第53話 抱き締めて…キスして
いけない、無理矢理なラブラブがより一層無理矢理に…
「………」
「………」
いつもと同じ学ランとセーラー服に身を包み、道を歩く花咲蒼井と白鳳華蓮は互いに目を合わせることも出来ない。
理由は簡単、恥ずかしいからだ。
ここに大牙でも居れば雰囲気も変わっただろうが、今この場所に大牙は居ない。
「………」
互いに言葉を探すが見付からない。
「あ、あの…」
そんな沈黙が暫く続いて、華蓮が口に出す言葉は…
「手…くらい、繋ぎません?」
それだった。
しかし、手を差し伸べられた蒼井はいきなりのことに
「うわっ!」
驚愕してしまう。
そして暫く考えてから
「まぁ、それくらいなら…」OKの返事を出すわけだが
(トクン…トクン)
2人の手が後10センチメートル
(トクントクントクン)
後5センチメートル
(トクントクントクントクントクントクントクン)
後1センチメートル
「「っ~~~~~~」」
そして2人は手を繋ぐわけだが、また沈黙してしまう。
『前を見てみろよ、腕を組んでるカップルが歩いてんだろ見習えよ!』そんなワケの分からない説教をしたくなるが、2人が腕を組んでたら組んでいたで別の説教がしたくなるのはこの際どうでも良い話。
「ちょっと待ちなさいよ!」
そんな2人に声を掛ける女子が3人、先のような説教でも垂れるのかと周りのギャラリーも計5人をガン見しているが、3人は口々に
「蒼井さん~デートしましょうよ~?」
「おいしいお店知ってるんですぅ~一緒に行きましょう?」
「そんな娘ほっといて~」
と、蒼井を誘惑し始める。
困ったことに現在時刻は10時。蒼井達は『あんな事』があったため特別休日だが、彼女らは違う。
蒼井にも学校側にも困った人間なのだ。
しかも、相手が女子ならば蒼井も上手くあしらえない。
「俺の女は1人だ精神」はあるわけなのだが、決してその女以外を女と認識しないわけでもなく、腕を組まされたりやられたい放題。華蓮もそれは面白くないが、目には眼帯という自分の格好よりかミニスカートでポニーテールの彼女達の方が可愛いんだろうなと何も出来ずにいた。
しかし、それも最後の「あんな娘ほっといて~」が終わりの合図となる。
それを聞いた蒼井は心底憤怒したのだ。
言った女の肩を少し強めに掴むと
「退け…」
静かに殺意を込めて言葉を放つ。
そして、そんな蒼井に心底恐怖する女達。
簡単に道を開けると蒼井は華蓮の手を引き、そこを歩きさってしまった。
余談になるのだが、この後この3人は補導されました。
ペロペロキャンデーを買って買える途中の署長に。
暫く歩くこと15分。
橋の下を流れる川の土手。 丁度橋の下にて蒼井と華蓮は向かい合っていたわけだが…
「蒼井…さん」
今度は華蓮が自分に自信をなくし始める。
目に涙を溜めて、蒼井を見つめる。
「別に問題ないよ…俺が好きなのは白鳳だけだから」
「だったら!」
「だったらなんで名前を呼んでくれないんですか!!
やっぱり私より彼女達の方が」そんな気持ちを蒼井にぶつけようとして口を塞ぐ。
今辛いのは目の前の男。
呪いにやられて尚、自分を優しく愛してくれている。
だから、口を塞いだ。
蒼井は全てを簡単に悟ったのか、華蓮を抱き締め… そっとキスをした。
「ん……ぷはぁ」
そして
「改めて宜しく、華蓮」
頬を赤らめ、笑顔を向けた。
やっぱ色恋沙汰を書くのは無理ですね。
取り敢えず頑張りはしますが、どうか多少の失敗は生暖かい目で 蒼井「読者様に甘えるな!!」
日々精進します。