第31話 目と鳥と剣
作者「取り敢えず、くうやくそうのそうが自分の携帯じゃあ漢字で出て来ないようです」
蒼井「それで隼が初めて影燕をぶっ放した時も誤字になったのか?」
作者「あれは真面目な誤字!」
蒼井「……」
作者「ということで、くうやくそうをこの小説では空薬倉と書きます。」
蒼井「ついでに少しオリジナルの物にするので詳細は下を見てください。」
空薬倉
隼の影燕など、拳銃型神のご加護を使う際に超能力でつくられた弾丸を包む物。
これ自体も超能力で構成されているため、隼がリロードの際に地面に落とす空薬倉もすぐに空気化する、そしてその空気は極めてクリーンな酸素。
環境問題に適応している。
作者「誤字を無理矢理読ませるなどの無茶苦茶を行ってしまい、大変申し訳ありません」
「…二重の瞳」
隼は自らの得意超能力ーー『透視』にその応用、『狩る者の目』を持っている。
狩る者の目はその名の通り、超能力者と非超能力を一目で見分けられる。
変わりに、本来の透視能力は失われ建物内の人間を識別するなどの能力は存在しない。
「…セレクトアイ、狩る者の目、世界空気化の目」
そして、その能力は別々に使えるというわけでもない。
隼の特異体質ーー『セカンドバード』により、二つまでならその透視同士を混ぜた二重の瞳の発動が可能である。今発動させたのは、狩る者の目と世界空気化の目という全てを透視する目である。
「…見つけた」
完全なる捜査型の目で見つけられないものはない。
すぐに見付ける。
その場所は建設が途中中断された大型の工場だった。
今すぐに、突入しようとした隼だったが
「…っ!!」
両目から血を流す。
二重の瞳はそれだけ反動も大きいのだ。
「…二重の瞳解除」
二重の瞳を解除すると、漸く血は止まるが、目には激痛が走りつづける。
だが、それを気にしている時間さえもない。
隼は工場へと突撃する。
自身の信頼できる武器、二丁拳銃影燕を手に。
そして、同時刻に花咲家に来客が二人。
独りは金色で短髪の髪。
黒い学ランはボタン全開の、腰に刀を差した男。
もう一人は髪型がワカメのようになっている黒髪で、スーツをやや崩して着ている。
ワイン瓶を計2本、左手の人差し指と中指の間、中指と薬指の間で挟んで持っている中年の男。
「蒼井くんいないね~~」
中年の男は『遊び人』という言葉が似合うような人間が出す声で、男に問い掛ける。
「ふむ…わざわざ会いに来ればこれか」
「ま、蒼井くんも用事があるんでしょうに」
「とはいえ…」
「それに、無断で来たの俺達なんだしねぇ」
男はまるで、【来てやった】かのような物言いだが、中年の男がそれを否定し、自分達は【勝手に来ただけ】という事実を口にする。
「それもそうか…」
男は納得したように頷くとそのままどこかに歩き出す。
「何処行くんだい?」
中年の男は大して気にもしないように行き先だけを聞く。
「素振りしてくる」
簡潔に答え、男は消えた。
「あ~…俺は暇になるわけねぇ」
中年の男は花咲家の前で座り込む。
「…っ!!」
影燕を1発発射する。
巨大な弾丸が向かう先は突進してくる巨大な赤色の手。
手は一度怯んだかと思うと、すぐに隼目掛けて突進を再会する。
すぐに影燕を前後に大きく降り、空薬倉を排出させると、ジャンプ。
赤色の手は先程まで隼のいた地面に向かい突進、壁にクレーターを作る。
「…破壊力も凄まじいな」
隼のその言葉からは、戦況の厳しさが分かる。
隼が何故、工場内でこのような怪物と戦っているのかは、工場に侵入したすぐの出来事による。
プログラムを使っていた男だが、queenの『白孔雀』によりプログラムが破壊よりも酷い状態ーー『バグ』に陥ったため、使用者自体にもバグが伝わってしまったのだ。
従来のプログラムには無い事故、それは使用者に被害が及ぶということ。
そして、それが生半可なことではないこと。
「…影燕、Jackshot」
クレーターを作り、またも此方に突撃体制を取っている赤色の手に隼が影燕の銃口を向ける。
収束されていく、光の粒子が作り上げるのは今までの巨大な弾丸ではない。
神々しい輝きを放つ、巨大な大剣の姿。
ヒュン!!
弓矢が飛ぶそれよりも鋭い音と共に、発射される『Jackshot』。
それは赤色の手に刺さると同時に赤色の部分を更に赤く染めて行く。
最後には血の紅と化す。
「…割れろ!!」
隼が小さく叫ぶと、剣に刺された紅い手は粉々に砕けてしまう。
「ううぅぅぅううううぅぅう…」
その直後にうめき声と共に姿を表したのは赤色の物体。
恐らく、元はプログラムを扱っていた人間なのだろうが今は面影すらない。
「…せめて、自我があるうちに」
うめき声をあげるということは、まだ少し自我があるのだろう。
そう理解した隼は自我のあるうちに敵を討とうと、再びJackshotのチャージを開始する。
「自我があるわけないだろう?」
チャージが40%は完了した頃、赤色の元人間から放たれた、まさかの人語。
それと同時に赤色の体は真っ二つに割れる。
蝉が成虫になるときのように赤色の体から出てきたのは、普通の人間。
茶髪を立たせた、上半身裸の男、腰には日本刀、背中には大剣を背負っている。
「あ~あ…悪いな、ワザと驚かしたんじゃないんだよ。
プログラム使ってたらさ~、なんか飲み込まれちゃって
脱出しようとしたら自我失いかけてるんだと勘違いされちまってて」
隼とは違い、良く喋るらしい。
「…」
そんな男に、チャージし終わったJackshotを放つ。
「うお!危ね!!」
サラッと回避してまた喋り始める。
「そりゃ~あんたの敵だけどもよ、ちょっとはべしゃろうぜ?
別の出会い方してたら仲間になれたかもってケースかもよ?」
なんなんだコイツは? そんな疑問が頭の中でグルグル回るが、こんな奴のために思考を巡らせるのも面倒くさいという答えに達し、影燕をまたも放つ。
今度は通常の弾丸、一般人から見れば、それさえも通常の物ではないが、隼にとっては普通過ぎるくらいだ。
「ちょっ!おまっ!まてっ!おいっ!疲れる!スタミナないんだからさっ!!」
間髪入れずに連続で巨大な弾丸を撃ち込むが全て避けられる。
それだけでなく、口数は一向に減らない。
「はいはい、分かりました…
戦えば良いんでござんしょ!」
最早ふざけているとしか言えない。
漸く、背中の大剣を両手で持ち切りかかってくる。
しかし、隼にも機動力がある。
1撃、2撃、3撃、4撃と簡単に避けていると、大剣を右腕で持ち、日本刀を左腕で持ち、更に手数を増やす。
(…速い、さっきの五倍は速くなった)
手数の多さにもだが、あれだけ重圧な大剣を片腕で持ちながら、まだスピードを上げてくる相手に少々の焦りを感じてくる。
「オラオラオラ!多いのは口数だけじゃあ…ねえぜっ!!」
遂に隼の脇腹に大剣がヒットする。
不幸中の幸いか、大剣の刃ではなく、刀身その物に当たった為、バッドで殴られたように吹き飛ぶ。
「ぐっふ…」
近くの壁に背中を思い切りぶつけ、更にダメージが蓄積される。
飛ばされた拍子に影燕を手放し、今は左右別々に、しかも遠くに落ちてしまっている。
男は日本刀をしまい、大剣を再び両手で握るとバッドを持つように構える。
そして大剣の軌道上にオレンジ色の大きな球体を作り出す。
そして
「ひぉはぁ!!」
球体を野球ボールに、大剣をバッド代わりにして、隼に向かって振るう。
オレンジ色の球体は隼の目の前まで飛んでいくと起爆。
隼の周りが煙で包まれる。
「終わりかぁ、寂しいねぇ…てかさっきの掛け声なんだろな?ははははは!」
相変わらず口数を減らさないまま、大剣を隼のいた場所へと振り下ろす。
しかし、それは突如、煙の中から飛び出した手によって止められる。
「…この姿になるのは久しぶりだ…」
煙が晴れると、そこにいるのは、座ったまま片腕を上に上げる、羽を生やした人間ーーー『鳥人』の姿だった。
「な、てめ!なんだそれぇあ!」
言い終わる前に隼の蹴りが腹部に当たる。
破壊力が高いのか、男は簡単に飛ばされていく。
立ち上がった隼は、頬、肘から指まで、そしてズボンで見えないが、膝から足の指までが茶色い羽毛で包まれていた。
足と手の爪もかなり鋭くなっている。
まさに獣ーー。
「ふぇぇあ、恐ろしいねえ…」
男もなんとか立ち上がる。
そして再び大剣と日本刀を取り出し、二本の剣で隼の左右から斬撃を放つ。
しかし、隼は両手を盾にしてそれを防ぐ。
そのまま、弾き返すと強烈な右ストレートを男の顔面に叩き込む。
そうすると、男はまたもや吹き飛ばされる。
「ぐっへぇ…マジかよ、マジかよ!勝てねーじゃん、殺されちゃうじゃん!!」
壁にぶつけた頭から血をダラダラと流し、悲痛の叫びをあげ始める。
「そういう時はなぁ!」
悲痛の叫びを早急にやめ、右の人差し指で隼をビシッと指す。
そして回れ右。
「逃げるが勝ちなんだよぉぉおら!!」
工場の壁を切り裂き、道を作り逃げ出す。
「…逃がさん」
隼も羽を広げて勢い良く、外へと飛び出すが、もう男の姿がない。
「逃げ足速いのよ~~!!!」
余談になるかも知れないがこの時、男は工場から25Km地点にいた。
「…取り敢えず、これでこの事件も終わりか…」
そう呟いて隼は鳥人化を解いて、自信の城へと帰っていった。
元気になった親友の姿を見るために。
蒼井「なんで俺の出ない話ばかりが長いんだ~~!!」
作者「うわっ!やめろっ!黒桜はやめてぇ~」
隼「…あれは仲が良いのだろうか?」