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第8話 あいつ

夏だからって布団を掛けずに眠ると風邪は引きますね。

私は風邪を引いてしまいました。

皆様もお気を付けください。

「ったく…飛島ぁ〜」

俺は頭を手で覆いながら、隣を歩く飛島に話しかける。「すっ…すいません……。」

飛島の返事はどこかぎこちない。

そして、俺達は互いに頬が真っ赤だったりする。

ハァ…白鳳と偵が居なかったら最近付き合い始めた恋人同士だと思われても…

てかこんな事考えている自分に嫌気が指してくる。

(あの…偵さん、あの二人は一体どんな関係なんですか?)


(飛島の片思いだよ…

蒼井さんはまったく気付いてないらしいけど)


そんなひそひそ話をする華蓮と偵の頬を暑さを含んだ風が吹き抜けて行く。

思えばもう6月の終わり…。

夏を感じ始める時期であるー。



「蒼井さん、そう言えばこの季節に学ランなんて着ていて暑くないんですか?」

ふと、華蓮は気に掛かったことを聞く。

「いや、ダークピアスは通気性良いから暑くないよ。

それに生血見の頭は日常でもダークピアスを着用するのが決まりなんだ。

命を狙われたりするからな」

蒼井はダークピアスを着ている理由と質問の答えとを一変に説明する。

「洗濯は…」

華蓮の口から出たのは当然の質問だ。

一年中着っぱなしの服ともあれば洗濯をいつするのか疑問になる。

「いや…いつもちゃんと素手で洗ってるよ?

昔みたいにオケで」

何故オケなのかはあえて尋ねずに華蓮は

「そうだったんですか!」

と適当に相づちを打つーー。


「ママー!アイス買って!!」


「はいはい…」

そんな会話が聞こえてきたので俺は思わず振り返る。

微笑ましい光景だ。母親に甘える子供…。

あの位の時に俺はすでに母親を殺してしまっていたんだったかな?


「どうしたんですか?蒼井さん」


立ち直ったのか飛島が俺に話かけて来る。

その瞬間に俺の頭の中に先程の出来事がフラッシュ映像のごとく思い浮かぶ。

そして頭が真っ白に……。

「ひったくりー!!」

こう言ってしまうと難だが、ひったくりナイス!

街中ナイス!!

お陰で数分だが現実から離れられる。

数分でもあの出来事を忘れたい。

俺は身構える。

ん?何だ、ひったくりが懐に手を…ナイフか?

拳銃!?

新鮮だなぁ。

あの出来事を忘れられるだけでなく大好きな『新鮮』に出会えて嬉しい限りだ。

バンッ!バンッ!

数発の発砲音。

ひったくりは馬鹿なのか?

防弾だと知らなかったとは言え、学ラン着てる奴の心臓狙うか?

致命傷は期待出来ないだろ?

と言うか、俺の場合は傷一つ付かないだろ?

ひったくりが銃弾を弾いた俺を見て驚いてはいるが、走る事を止める事は出来ずにこちらに向かってくる。

バンッ!

再び発砲音…。

しかし銃弾はダークピアスに弾かれ飛島の方を向くー。


が、さっきの事を一秒でも長く忘れたいので無視することにしよう。

と…ひったくりがついには俺の顔面を拳銃で殴りつけてくる。

少しばかり速いな。

とっさに後退してかわし、ひったくりの手首目掛けて蹴り上げるが、かわされる。

「死ねや!」

バンッ!

ちっ…頭を狙って来やがった。

やべぇ、黒桜を抜くか…。

余り街中で日本刀は振り回したくなかったんだが…。

「妖刀黒桜!!」

掛け声と共に俺の指輪、ヘルリングが日本刀の形態を取り手の中に現れる。そして研ぎ澄まされた感覚を使い銃弾の動きを察知、これを防ぐと

妖刀黒桜参刀身春風(ようとうくろざくらさんとうしんはるかぜ)

俺は黒桜内にあるスラントのストックを解放し、風のごとく速く走りひったくりに詰め寄りー。

「妖刀黒桜弐刀身妖練桜」

ひったくりの心臓部を軽く切り裂き、ショックを与え気絶させる。


それから間もなくして来た警察にひったくりを突き出し俺の現実逃避?は終わった。




「さてと!着いた!!」

俺達は廃墟のビルの手前に立っている。

ここが『あいつ』のアジトだ。

痛みきった扉を開け中に入ると…。

飛島や偵のように青い学ランに身を包んだ元不良達がダーツやビリヤードなどで楽しんでいるが、俺を見るなり軽く頭を下げる。

俺は一人一人に軽く挨拶をしながらビルの最上階ー『あいつ』の部屋を目指す。

久しぶりだ、緊張する…。

なんせ、2年ぶりだからな…。

「邪魔するぞ?」

そう言いゆっくりと開いた扉の先に居たのは

金髪で右目には真っ黒の眼帯をつけており、ダークピアスとは似ても似つかない軽装な青い学ランを羽織った、茶色いズボンの男であった。

窓からの光以外、明かりが全くなく、ただ真っ赤な絨毯と壁紙のある部屋の中心に置かれたソファーに座り、コジャレたワインの置いてあるテーブルに脚を乗せている男ー。

「久しぶりだなぁ!隼!!」

俺は『あいつ』ーー隼に話し掛ける。

「……久しぶりだな、煌龍(こうりゅう)

奴も言葉を返す、にしても

「その名前はやめてくれよ

俺もお前のこと灰龍(かいりゅう)って呼ぶぜ?」

たく、昔の名前で呼ぶなっての?

「すまない、しかしあの時の事は忘れずにこの胸に刻んでおきたい……」

「惨い戦いだったからな…」

奴の気持ちが痛いほど分かる俺はただただ共感する。

先程までの怒りはもう、ない。

「煌龍、灰龍!?」

白鳳がこの名を知っているがごとく聞き返す。

白鳳、入るタイミングが少し遅いぞ?

「その名を知っているのか?」

とりあえず聞いておこう。

「はい、確か…四龍(しりゅう)の内の二人…」

四龍とは最強の元不良四人を纏めて表していた言語である。

そして、その中には今俺達が呼び合った煌龍、灰龍の名もある。

しかし彼らは2年前『第3次世界大戦』を避けるために、その前兆『世界不良大戦』に参加し死んだ事になっている。

言わば【英雄だった人間達】だった…。

「ああ、俺達が四龍メンバー煌龍と」

「灰龍だ…」

ここは長年のコンビネーションで息ぴったり、2年のブランクなんて関係ない。

そして、俺達は本物の四龍である。

四龍は世界不良大戦に勝利した後に国が『人間兵器』として、利用されない為に死んだ事にしていたわけだー。

つまり国のコンピューターをハッキングして死亡者名簿を見れば、俺【花咲蒼井】と奴【茶翼 (ちゃよくはやぶさ)】の名前があるわけだ。

ううぅ…自分が死者だと思うと複雑な気分だ…。

「そんな、じゃあ残りの二人も…」

「生きてるよ!」

あっさり返す。

「さてと…隼!!」

そして本題に入る。

「お前の力で白鳳と昨日襲って来た、グリエスと言う男について占って欲しい。」

白鳳はグリエスの事は何も知らないと言っていた。

しかし、何か知らないところで繋がりがあるかも知れない。

それが俺の考えだ…。

「構わない…」

隼の短い返事には俺の気持ちが分かったという意味が込められていた。

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