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1章 25話 精霊とは?

そして、朝。


昨日の夜のせいで、眠くてたまらないのに、セリスが起こしに来た。


「ユラ様、それにルルア様も、起きてください。もうとっくに朝ですよ。まったく、毎朝毎朝、二人して。いつになったら一人で起きられるようになるんですか」


セリスはほっぺをつついてくる。


「セリス……眠い……起きたくない……」


僕は、アールを抱きしめたまま、目を閉じて抗議する。ルルアは、相変わらず僕の背中に抱きついたままで、セリスの声も気にせず、布団をはがされてもなおぐっすりと寝ていた。


「ダメです。今日はお留守番なんですよ。今日くらいはしっかりしてください」


お留守番?なんだっけ?そんなこと言ってたかな?


「分かったよ~。起きるから、セリス運んで」


僕がそう言うと、セレスは、深くため息をついた。


「もう……仕方ないですね」


セリスは、そう言って、僕とルルアを軽々と抱きかかえる。


「それにしても、二人の寝顔は本当に可愛いですね」


セリスは、そう言って微笑んだ。




セリスに抱きかかえられた僕は、そのまま朝食を食べる場所に運ばれた。ルルアは、席に着かされたものの、まだ眠っている。


(あれ……? いつもはみんながいるのに、誰もいないな……)


僕は、そう思ってセリスに尋ねた。


「セリス、なんで誰もいないの?」


セリスは、呆れたような表情で答える。


「ユラ様、まさか覚えてないんですか? ユラ様のお母さまとお父様は、今日は朝早くからお出かけになり、この領地内の貴族の視察に行っているんですよ」


(そういえば言っていた気がする。昨日母が、いい子でお留守番していてね、といっていたっけ?あと、確かリア姉も、貴族の行事とやらで出かけているんだっけかな……)


「視察って、何?」


僕がそう尋ねると、セリスは微笑んだ。


「それは、まず朝食を食べながらお話しましょう」


セリスは、そう言って、僕の目の前に温かいスープを置いた。ルルアは、まだ夢の中だ。僕とセリス、そして眠っているルルアだけの静かな朝食が始まった。




「それで、視察についてでしたか?」


セリスは、僕の問いに頷き、丁寧に説明してくれた。


「それは、この地周辺の貴族から税収を集め、そして、その貴族が不正をしていないか、などを確認するものです。そして、集めた税を国に渡すのも仕事ですよ」


(そんなのあるの……?すごくめんどくさそう)


「なんで、母さんと父さんがそれをやるの?」


僕がそう尋ねると、セリスは微笑んで答える。


「それは、この周辺で一番位の高い公爵家だからですよ。将来、ユラ様が引き継ぐことになるので、しっかり覚えておいてくださいね」


(絶対にやらないからね。そんな面倒なこと。それに、家を出ていく予定だし……僕だけのぬいぐるみのための場所を作って、自由に暮らすつもりだから。ついでに、リア姉も一緒がいいから、貴族としては父さんと母さんの代で最後になるよ、きっと。そんなことするぐらいなら家を出て自立するもん。とにかく、僕はやらない……)


「ユラ様……。すごく、やりたくないって表情をしていますね」


僕は、正直に頷いた。嘘をつく理由はない。


「そこは、頷かないでほしいのですが」


セリスは、困ったように笑った。そのとき、ルルアが、もぞもぞと動き出した。


「んーん……ユラ姉?」


ルルアは、ようやく目を覚まし、周りを見渡す。


「おはよ、ユラ姉」


「うん」


僕は、そう言って、ルルアに返事をする。


「ようやくお目覚めのようで」


セリスが、呆れたような表情で呟く。そしてルルアは、まだ寝ぼけ眼のまま、目の前にある朝食を、夢中で食べ始めた。






朝食を食べ終えると、僕たちはセリスに運んでもらって自室へと戻った。ルルアは珍しく僕から離れ、図書室に用があるらしく、セリスに運んでもらっていた。いったい何をルルアはするんだろう?何か知りたいことでもあるのかな?気になるけど、僕も考えたいことがあるので自分のことに集中する。



正直、昨日の出来事は本当に衝撃的だった。まさかアールに憑依した僕でも勝てないと思わせられる相手がいるなんて。今回は敵ではなかったからよかったけど、もしそれくらいの強さの敵と遭遇することを考えて、もっと強くなりたい。



(あ、そういえば、リュシエルは青の大精霊って言ってたよね……)


僕は、そう思い、アールを抱きしめたまま考えた。大精霊について、少し調べてみようかな。でも、「……めんどくさい」正直あまり興味がないから後回しにしよう。ぬいぐるみについてではないし、ある程度気にはなるけど、こういうのは調べても、本は見つからないし大変すぎるんだよね。この世界でも精霊についてはまだ研究段階ということだから、詳しい本なんてそう簡単に見つかるわけないし。


あ、そうだ、セリスに聞けばいいじゃん。僕が動くよりも、セリスに聞く方が早い。それに、セリスはエルフだけあって長生きだから、知識が豊富にあるはず。


「セリス、いる?」


僕は、セリスを探すべく、部屋を出て歩き始めた。







その頃、ルルアサイド。


(昨日のリュシエルっていう人、すごい強そうだった……)


昨日の夜、ユラ姉が作ってくれたモニター越しに共有されてくるリュシエルという人を見た瞬間、その場にいないのに、次元が違うと思わされるような存在で、体が硬直してしまうほどだった。呼吸を忘れるほどで、途中、ユラ姉が初めて会ったときにくれたぬいレイが、モニターを止めてくれたおかげで、難を逃れた。その後は音声だけにしたけど、ユラ姉は普通に動けて、普通に喋っていた。でも、それができるのは本当にごく一部だろう。それだけ、ユラ姉は凄いんだと、改めて実感した。


そして、一つ気になることがある。リュシエルという人?は、「青の大精霊」と名乗っていたけど、そんな存在であるとは思えない。何でかは分からないけど大精霊ごときのような存在なんかじゃないと確信がある。いや、大精霊がすごくないわけじゃないけどそれでも何かが違う。とにかくあのリュシエルと言おう人はきっと、もっと上の何か。精霊に関しては、なぜか知識が少しあるから、ユラ姉に役立ちそうな情報を集めないと。


「でも、こんなに本を探してもないなんて……」


ルルアは、図書室で本を探し続けていた。すでに数百冊という本に目を通したが、精霊についての本ですら、まだ一冊しか見つかっていない。


(本当に、この図書館にあるのかな……?)


ルルアは、そう思いながら、再び本を探し始める。



◇◇◇◇◇◇◇◇


僕はセリスを探していると、声が聞こえてきた。セリスの声だ。声のする方に向かうと、そこには涙目のリュリュと、リュリュを叱っているセリスがいた。しかも、リュリュは起きたのが今さっきのようでまだパジャマ姿。


「リュリュ。昨日も夜にいなかったのはなぜか、白状しなさい。今日という今日ははいてもらうわよ」


どうやら、昨日はリュリュが夜家にいなかったことがばれたらしい。予想以上に昨日の夜は長引いたことも関係しているのかもしれない。


リュリュは僕を見て、「ユラちゃん、助けてください」と助けを求めてきた。


セリスは僕に気が付き、「あれ? どうしたんですか、ユラ様? こんなところに?」と驚いた顔をする。


「聞きたいことがあって。いまいい?」


「はい。大丈夫です。それで、聞きたいこととは何ですか?」


「大精霊ってなに?」


セリスは僕の言葉に、一瞬戸惑ったような顔をした。しかし、なにか知っているようだ。


「一体どこでその単語を知ったのか分かりませんが、大精霊ですか」


「うん。なんでもいいから少しでも知っていること教えて」


セリスは、少し考えるような仕草をしてから、話し始めた。


「私もあまり知らないし、噂でしかないのですが、大精霊というのは伝説の精霊で、地形を変えるほどの力を持つと言われています。ですが、とても古い伝説でもう知っている人はほとんどいません。一体どこで聞いたのですか?」


(やばい…なんて返そう…。質問されるとは思ってなかった)


「えーっと、夢の中で出てきた」


セリスは、僕の言葉に、フフッと微笑んだ。


「そういうことでしたか。すごくいい夢ですね」


「他にはどんな精霊がいるの?」


「そうですね。下位精霊、中位精霊、高位精霊ですかね。人の国ですと精霊について詳しくないようで、下位精霊を精霊、中位精霊以上を上位精霊と言っているようですが」


「そうなんだ。それじゃあこの辺に浮いてる光の玉見たいなのいは下位精霊?」

いつもぬいレイに入れているふわふわ浮いている光の玉の存在。これこそが精霊なのかな?

セレスは僕の言葉に周囲を見渡し

「光の玉?見当たりませんね?下位精霊は基本的に姿を見せませんよ。それに、小さい羽根のついた人の姿をしています。ユラ様が見えているという光の玉とはいったい?」

見えてないのかな?どういうことだろう?

「何でもない。気のせいだったみたい」


少しセリスは怪しんむ。「そうですか。一応私のほうでも調べておきます」


「ありがとう、セリス。それじゃあ」


僕は、そう言って、その場を離れようとした。すると、こっそり逃げようとしていたリュリュの首根っこを、セリスが掴んだ。


「リュリュ。さりげなく逃げようとして。逃がさないわよ」


「うー……逃げられると思ったのに……」


リュリュは、諦めたように項垂れた。






セリスとリュリュのやり取りを見て、僕はこっそりとその場を後にした。



(ついでに、ルルアの様子も見てみようかな)


僕は、そう思いながら図書室に向かった。扉を開けると、そこにはルルアの姿があった。


ルルアは、いつもはユ僕から離れることのないが、珍しく離れ、真剣な顔つきで何冊もの本を読んでいた。ルルアの周りには、すでに読み終えたのだろう、たくさんの本が山積みにされている。


(いつも僕にべったりなのに、こんなに真剣に本を読むなんて……)


その様子を見て、僕は、ルルアをそっとしておいてあげることにした。集中を邪魔するのはよくないからね。






その後、僕は自分の部屋に戻り、アールを抱きしめたままベッドに転がった。


「ぬいぐるみ、気持ちいい……」


今日は一日中ゴロゴロしていようかな。お日様も出ていて、昼寝日和だ。


でも、昨日のことが頭から離れない。リュシエル。初めて会った、アールに憑依した僕以上の強者。たまたま、今回は敵じゃなかったからよかったものの、もし敵だったらと考えると恐ろしい。それに、リュシエルが完全に味方とも限らない。多分大丈夫だとは思うけど……。


そして何より、僕の理想はアールを最強で最可愛のぬいぐるみとすること。このままでは、全然最強じゃないと分かった。だから、強くなるための努力をしないと。


まずできることといえば、魔法の属性を増やすことだ。僕自身は青属性しか使えないけど、アールなら今、青、緑、黄、黒、さらに最近使えるようになった白属性を合わせ、計五つの属性が使える。あとは、赤と紫属性を使えるようにすることだ。それと、ぬいセカで戦力を増やすくらいかな。


(そういえば、リュシエルくらいの強さの者はたくさんいるのかな?)


僕がそう思った瞬間、頭の中に直接リュシエルの声が響いた。


「そうそういないわよ」


「……」


僕は驚くのではなく、呆れたようなトーンで呟いた。


「なんでリュシエルの声が僕の頭に直接?」


リュシエルは、僕の反応に、少しがっかりしたような声で答える。


「びっくりしてくれると思ったのに、つまんないわね。ユラちゃん、結構タフなのかしら?」


「そんなのいいから、どういうこと? しかも、僕が思っていることが分かるの?」


僕は、問い詰めるように言った。



「ユラちゃんなら賢いからわかっているんじゃないかしら?」


リュシエルの声が頭に直接響いた。そして次の瞬間、僕の目の前にリュシエルが、リュシエルぬいではなく人型で現れ、僕の寝転がっているベッドの上に座った。


「!?」


「あら、これにはさすがのユラちゃんも驚いてくれるのね」


リュシエルは、フフッと楽しそうに笑う。


「どういうこと?これも本体じゃないようだけど。それに、今もリュシエルの声が直接聞こえてくるし……。本体はまだアールの中で休んでいるの?」


「さすがユラちゃん。正解よ」


リュシエルはそう言いながら、僕を持ち上げ、撫でてきた。


「……僕の周りの人は、みんな撫でるのが好きなんだね。というか、どうして触れられるの? 幻像とかだと思ったのに」


「それはね、魔力構成体って言って、簡単に言うと、魔力で構成された、いわば精霊みたいな体と思ってくれていいわよ」


「それじゃあ、本体は?」


「私の場合、概念に存在しているわね」


「大精霊だとそうなの?」


「……それより、あら?」


リュシエルがそう言った、ちょうどそのタイミングで「ユラちゃん、慰めてくださーい。セリスさんが怖かったです」と、泣きながらリュリュが僕の部屋に入ってきた。そして、リュリュはリュシエルの存在に気がつき、リュシエルを見た瞬間、体が震えだした。


「???」


(何してるの、リュリュ?)


リュシエルは、リュリュに目を向けた。


「ふふ。誰かと思えば、いつもユラちゃんと一緒にいるメイドさんじゃない。こんにちは♪」


リュリュは、リュシエルと目が合った瞬間、バタッと音を立てて気絶し、倒れた。


「リュリュ?,,,,,リュシエルでしょ」


(リュシエルが何かしたようには思えなかったけど。どういうことだ……?まあ、心配はしていないけど)


リュシエルは、僕の問いに、何でもないことのように答える。


「私は何もしてないわ。でも、これが普通よ。ユラちゃんが例外といった方が正しいわ。私の前で普通でいられるのは、そうそういないのよ。私の前に立つ資格があるのは、最低でもトカゲちゃん(ヴェネス)くらいの力がないとね」





「それ、僕が魔力を完全に隠蔽しているみたいに、リュシエルもその魔力と、なんかよくわからないオーラを完全に隠蔽してくれれば大丈夫だよね?」


僕は、気絶したリュリュをぬいレイで埋めながら、そう尋ねた。


「まあ、そうだけど、それってすごく大変なのよ。まあ、私くらいになればできなくはないけど、疲れるのよね」


リュシエルは、そう言って、フフッと笑う。


「でも、ぬいぐるみの姿のときは、普通にできていたよね?」


「ええ。そうね。でもそれは、ユラちゃんの作るぬいぐるみが、力を閉じ込めることに関して、すごい性能を持っているからであって、そうじゃない限り、普通、ユラちゃんみたいに異常な制御はできないのよ」


「……僕より強いのに?」


「そうね。最強の私ですらね」


「最強?そういえばさっき、『リュシエル以上の強者はそうそういない』って言ってたけど、本当に最強なの?」


「ええ、そうね。私と同程度の実力を持つのはほとんどいないし、それに、昔私より強い方がいたけど、消滅してしまったわ」


「同程度はいるんだ。でも、ということは、その同程度っていうのは、ほかの属性の大精霊たち?」


「……それは、お楽しみね。そういえば一つ教えてあげる。さっきユラちゃんが気にしてた光の玉みたいなのは微精霊よ。下位精霊になる前の意思なき精霊。ほかの精霊と違って微精霊は周囲に漂う魔力と完全に同化しているから魔力の本質をしっかり理解していて、かつ一定以上の実力がないと認識することができないの。だから、さっきのメイドのセリスというのもが知らないのは当たり前だわ。それじゃあ、私はアールちゃんの中に戻るわ。まだ時間がかかりそうだけど、たまにこうしてお話ししに来るわ。じゃあね」


そう言うと、リュシエルは、僕の目の前で、フッと姿を消した。


(……逃げた)


僕は、そう思った。


「……」


(というか、色々聞きそびれた……。それと、僕の心の中を読んでるよね?)


「読んでないわよ。それに、逃げたとは失礼ね」


リュシエルの声が、頭に直接響く。僕の思考を、まるで遊びのように読んでいるようだ。


(確信犯だな……)


「いつでも話そうとすれば、話せるんだね?」


僕がそう思うと、またリュシエルの声が聞こえてきた。


「ええ。でも、そろそろ、やることに集中するわ」


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