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LRRP(ラープ)

俺達特務隊が試験艦キャスパリーグから長距離偵察に出るようになってから半月ほどが経過した。俺達が火星各所で見る戦闘は地球連邦軍火星地上軍が制空権を握るアムロイ軍からの航空攻撃により撃破され、徐々に地下司令部のある赤道付近のタルシス三山に追い詰めらて行く様だった。


そして今、一隻の(ふね)がその最期を迎えようとしていた。火星地上軍に所属する陸上巡洋艦ナッシュビルだ。


全長200m、最大幅32m、低出力反重力エンジンにより火星の地上15mまで浮上可能(地球の重力の1/4である火星の重力下ではこれで十分だそう)。


前甲板には巡航ミサイル発射装置を備え、同時に10発の発射が可能。その後方には口径46センチ3連装の主砲が前後に2基並び、艦の中央には艦橋が聳え立ち、その両舷側に多数の対空火器が上空の敵機にその筒先を向けている。


後甲板には航空機格納庫と飛行甲板がありVTOLの運用も可能だ。


単艦で火星の何処へでも行け(オリンポス山のような極端な高地は除く)、巡航ミサイルは敵が火星のどこに潜もうとも狙い違わず、対空ミサイルは衛星軌道上の敵も撃墜。また、時代遅れの最たる物に思える巨大な主砲は遠距離からのアウトレンジ射撃も稜線射撃も出来、このナッシュビルと姉妹艦であるサクラメントとメンフィスの3隻は火星地上の守護者と言って良かった。


だけど、既にその守護者達は火星上空を我が物顔で飛び交う侵略者に1隻、また1隻と撃破されていた。そして最後に残ったナッシュビルがアムロイ軍の大型空母相手に死闘を繰り広げているのだ。


上空に滞空するアムロイ軍の大型空母から出撃する攻撃機群はナッシュビルに殺到する。ナッシュビルの対空パルスレーザーが弾幕を張り、対空ミサイルが逸った敵機を撃ち落とすも、弾幕を抜けたミサイルが次々と命中しナッシュビルの防御力を削ぐ。


やがてナッシュビルは満身創痍となりながらも敵の攻撃を巧みな操艦で振り切ると、敵の大型空母に最接近させ、その主砲を上空に滞空する大型空母に向けて3連射した。


ナッシュビルから放たれた巨弾は上空の敵大型空母目掛けて飛ぶも、大型空母に急上昇されて寸前まで空母が滞空していた空を彼方へ抜けて行った。


おそらく、ナッシュビルが火星地上軍司令部を守る最後の戦力だったのだろう。ナッシュビルはその身を犠牲にして敵大型空母と差し違えようとしていたのだ。


やがてアムロイ軍の攻撃機がナッシュビルに殺到すると、対空防御力が失われた艦体に次々とミサイルが命中。そして動力部に致命的な直撃があったのだろう、ナッシュビルはその動きを止め、直後に大爆発を起こし、巨大なキノコ雲を残して轟沈した。


「…」


陸上巡洋艦ナッシュビルの激闘とその壮絶な最期に偵察に出て一部始終を観ていた俺達は言葉も無かった。そして壮絶な最期を遂げたナッシュビルの乗組員達に哀悼の意を込めて敬礼すると、キャスパリーグに戻るべく俺達はこの戦場を後にした。




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