表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

『煙の向こう側』【6】再び大輔戻れるか

本章では、ついにアニーが大輔と共に「煙の向こう側」を越える場面が描かれます。異世界と現実をつなぐ境界が開かれ、物語は新たな段階へと踏み出します。友情と信頼、そして別れの不安――二人の心の揺らぎをご堪能ください。

【6】再び大輔戻れるか

空中浮遊車が湖畑に降り立つと、待っていたアニーが駆け寄ってきた。

「アニー、ただいま」

「お帰りなさい。思ったより早かったですね」

浮遊車は再び空へ舞い上がり、静かな湖畔に風だけを残した。

大輔が大臣役宅に戻ると、間もなく大臣も帰ってきた。

「少し話せますか」

「黄金国の視察は終わったか」

「はい。空中浮遊車はとても便利でした」

「だが被害は、我が国より深刻なようだな」

「その通りです。我が国を中心に同盟を結ぶことが望ましいでしょう」

「しかし種子はまだ国内向けに増産中で、他国に渡す時期ではない」

「……博士、別途用意することは可能ですか」

「難しいですが、工夫を考えます」

「よし。城で王に報告し、指示を仰ぎなさい」

大輔は謁見室に入り、王の前に進み出た。

「博士、ご苦労であった。まず我が国の報告を聞こう」

「湖畑は豊かに実り、ブランド品として出荷が可能です」

「それは喜ばしい」

「その他の作物も順調です」

「では、黄金国の状況は」

大輔は姿勢を正し、慎重に言葉を選んだ。

「非常に深刻です。畑は荒れ、種子もほとんど残っていません」

「……供給はできぬのか」

「今は自国分を確保するのが精一杯です」

「博士、助けてやる道はないのか」

「……すぐにとは申し上げられません。ただ、工夫の余地は探ってみます」

城を後にした大輔をアニーが迎えた。

「王様は何と?」

「種子を提供せよとのお考えだ。だが方法は……」

「もう一度、帰って持ってくるしかないのですね」

アニーの声には不安が滲んでいた。

「アニー、僕は再び戻る」

湖畔に出て、雑草を集める。大輔は作業小屋からバケツにカンゾを入れ、棒を手に戻った。

雑草に火をつけると、アニーが涙声で縋り付いた。

「私も連れて行ってください!」

「危険だ」

「それでも構いません。……大輔が帰ってこない気がするのです」

アニーの必死の訴えに、大輔はしばし迷ったが、やがて彼女を抱きかかえた。

「わかった。アニー、しっかり掴まって」

カンゾを火にくべると、濃い白い煙が空へ立ち昇った。

「……もう少しだ」

さらに加えると、景色が揺らぎ、白い霧が一面に立ち込める。

めまいとともに身体が浮く感覚――そして霧が晴れた瞬間、二人は畑のあぜ道に立っていた。

「戻れた……!」

雑草はまだくすぶっており、大輔は棒で火を消した。

アニーの手を取り納屋に入ると、リックを抱え出した。

「お母さん、三つ目の雑草は燃やしましたが、忘れ物を買いに行きます」

「気をつけてね」

母の声を背に、二人は車で種子屋へ向かった。

「アニー、必要なものをしっかり選んでくれ」

「わかりました」

種子屋で大輔は「買った種を水に落とした」と説明してアニーと共に必要な種を急ぎ選び、リックに詰めた。

「アニーこの世界に来たのだから少しみせてあげるよ」

「嬉しい」

大輔は近くのスーパーマーケットに入り飲み物を買い、道の駅に入り見物した。

新幹線も通過した、アニーは目を見張る。

小物店ではアニーに髪飾りを買ってプレゼントした。

急ぎ 納屋に戻り、再びバケツと棒を手にする。

「お母さん、ただいま。これから四つ目を燃やしてきます」

「お願いします」

あぜ道で雑草に火を点け、カンゾをくべると炎が大きく燃え上がった。二人は胸いっぱいに白煙を吸い込む。

霧が立ち込め、視界が揺らぎ、身体が遠くへ引き寄せられるように消えていく。

やがて霧が晴れると、二人は湖畑の片隅に立っていた。燃え尽きた雑草から、かすかな煙が上がっている。

「ありがとう、大輔。あなたの世界は素晴らしい」

「行って良かった」と喜んだ。

「アニー……今回は無事に帰れたけれど、もう試みるべきではない」

それでもアニーは笑みを浮かべ、黄金国へと共に向かう決意を固めていた。


大輔は王の信頼を得て、黄金国を助ける役目を背負うことになりました。そしてアニーは、危険を顧みず彼に寄り添う覚悟を示します。

二人が煙を越えて行き来する展開は、これからの物語を大きく動かす鍵となります。次章では、黄金国での新たな試練と、アニーの存在がどのように国を変えていくのかに注目してください。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ