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短編小説

忘れ去られた者たちの嘆き

作者: 歌池 聡


※しいなここみ様主催『麺類短編料理企画』参加の一品です。

※企画参加料理をすべて賞味したわけではないので、ここで挙げた麺料理がどなたかの作品に取り上げられている可能性もあります。



 ここは麺類たちの控室。


 最近、『小説家になろう!』界隈では『麺類短編料理企画』なるものが開催されている。各種の麺類たちは、作家たちに選ばれるのを心待ちにしていた。


 早々に取り上げられ、ドヤ顔で鼻息荒く表舞台に出ていくもの。

 少し恥ずかしそうに、やや遠慮の色を見せながら出ていくもの──。


 そして企画がまもなく終わろうかという今。まだお呼びのかからない麺類たちは、悔しさやさびしさをにじませながら、それぞれの心情を吐露し合っていた。






「やっぱり、ローカルフードは厳しい(なも)。わしらは中京地区限定なので駄目だわ(だでかんわ)


 そうぼやいたのは『きしめん』。その隣で赤茶色の熱い悔し涙をこぼしているのは同郷の『味噌煮込みうどん』だ。


 しかし、ローカルフードが駄目だというわけではない。現に『沖縄そば』はしっかり取り上げられているのだ。


あんた(わい)たちはまだマシや。自分は全国に店を開いているのに(店ば開いとーに)全く(いっちょん)相手にされない(うてあわれなか)ぞ!」


 専門店の全国チェーンを持ちながら出番のなかった『長崎ちゃんぽん』の荒み具合はひどかった。


「ああ、『長崎ちゃんぽん』の悔しさはよーくわかるぜ」


 そうなぐさめたのは『焼きうどん』。


「『焼きそば』の野郎はあんなにお呼びがかかるのに、何で俺には出番がねぇんだ。『あんかけ固やきそば』なんていう亜流のやつまで出番があったっていうのによ。これじゃ俺の立つ瀬がねぇっ!」


「まあ、そうやって人を見下してるからじゃないですかね。あなただって、しょせんは『焼きそば』の亜流じゃないですか」


 醒めた目でツッコんだのは『スパゲッティ・ナポリタン』だ。


「皆さん、日頃私のことを何て言ってます? 日本の皆さんからは『イタリアかぶれ』とからかわれ、イタリアのパスタ料理たちからは『日本生まれのまがい物』と馬鹿にされ……。

 私だってね、レシピサイトを見れば『みんな大好きナポリタン』とか書いてあるんですよ!

 なのに子どもの食べるものみたいな扱いで、『なろう』の書き手たちは見向きもしないんだ……」


 皆、それぞれに自分の境遇を嘆き、ただひたすら時が過ぎるのを待っていたのだった。






 だがその時、控室の片隅でひっそりと座っていた()()()()が、立ち上がって悲壮な声をあげた。


「皆さんはまだいいですよ! 最後の最後で呼ばれる可能性もあるじゃないですか!

 その点、僕なんて可能性ゼロですよ!

 そもそも名前すらない!

 たぶん、ひとつの料理としても認識されてない!

 どうせ、どうせ僕なんて、誰からも必要とされてないんだぁぁっ!」


 そう言って床に突っ伏して号泣してしまった彼を、横に座った麺料理たちが優しくなぐさめるのだった。


「そんなことないよ、君は立派に役に立ってるじゃないか」

「そうだよ、元気出しな、『弁当の油ものの下に敷かれた味付けのないスパゲッティ』君」


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― 新着の感想 ―
彼、確かにいますね……!笑 最初に出逢った時「え、味しない?」とその存在に戸惑った記憶があります。 メインのハンバーグソースの味をちょっとお裾分けしてもらっているような……。 麺類好きとしては沢山の麺…
知ってる!『ガロニ』! この間ネットで見た! お弁当箱を溶かさないために油物の下に敷き詰められるんですよね。 上に乗せるパセリみたいな気の毒なヤツ。 。゜(゜´ω`゜)゜。
弁当の底に敷かれているスパゲティには、色々な役割があるみたいですね。 おかずの油を吸って弁当が油まみれになるのを防いだり、熱いおかずの下に敷かれる事で容器が溶けるのを防いだりと、緩衝材的な役割で頑張っ…
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