第3話 メイド管理職はつらいよ
「おいババァ!何で今月のアタシの給料ちょっと減ってんの!?」
「お前がこの前の政府系の依頼で、ヤクの売人に機密喋ったからだろうが!
あと上司をババァ呼びすな。殺すぞ!
こっちは仕事全部録画してんだよ。
ちょっと美人って言われた位で機密をペラペラ喋りやがって!
処女か?処女なんだろお前はよ!
コードネーム「処女」にされたくなかったら今後気をつけろ!マジでそのうちハニトラ引っかかるぞお前」
「うるせーよババァ!すぐ殺したからいいじゃねーか!
しかもあそこは社内で盗聴の心配も無かったろ?セクハラで訴えるぞマジで!」
「アラサーをババァ呼ばわりもセクハラだよ!殺すぞ!」
今日も事務所は喧騒、喧騒だ。うるせぇ。
これだから人間は嫌いだ。
あと事務所でもメイド服着る必要ある?
いや仕事でもそうなんだけど
「ってか何でアタシがT3でアイツがT2なんだよ。同期なのにおかしいだろ!
この前の左翼集団の時もアイツが指揮官だったしよぉ」
あ、次は私の話だ。それは私の方が優秀だからだよ。
「サイレントの方がウチの戦闘教義に忠実だからだよ。ちゃんと評価も示してるだろ。
実力はトントンだけどさ、お前は我流、アイツはウチ流なんだよ。だから会社としては評価に差をつけなきゃいけないの。」
さっきババァと呼ばれてたこの人は私たちの上司 上原 恵さん(心の中ではめぐみんと呼んでる)
コードネームは「ネイチャー」。
階級はT1で、私とトーキーの上司であり師匠と言って良い人物だ。
アラサーらしいけど歳は知らない。聞く必要も勇気もない。
ちなみにトーキーはセカンド処女だ。なんか義父からレイプされてたらしいが、それ以降は経験ナシ。多分知ってるのは私だけ
私? 私は秘密♡
また、上司のめぐみんは絶賛彼氏募集中だ。本人曰く「この仕事してると公安やら軍のエリートとよく会うからオトコのハードルが上がる」とのことだが…
そんな中、一人社員が事務所に入ってきた。
「ネイチャー、話があります。」
「どうした?スラッシャー」
「ここではちょっと…」
スラッシャーは近接戦闘に長けた1年上の先輩社員だが、まだT3だ。同級のトーキーはまだしも、彼女より先にT2になった私は気まずい。
彼女は私達に少し目線をやり暗示した。「コイツらには聞かれたくない」とのことだ。別に何言ったって興味ねーよ。
まぁいいや。どーでも。
「何であの麻薬野郎を私に殺らせてくれなかったんですか!」
「落ち着けスラッシャー。お前が貧民出身で麻薬野郎に憎悪を抱いていたのは知ってる。でも、だからこそお前に行かせる訳には行かなかった。今まで説明しなくて悪かった。」
「何故!?私の友人も数人アイツのせいでヤク中になった。1人は死んだんだ!久美はいい奴だった。」
「だからだ。いいか、私達はプロだ。だから感情によって殺しちゃいけない。やっていいのは仕事としての殺しだけだ。私情は挟んじゃいけない。」
「だからサイレントが私より上なんですか?あんな根暗が!?私より!?」
「そうだ。サイレントは才能がある。だけど別にそれは人間としての優劣を意味しない。
アイツはたぶん、ただ人間に興味が無いんだよ。でもそれはある意味人格破綻者だ。お前のその友人を思う気持ちの方がよっぽど人間として立派だ。」
「でも私、ここしか無いんです。足し算すらまともに出来ない出来ない私には、これしか…」
「いや、お前は任務のために読み書きを覚えた。算数なんてすぐできるようになる。十分外でもやっていけるよ。ここだけに依存するな。ここを去るなら止めないし、再就職の斡旋もしてやる。ここに残るならここの他にも居場所を作れ。な。人として生きるんだ。」
少し間を置いて、スラッシャーは答える。
「ありがとうございます。少し考えます。
じゃあ、めぐみさんは、何でここを続けてるんですか…?」
「うーん…休みが多いからかな。」




