8話 冒険者サイド リンネ率いるSランク冒険者パーティーの「創剣」
冒険者 紹介 覚える必要なし(リンネだけ覚えているといいかもしれない)
リンネ 「創剣」のリーダー
ハヤト 剣士 戦闘狂
タカ タンク 無口
ユウカ 魔法使い(女) 口調強め
ユウキ 魔法使い(男) 怪しい口癖
サクラ 回復職 いつもはテンション高め
夜の森を進む六人の冒険者たち。
空気は湿っていて、月明かりすら木々に遮られ、彼らの足音だけが静寂を切り裂いていた。
先頭を歩くのは、薄紫の髪を一つに束ねた女性剣士、リンネ。
防具らしいものはほとんど身につけていない。だが、軽装の布服の下には、鍛え抜かれた体と、全身を包むような殺気が潜んでいた。
「……周囲、静かすぎるわね」
リンネの声に、後方を歩く魔法使いの男が頷く。
「魔物の鳴き声すらしない。生態系そのものが変わってる。これが“森の変異”ってやつか……」
彼は指先に小さな光球を浮かべ、闇の奥を照らした。湿った土の匂いが立ちのぼる。
「なあリンネ!」
前を行く剣士のハヤトが振り返り、笑みを浮かべた。
「今回は手ごたえありそうだな! Aランクの連中を何組も潰した盗賊団だろ? “ネザロスとかいう奴が率いているんだっけ? 久々に本気出せる!」
男剣士が、興奮した声で話しかける。彼は、今にも駆け出しそうなほど、わくわくしているようだ。
「……ハヤト、少しは落ち着きなさい。それに盗賊だけではないわ。この三年前から起きている、森の変異を忘れたわけじゃないでしょう。遊び気分で挑むと、命を落とすわよ」
「へっ、そりゃ上等だ」
ハヤトは肩をすくめる。
「まったく……。タカ、森の変異についてはどう思う?」
リーダーのリンネは、無口なタンク役の男に尋ねる。タカは、ただ黙って首を振るだけだ。無骨な鎧の表面には、いくつもの傷跡が刻まれている。
彼はめったに喋らない。だが、その沈黙は信頼の証のようでもあった。
「リーダー、あの森の変異については、盗賊討伐が終わったら、ぜひ調査してみませんか? 興味があります」
男の魔法使いのユウキが、キラキラとしたそれでいて怪しい目でリンネに問いかける。
「そうね……。でも、今は目の前のことに集中して。今回の相手は、複数のAランク冒険者パーティーを壊滅させたほどの相手よ。油断は禁物だわ」
さらに女性の魔法使いが、冷静に男の魔法使いをたしなめる。
「そうよ、ユウキ。それにハヤトも。今回は油断できる相手じゃないわ。私たちはリーダーの足を引っ張らないようにしないと」
「……フッ、わかってる、ユウカよ」
男魔法使いのユウキはそう答える。
そのとき、パーティーの最後尾を歩いていた回復職の女性が、急に立ち止まった。
「どうしたの、サクラ?」
リーダーが振り返って尋ねる。
「……この森に、何か、異常な気配を感じるんです。それに、すごく神聖な……でも、どこか禍々しい、複雑な、いやな気配をわずかながら感じるんです……」
サクラの顔は青ざめていた。いつもは一番はしゃいでいる彼女の、その弱気な姿に、皆の顔に緊張が走った。
「サクラ、大丈夫?」
「……うん。大丈夫。でも、なんだか、嫌な予感がするの……」
そう呟くサクラの瞳は、まるで何かに怯えているかのようだった。
女魔法使いのユウカはポツリと呟く。
「確かにこの森は普通とは違うわね。それにこんな伝説もあったわよね。森の中央部に立ち入り帰ってきた者はいない魔境。まあ、私たちは今回、森の中央部に行かないし大丈夫よね。」
そして、森の奥へと足を進めること数分。
「そろそろ到着ね。見えてきたわ」
女魔法使いのユウカが静かに呟いた。目の前には、巨大な洞窟。そして、その入り口には、想像を絶する数の盗賊たちがたむろしていた。
「すごい数……。さすが、国を脅かすといわれる盗賊団だけあるわね」
女魔法使いの言葉に、冒険者たちも警戒の色を強める。
「それに、ついさっき商人らしき誰かが襲われたような痕跡の跡がある。馬車が酷い有様だ。」
タンクのタカは分析する。
「おいおい。こんなにいるなんて聞いてないぞ。なんて規模だ。最高だ、キリごたえがありそうだ!」
男の剣士ハヤトが、にやにやと笑う。彼は、目の前の敵の数に、むしろ興奮しているようだ。
「遊びに来たんじゃないんだよ、ハヤト。しかも今日の依頼は久々にSランクなんだから、油断しないでよね」
女の魔法使いが、眉をひそめる。
「まったくその通りだ」
タンク役の男が、重々しく頷いた。
リーダーのリンネは「始めて」とあいずをだす。
いつも通り堂々と正面から突撃する。
まずは、「フフ。開幕の一撃に相応しいものを。サンダープリズン」と笑いながら魔法使い男が牽制の魔法の一撃。雑魚盗賊はそれで数十人倒れる。
下っ端の盗賊たちが、「敵だ!敵襲⁈」と騒ぎ始める。そして、洞窟から蟻のように盗賊が出てくる。
「おい、あれって……」
「創剣のリンネ率いるSランクパーティーじゃないか……」
「さすがにまずいんじゃ……どうしてバレたんだ……」
下っ端の盗賊たちが、ざわめき始める。洞窟の奥で、鉄を引きずるような音が響いた。
その瞬間、場の空気が変わった。ざわついていた盗賊たちの喉が、一斉に凍りつく。湿った風が流れ、火の粉が小さく揺らぐ。
そして、暗闇の中から一人の男が現れた。
「騒がしいな……まったく、寝てる時くらい静かにしてくれ。」
薄闇を割って歩み出たその男――ネザロス。
その足取りはゆっくりだが、一歩ごとに地面が沈む。
纏う気配は、まるで獣。圧の層が空気を歪ませ、草葉さえ音を立てずに震えていた。
体は無駄なく締まっており、鍛え上げられた筋肉が光を弾く。腰には、黒鉄と紅玉で装飾された異形の剣。刃渡りは長く、まるで“喰らう”ような気配を放っている。
「……あれが、ネザロス。」
リンネが低く呟いた。声は静かだったが、背筋に冷たい電流が走る。
冒険者たちの中で誰もが感じた――この男は、ただの盗賊ではない。
「へぇ……ずいぶんと立派な客じゃねぇか。Sランク冒険者、創剣のリンネ、か。」
ネザロスが口角を上げた瞬間、空気が爆ぜるように緊張した。
無数の盗賊たちが、一斉に武器を構える。
洞窟の外縁まで広がる光景は、まるで戦場の地獄絵図のようだ。
「あら?私のことを知ってくれているのね?
それじゃあ、自己紹介は手短に。私は「創剣」のリンネ。あなたたちがこの地域を荒らしている張本人、でいいのかしら?
今なら命だけは助けてあげる。降伏するなら。」
声は冷たく研ぎ澄まされ、まるで刃。
だがネザロスは肩をすくめ、あくびを噛み殺すように笑った。
「降伏? 寝ぼけてるのか?
俺たちは“狩る側”だ。……この森で獲物になるのは、いつだってお前らの方だ。」
「そう。戦いは避けられないようね。なら、戦う前に質問しても?今まであなたたちに挑んだ冒険者パーティーが複数いて、誰も帰ってこないんだけど、どこにいるのかしら?」
リンネは、親玉をじっと見つめ、問いかける。親玉は、笑いながら剣を抜き、答えた。
「さあな。自分の目で確かめてみるといい。できればの話だがな。あ、そうだ。こちらも冥土のみやげに名乗っておこう。知っているだろうが、ネザロスだ。よろしくな!!」
そう言うと同時に、彼は勢いよくリンネに向かって突っ込む。
リンネは素早く剣を抜き迎え撃つ。
激突する剣と剣。その言葉を合図に、戦闘の火ぶたが切って落とされた。
リンネの瞳が細く光った。
剣を抜く音が、夜の森に響き渡る――チィン、と。
冷たい音が、戦の幕を告げた。
ネザロスの剣が閃いた。
重い風圧。刃と刃がぶつかる音は、まるで雷鳴。
二人の間の地面が裂け、衝撃波が周囲の盗賊を吹き飛ばす。
「くっ……なんて威力……!」
ハヤトが呻く。だが、リンネは怯まない。
彼女の足元の地面を踏みしめるたび、草が焼け、光の粒が舞う。
「創剣術――光刃連閃!」
剣から放たれた光が連続して走る。
ネザロスはそれを見切り、最小限の動きで全てを受け流した。
金属音が連続し、火花が雨のように散る。
「いい剣筋だ……だが、軽い。」
ネザロスが低く呟くと、反撃の一閃。
刃が空気を切り裂き、リンネの頬を掠めた。
血の香りがわずかに漂う。だが彼女の表情は変わらない。
(――重い。剣が、まるで生き物のように絡みついてくる……!)
それでも、リンネは一歩も退かない。
彼女の瞳には、炎のような覚悟が宿っていた。
「ここで終わらせる……。これ以上、犠牲は出さない!」
再び交差する剣。
雷光のような斬撃が夜を裂く。
二人の戦いの衝撃波が、戦場全体に波及した。
その間にも、冒険者たちはそれぞれの戦場で必死に戦っていた。
「フンッ! 邪魔だッ!」
ハヤトの剣が弧を描き、三人の盗賊を同時に切り伏せる。
その勢いのまま、背後の敵を回し蹴りで吹き飛ばす。
だが、倒しても倒しても敵は湧いてくる。
「チッ……終わりがねぇな!」
「タカ、前を固めて! 後方は私たちが援護する!」
ユウカの声が響く。
魔力を練り上げ、詠唱を短く切る。
「岩鎖!」
氷の鎖が地面から伸び、敵の足を絡め取る。
同時にユウキが魔法陣を展開し、雷の矢を無数に放つ。
だが、幹部クラスの盗賊たちは、まるでそれを見切るように笑いながらかわした。
「くくっ……効かねぇな。俺たちはこの森の“祝福”を受けてるんだよ。」
幹部の一人がそう言って両手を広げた瞬間――
空気が冷たくなった。
ユウキの体から、光の粒が抜け出していく。
「なっ……魔力が、抜けていく……!」
「魔力吸収……!? そんな馬鹿な!」
サクラが震える声で叫ぶ。
彼女の回復魔法も、光が薄れ、指先から霧のように消えていく。
(一体どうやってこんなことを⁉︎)
彼女は、原因を探るためにわざと魔力を流す。
(!?見つけた。魔道具を使っている。あいつだ。)
サクラ「みんな! 気をつけて! この盗賊団、ただの盗賊じゃないわ。彼ら、私たちの魔力を吸い取ってる……!裏に隠れているオーブ持ちのやつを狙って」
サクラの叫びに、冒険者たちは、魔力を吸収してくる盗賊に狙いを定める。
そして数分経った今。激戦は泥沼化していた。
だが、冒険者たちは、ついに反撃の糸口を掴んだ。ユウキとユウカが、自らの魔力を吸収する魔法を使う幹部を、連携して魔法で包囲する。
「このっ! 舐めるなよ、冒険者どもが!」
幹部は怒号を上げ、二人の魔法を吸収しようと試みる。だが、冒険者の魔力量は、その幹部の予想を大きく上回っていた。
「くっ……! なぜだ……!」
幹部の魔力吸収魔法は、飽和状態に達し、その肉体を内側から破壊し始める。そして、二人の魔法が、幹部の体を打ち砕いた。
「よし! やったぞ!」
ハヤトが歓喜の声を上げる。
しかし、戦いはまだまだ終わらない。
幹部を一人倒したとはいえ、盗賊たちの数は、依然として圧倒的だ。それに、残りの幹部たちも、それぞれ強力な能力を持っている。
冒険者たちは、疲労の色を濃くしながらも、戦い続ける。勝敗は、まだまだ見えない。
盗賊たち
総勢100名程度
頭 ネザロス
幹部5人 魔力を吸収する魔道具を使う男(倒された)、 暗器を使う女、剣士の男、魔術師の男、短剣使いの男




