
「もう、いらないか」
そう言って眼鏡を外し、重い前髪を指で掻き上げる。学園に入学して初めて、視界が良好になった気がする。
「浮気されたんだもの。もう大人しくしている理由なんて、どこにもないよね」
これまでわざと控えめな服装をしていたのは、行動に移すその瞬間まで目立ちたくなかったから。妹を演じていたのも、サンクたちが本当に妹を裏切るか確かめるため。こうして確認できたのだから、もう我慢する必要はない。
「覚悟しなさい」
私は忘れない。
貴方たちが妹を紙屑のように捨てたことを。悪妻と汚名を着せ、慰謝料と銘打って我が家の宝石の販売ルートを奪ったことを。それが原因で妹――エミリアが心に深く傷を負ったことを。
今度は、姉の私がお相手します。
◇
私の可愛い妹があの男に振り回され、惨めに捨てられたのは、三年前にあの男の家、グライドル侯爵家から婚約の申し出があったことが発端だ。
地方の子爵家に舞い込んだ侯爵家からの縁談。父も母も喜びに舞い上がり、婚約を受け入れた。
マグマイア家は私と妹の二人しか子供がおらず、長女の私が跡継ぎとなることは早くから決まっていた。だから、妹のエミリアが婚約することになった。
「お姉様……私、頑張ってくるね」
「ええ。行ってらっしゃい。でも……無理はしないでね」
侯爵家の婚約を受けるにあたって、先方から提示された条件の一つが、皇都有数のヨールムーン学園への入学だった。そこで貴族としての心得や振る舞いを学ぶように、とのこと。私は領地での生活を優先していたため、学園には通わなかったけど……婚約者の経歴を気にする貴族は少なくない。
妹が皇都に向かうのを、お父様とお母様、家族総出で見送る。
この時は、妹があんな目に合うなんて思わなかった。サンク様に愛され、大切にされ、幸せになるんだと――信じて疑っていなかったのに。
「ごめんね……お姉様」
「エミリア!」
妹の部屋。
いつでも帰ってこられるようにと残しておいた部屋のベッドの上で、エミリアは力なく呟いた。その姿は出ていった頃とは比べ物にならないほど痩せこけ、あれほど輝いていた笑顔はどこにもなく、代わりに浮かんでいるのは――悲しみだけだった。
「お父様も、お母様も……だめな娘で、ごめんなさい」
「ああ、エミリア!」
「だめな娘なものか! お前は、私たちの大切な娘だ!」
お父様もお母様も、痩せた妹の手を握りしめ、ベッドに埋まるように泣いていた。
「でも、私のせいで……家が……大切な宝石が……」
妹は、学園生活で「悪役令嬢」の烙印を押され――婚約破棄されて戻ってきた。
しかもその際に、慰謝料という名目で我が家の宝石事業が生み出す利益まで奪われて。後になって知ったことだけど、グライドル侯爵家は名門の看板こそ掲げていたものの、実態は浪費と放漫経営を繰り返し、借金まみれだったらしい。
恐らく最初から、我が家の資産を目当てに婚約を申し込んだのだろう。
別に、それ自体に異を唱えるつもりはない。資産目当てだったとしても、こちらには侯爵家との縁が得られる利点がある。我が家の財力で立て直せるのであれば、それはそれで良かった。
けれど――。
「妹を大切にしないどころか、踏みにじるなんて……!」
あいつは自分の欲を優先し、妹を都合よく悪者に仕立て上げて婚約を破棄し、そのうえ慰謝料という名目で我が家の財産にまで手を伸ばしたのだ。
こんな横暴、許せるはずがない。
「エミリアが悪役令嬢……!? ふざけないで……!」
家に戻ってきた妹は、見るも無残に体も心も衰弱していた。どれほど苦しい思いをしてきたのか、想像するだけで辛くて――妹はこれから先、ずっと悪役令嬢として肩身の狭い思いをして生きていかなかればならない。
こんなことになるなら、私が婚約を受けていればよかった。
「やり直せるなら――私が、妹を守ります……!」
心からそう祈った。
そんな奇跡なんて起こるはずがないと思いながらも、神に祈るしか道がなくて。だけど、神様は私の願いを聞き届けてくださった。次に目が覚めた時には――――五年前、十六歳の時の私だったのだから。
「女神様。心から感謝いたします」
ぺたぺたと頬に触れて、触感を確かめる。
部屋を見渡し、子供っぽいからと捨ててしまったあとに後悔した猫のぬいぐるみを見つけた瞬間――過去に戻れた実感が沸いてきた。
そうしてすぐに、妹に代わって私はサンクとの婚約を受け、こうして学園に入学したのだ。
◇
「浮気現場も押さえたし、これで妹の真似をしなくていいよね」
エミリアは心優しい反面、人見知りで少し気弱な性格をしている。だからこそ、サンクたちは彼女の弱さにつけ込んだのだろう。相手有責による婚約破棄を成立させるために、これまで耐え続けてきたけど……これで、大人しくしている必要はない。
「私を悪役令嬢に仕立て上げるための時間稼ぎをしたかったんでしょうけど……詰めが甘いね」
妹なら黙って従ったかもしれないけど、私は違う。
貴方たちの思い通りに追い詰められ、濡れ衣を着せられ、そのまま悪役令嬢に成り下がるほど私はか弱い女じゃない。
「さて。さっさと婚約破棄しよーっと」
鼻歌でも歌うように上機嫌で、廊下を歩く。
浮気の証拠はこれ以上ないほど揃えたし、私に対する暴言も全部記録してある。婚約を破棄する理由としては十分でしょ。政略結婚にしろ、大切にしなければならないはずの私を蔑ろにしたこと――死ぬほど後悔すればいいわ。
「せっかくだから、このまま最後まで学園生活を楽しんじゃおうかな」
サンクのことだ。きっと、これからもしつこく絡んでくるだろう。もし再び妹に手を出すようなことがあれば……今度こそ、私の方が物理的に手を出してしまう。
そうならないためにも、学園生活を楽しみつつ、適度に奴等を見張っておかないとね。
「アイシャ」
後日。
サンクとガレリアラは二人揃って、教室にいた私のもとを平然と訪ねてきた。
……わざわざ浮気相手を伴って現れるとは、ずいぶんと神経が図太いものね。
「何かご用でしょうか?」
「何だ、つれないな。せっかく婚約者が訪ねてきてやったのに」
……白々しい。今までは私が会いにいっても、無視して取り合いもしなかったくせに。
「お気遣いは無用です。どうせ、もうすぐ赤の他人になるので」
ざわざわと、教室の空気がざわついている。
無理もないか。これまでの私は分厚い瓶底眼鏡をかけ、長い前髪で顔を隠し、人と話す時は常に俯き加減。声も小さく、誰が見ても根暗な令嬢を演じていた。早く奴等の尻尾を掴みたくて、妹の気弱な感じを誇張した結果だけど。そんな私が眼鏡を外し、髪を整え、真っ直ぐ前を向いてはっきりと言葉を紡いでいる。しかも――婚約者とは名ばかりだったグライドル侯爵令息が、突然私を訪ねてきた。そして、彼に向けた私の容赦ない返答。……そりゃあ、驚くよねぇ。
「アイシャ、君は何か誤解してるんだ」
「ええ、そうですわ。私たちは今日、その誤解を解きにきましたのよ」
ガレリアラが、ここぞとばかりに前に一歩踏み出す。
「昨日のことは、ほんのちょっとした冗談のつもりでしたの。それなのに……まさかアイシャが、あそこまで真に受けるなんて思いもしませんでしたわ」
「ああ、まったくだ。冗談の通じない女というのは、これだから困る。俺も少々言い過ぎたところはあったかもしれないが……まあ、お互い水に流そうじゃないか」
二人は悪びれる様子もなく、むしろ自分たちの言い分が正しいとでも言いたげに、にやにやと笑っている。まるで、こちらが折れて当然だとでも思っているかのように。
……これで、本当に誤魔化せるとでも思っているのかしら?
「何も誤解してません。貴方がガレリアラと浮気していたことは事実です」
「嘘をつくな。証拠なんてないだろ?」
「ありますが」
「あるのか!?」
ばっと、私は鞄をひっくり返した。
中に忍ばせておいた品々が、これ見よがしに机の上へと広がっていく。
「こちらが、先日貴方とガレリアラが教室でキスしていた写真。そしてこちらは、授業を抜け出し、二人で屋上でいちゃついていた時のものです」
中には、なかなかに際どいものもある。
ガレリアラはそれを目にした途端、「きゃあっ!」と短く悲鳴を上げ、慌てて写真の上に覆い被さった。
「ちなみに、私に対する暴言の数々も録音済みです」
「お、おい! やめろ!」
周囲の反応を気にしてか、必死で止めるサンク。
止めろ、と言われましても……私がわざわざ貴方方の空気を読んで、大人しくしていると思う? 馬鹿じゃないの?
「破いても壊しても無駄ですよ。すでに数々の証拠はお父様に送ってあります」
それはもう即日に。
娘を溺愛しているお父様のことですから、すぐに手続きに入ってくださるでしょう。
「こ、こんなもの、いつの間に……!」
「サンク様も知っての通り、私の家はかなりのお金持ちですから。高価な映像石や録音機も簡単に手に入れることができました」
貴方が浮気をすることはあらかじめ分かっていましたし、何の備えもせず、のこのこと現場に乗り込むほど、私は愚かではありません。
証拠を押さえるための事前準備は、すでに万全に整えていました。
「な、何なんだよ……! いったい、どうしたというんだ。君は、とても優しかったはずだろ!」
「サンク様のひどい裏切りに傷ついて目が覚めました。いいじゃないですか。このまま浮気相手と結婚すれば。……私とは比べ物にならないほど、魅力的な女性なんでしょ?」
美貌しか取り柄がない、私の家よりも遥かに小さな領土を持つ辺境の男爵令嬢ですが。
「違う! 本当に……君が、好きなんだ。アイシャだって、俺のことが好きだろう?」
「本気でそう言っているのなら、その神経を疑います」
どこにその要素があった? 自分がどれだけ人に選ばれる立場だと勘違いしてるのやら。本当に恥ずかしい男ね。
「ま、待ってくれ! 婚約を破棄するのは構わない。だが、あと少しだけでも時間を……!」
「私有責で婚約を破棄するための、時間稼ぎでしょうか?」
「な、何故それを……」
「言っておきますが、婚約破棄は決定事項です」
私は立ち上がると、じっとサンクを見据えた。
「いいですねぇ、恋愛結婚。恋に溺れるサンク様には、実にお似合いです」
「この……いい加減に黙れ!」
サンクはかっと顔を赤らめると、勢いよく手を振り上げた。……また殴る気? 沸点が低いことで。
「――その辺でやめておこうか? サンク」
そこで私とサンクの間に立ったのは、同じクラスのテオだった。
彼は冷え切った眼差しでサンクを見据え、その振り上げられた腕を掴んで制止する。
「テオ」
「アイシャ。大丈夫?」
サンクを睨みつけていた時とは違う、柔らかな瞳が私に向けられる。
彼とは、この学園に入学した当初からの付き合いだ。それから、何かと私を気にかけてくれているのよね。
「昨日もアイシャを殴ったそうだな。これ以上……彼女を傷つけるのはやめてもらおうか」
テオの怒りが、ひしひしとこちらまで伝わってくる。
庇ってくれるのは嬉しいけど……腐っても、サンクは侯爵家のご子息。私たちの争いに巻き込んで、万が一にも彼に被害があっては申し訳がない。
「いいの、私は大丈夫だから」――そう言って、テオを引っ込めようとした。
だけど、テオの顔を見たサンクは明らかに顔を真っ青に染めて……体を震わせていた。
「テ、テオドール様……!」
――ん? テオドール……?
私は彼から「テオ」と呼んでと言われて、そう名前を呼んでいたけど――そういえば、本名を聞いていなかった気がする。自信過剰で傲慢。俺様気質の侯爵令息のサンクが恐れる相手って……いったい何者なの?
「アイシャと君の婚約破棄は、僕が責任を持って取り計らいましょう」
「テオドール様! 違うんです、これらは全て、アイシャの策略で……!」
「これだけ証拠が揃ってあるのに、見苦しいな」
テオはそう言って、サンクを睨みつけた。
「手続きに不備がないよう、家の者にはきちんと言い聞かせておくよ。ご安心ください。我がイシュタルク家は代々、国の政務を担ってきた家柄ですから」
「政務を……担う?」
告げられた言葉の意味が、すぐには頭に入ってこなかった。
私はこれまで、地方の領地に引きこもるような生活を送ってきた。だから、貴族社会の事情に疎いことは自覚している。だけど――イシュタルクの名には、聞き覚えがあった。
「まさか……イシュタルク公爵家? しかも、代々宰相を輩出している家の……?」
私は思わずテオの横顔を見上げた。
いつも私に向けられる優しい笑顔からは、そんな大それた家柄の人だなんて想像もつかなかった。
――私、もしかして、とんでもない人に「テオ」なんて気安く呼びかけていたのでは……?
「アイシャ、安心して。僕が必ず――君にまとわりつく虫を、綺麗に排除してあげるから」
にこやかな笑顔で告げられた言葉に、私は一瞬、反応に困った。
「虫」。その排除自体に異論はない。むしろ、こちらからお願いしたいくらいだけど……。私、知らないうちに、とんでもなく頼もしい味方を手に入れてしまったってこと?
「そんな……アイシャと結婚しないと、グライドル侯爵家が……!」
茫然自失するサンク様。
馬鹿な男。政略結婚を素直に受け入れて、形だけでも私を――妹を大切にしていれば、こんなことにはならなかったのにね。
どうぞ、死ぬほど後悔してくださいね。
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