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1章 18話 ぬいレイ2

だけどその時、リア姉の部屋の扉がノックする音が響いた。


「リア様、ユラ様、ルルア様、いないのですか?......返事はないようですね。入りますよ」


セレスの声だ。ぬいレイ作りに夢中で気が付くのが遅れた。僕は慌てて「待って!」と叫んだが、僕の言葉が届く前に扉は開かれた。


「え、なにこれ。キャー!」


扉の向こうにいたセレスが、悲鳴を上げる。そしてなぜか、近くにリュリュもいたようだ。


「うぎゃー!」


二人の悲鳴が響き渡る。水のように溢れ出るたくさんのぬいレイが、二人を襲った。同時に、リア姉の部屋から勢いよくぬいレイが減っていき、リア姉は絶望したように固まる。ルルアは、その光景を面白そうに眺めている。


ぬいレイは、僕の設定どおりに勝手に動き、誰にも見られてない隙に動き、ついでとばかりに隠れ場所を探し始めた。だけど、あまりの量で全然隠れる場所がないのか、ぬいレイたちは家中に広がっていく。


「ふふふ。ユラ姉、すごいね!」


ルルアは、ぬいレイの流れる様子を見て、楽しそうに笑っている。


「セリス……」


リア姉は、セリスを睨むようにして、震える声で呟いた。彼女の表情は、まるで宝物を奪われた子供のようだ。


「3人とも?これは一体なんですか?」


ぬいレイに流されたリュリュとは違って、その場で耐えたセレスは、まだ足元にたくさんあるぬいレイを避けながら、僕たちに近づいてきた。セレスの顔には、笑顔が張り付いている。だが、その目は全く笑っていない。


「ひ……」


ルルアは、セレスの怒気を感じ取ったのか、僕の後ろに隠れた。そして僕は、リア姉の後ろに隠れる。


「私の……ぬいレイが……」


リア姉は、セレスの問いかけにも、上の空だ。


セレスは、顔をピクピクさせながら、リア姉もろとも、僕とルルアを拘束し、どこかへ連れていこうとする。


「どこに……連れていかれるの?」


僕が、震える声で尋ねる。


「……反省室よ」


セレスは、そう言って冷たく微笑んだ。

セレス怖い。リア姉を盾にしよ。


それにしても、すごい範囲でぬいレイが散らかっている。家の中そこら中にぬいレイがいる。本来ならばすぐに隠れて姿を消すのに。これ、多分、隠れ場所を探して見つからなくて、諦めた感じかな?

ちなみにぬいレイは僕と僕が許可したもの(現在はルルア、リュリュ)以外の者が見ているときは一切動かないように命令してある。だから、ぬいレイが動いてるなんてことがばれないように対策万全だ。本来は。でも、今回は狭い範囲で大量のぬいレイ。散らばり方も少々不自然でよろしくない。2、3体のぬいレイなんて、隠れるんじゃなくてセレスに張り付いてる。改善する方法を探すべきかも。



僕たちが連れて行かれたのは、いつもみんなで食事をする場所だった。なにか怒れれるようなことをするとこの空間は反省室と化する。そこにはすでに父と母がいて、この部屋の中にもぬいレイが溢れかえっている。だが、ぬいレイは床には落ちていない。多分、隠れようと壁を登ったり、椅子に上ったりしている途中で、母か父が来たのだろう。その中途半端な状態で、ぴたりと動きを止めていた。僕が「動いているところを決して見つからないように」と指示を出しているから、臨機応変な対応ができず、こうなったんだろう。指示は簡単なものしか出せず、「誰にも見つからないように隠れて、適当に色々と動いて散策して」という大雑把な指示しか出していないからだ。


そんなことを考えていると、セレスは僕たちを椅子に座らせた。


「セレス、3人を連れてきてくれてありがとう。私たちが叱っておくから、セレスはリュリュの救出をお願い。さっき、ぬいぐるみに流されているのを見たわ」


「わかりました」


母の言葉に、セレスは無表情に頷き、リュリュを探しに行った。


そして母が、僕たちに静かに、そして厳しく問いかける。


「それじゃあ3人とも。これはどういうことかしら?家中どこもかしこも、このぬいぐるみで溢れているわよ。一体、どういうことか説明してちょうだい」


母の言葉に、僕たち3人は無言を貫く。怒っている母は本当に怖い。リア姉は上の空で、ルルアは僕の後ろに隠れている。父さんに助けを求めようと目線を送るが、父さんは母の怒りに怯え、そっと目を逸らした。


「……誰か、何か言うことはないかしら?」


母の冷たい声が、部屋に響き渡る。



母の鋭い視線が、僕たち三人を射抜く。


「ぬいぐるみを作るのは、いつもユラよね?でも、これだけの量を一人で作るなんて不可能だし、リアとルルアも協力して、三人で作ったんでしょ?」


母の言葉は、まるで全てを見通しているかのようだった。僕は、こくんと頷く。ルルアも、僕の真似をするように頷いた。


リア姉は、先ほどまでは上の空だったが、僕がそっとつついて復活させる。


リア姉も頷き、「三人で頑張った」と、訳の分からないことを言い出した。でも、リア姉は、こういう時にあまり会話が成り立たないのを知っているからか、母は冷静に怒らない。


「そう。それじゃあ。どうやって作ったのか、どうしてこのぬいぐるみが、いたるところに、しかも変なところに散らばっているのか、説明してくれる?」


母の問いかけに、リア姉は答える。


「ユラちゃんのスキルと、私の魔力と、その辺のふわふわ?」


(え……リア姉、僕がスキル持ちだってこと、知っていたの?まあ、リア姉の前で、あれだけぬいぐるみを作っていれば、ばれるのか……)


僕が内心で焦っていると、母は驚くことなく言った。


「そう。まあ、それは予想していたけれど、やっぱりそうなのねユラ。」


(あれ?驚かれない?予想されてた?)

「ユラは小さい頃、一時期は本当に生死をさまよっていたから、予想はしていたけど、まさか本当にスキル持ちだったとは……」


父さんが、ぼそりと呟く。


「それじゃあ、どうして内緒にしていたの、ユラ?」


母の矛先が、僕に向いた。でも、僕は完璧な言い訳を考えてある。


「魔法だと思っていて、魔法使っちゃダメっていうから、こっそり使ってたの」


僕の言葉に、母は少し考えてから言った。


「そうなの?確かに、それなら私たちがスキルと魔法について、ちゃんと教えてこなかったせいだね。うーん……でも、ユラは賢いし、それくらいわかるんじゃないかしら?」


母は、僕の言い訳を見抜いているようだった。


「それに、魔法だと思っていたのになら、使っちゃダメでしょ。まあでも、どっちにしろ、私たちにも非があるようだし、今回はいいわ。でも、ユラ」


母が僕を真剣な表情で見つめる。


「ん?」


「スキルは人前で使っちゃだめよ。スキルはとっても珍しいものだから。それと、ぬいぐるみの作りすぎには注意しなさい」


「はい」


「それと、三人とも、家中に散らばっているぬいぐるみを、今日中に片付けるように」


母は、そう言って、厳しい顔で僕たちを見つめた。




お説教は、意外な形ですんなり終わった。


だけど、どうやってあの量のぬいレイを片付けるようか。リア姉の部屋に千体ほど置くのはいいとしても、計2万前後のぬいレイを作ったからまだまだいるはずだ。


「とりあえず、回収しようか」


僕は、そう呟くと、まず廊下に向かった。すると、先ほどとは一変して、きれいにぬいレイが消えていた。


「え、私のぬいちゃんがいない……」


リア姉が、悲しそうな顔で呟く。


(多分、勝手にどこかへ隠れたのかな?流石に時間が経ったし。)


僕は、ぬいぐるみの場所を調べる。すると、家の中に五千ほど。そのうち、リア姉の部屋には約五百、そして、他のぬいレイたちは、家の外に出て、ふらふらと探索している感じだ。


片付けせずとも勝手に終了。完璧だ。最後にさっきお説教された部屋にいたぬいレイたちを僕の部屋に移動するように指示を出す。


「片付け終わったよ」


僕がそう言うと、母は「もう?」と驚いた顔をする。


リア姉は、自分の部屋に残ったわずかなぬいレイ(約五百体)に癒しを求め、その中に埋もれる。僕とルルアも、それに続いた。


「楽しかったね、ユラ姉!」


ルルアは、満足そうに僕に話しかける。


「そうだね。」


僕は、ルルアの言葉に頷く。疲れたけれど、楽しかった。



それにしても、ぬいレイたちどこに隠れたんだろう。もともとこの家に1万体ほど隠れてたのに今では増えて2万ほど。隠れるところなんてないでしょ。でも、だいたいは簡単に見つからない。なんか隠れるのがうまくなってる?



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