第3話 不適な笑み
前回と今回でたいして長さが変わっていないのに、執筆速度にかなり差があるのを見て、「早く終わるんだったらとっとと書けよ!」なんて思った方々が多々いると思いますが、私情もあるのです。
どうか不規則な更新お許しください。
「誰だよ!?」
ムカつく…。
憎たらしい…。
こんなに眠いのに…。
考え込んでいたのに…。
「くくく…」
笑い声、頭にきた!
「黒桜!!」
黒桜を日本刀にして切りかかる。
しかしそれは目の前の【奴】の持っている槍によって防がれる。
【奴】は槍を上に振り上げ、俺は黒桜ごと宙に投げ出される。
「っ!黒桜セカンドスタイル散りゆく桜」
俺の周りに黒い桜の花びらが舞う。
「硬化!!」その一言で『散りゆく桜』は制止。
硬度は鉄以上になる。
俺は『散りゆく桜』の上に飛びのり地面に叩きつけられる事を防ぐ。
そして着地。
「全日本友好及び完全制覇組合本部生血見頭、花咲蒼井だ!
貴様は何者だ?」
生血見の掟、自己紹介と質問を一変に済ませる。
「名乗る程の者ではございません。」
再度不適な笑みを浮かべ【奴】は言う。
しかし、【奴】の姿が気になってしょうがない。
頭は左目だけ長い銀髪で覆い、体は白いタイツの肩に尖ったクリスタルのような物が付いており、胴から足にかけては甲冑のようなもので守られている。
「俺達に敵対するか?」
【奴】に敵意があるか質問する。
「もちろん…」
【奴】の口がニャァと笑うと同時に、俺のわき腹には槍が突き刺さっていた。
「メルセデスランス…光となれ……。」
『メルセデスランス』と呼ばれた槍はそのまま光を発し文字通り光の速さで俺に突進する。
「グハっ!!」
壁にめり込んだ俺は吐血…。
「ほぉう、これが噂に聞く生血見の『十の輝く攻防具』の一つ『防弾学ラン ダークピアス』ですかい?」
【奴】が敬う気の無い敬語で話しかけてくる。
「その通りさ…察しが良いな、それが十の輝く攻防具が一つ防弾学ラン ダークピアスさ…。そしてこっちが!」
「!!」
先程の突進で落としてしまった黒桜の変わりに学ランから出した太刀を振るう。
「鼬ですかい?」
太刀で軽傷を負った【奴】が聞いてくる。
「ああ、勿論。」
俺も傷口を抑えつつ答える。
俺達が言う『十の輝く攻防具』とは生血見の頭が持つ特別な十の武具で、『防弾学ラン ダークピアス』は名前こそ防弾と小さいがその強度は生半可な鎧よりも強い。
お陰で俺は普通の人間では死んでしまうような攻撃でも軽傷で済んでいる。そして『鼬』は岩をも切り裂く力を持つ太刀である。
「なら、こちらも少し本気を出すのが礼儀ですかな?」
不適な笑み…。
自然と体が後ろに下がる。
「くははははは!メルセデスランス、巨大化だぁ!」
メルセデスランスが50倍は巨大化した、【奴】はそれを持っていない。
超能力の類か?
「貫け!覇王のダーツ!!」
マジかよ!あの巨体がこんな高速で迫ってくるなんて!
「回避が間に合わな…」
そのままメルセデスランスは俺に直撃、爆発が巻き起こる。
「少しやりすぎたか?」
「……まだまだ刺激が足りねーよ!」
「なっ!」
そりゃ驚くよな、突き刺さされた俺がダークピアスで防ぎ切れなかった傷意外見当たらないんだから。
「忘れた?黒桜は本体こそそこに落ちてるけど刃はまだ舞っているって…」
そう、黒桜セカンドスタイル『散りゆく桜 硬化』は自分の前に桜を集めて盾として使う事も可能なのだ。
そして…
「刃!切り裂け!!」
散りゆく桜を刃と化し【奴】に打ち込む。
「ぬぐぅ!!」
そして【奴】の体には無数の傷跡。
「諦めな、このままやってもお前が負ける。」
「やるなぁ、お前!気に入った!
俺の名前はグリエス・ライトリー! 」
「名乗る程の者ではないんじゃなかったのか?」
「強い奴には名乗る!それが俺のやり方さ!!」
「それで、お前は何故俺に敵対する?」
疑問をぶつける。
「ははは!俺のやり方はスルーか!?まあ良い、その質問には答えられないな!
さて…やられちまったし帰るか。
いや、楽しかった!またやろう!」
「戦闘馬鹿が…どうやっても逃げきれねえよ。」
「今、特別警備隊もここを囲んでいるよ」
署長いつの間に!?
「お前どこに行っていた?」
「向こうで華蓮ちゃんとお話しながら隠れてた」
羨ましい!!
俺が傷だらけで戦っている間こいつは!
「オイ!俺のこと忘れてないか?」
「「あ!」」
「俺は戦闘は好きだけど馬鹿じゃねえんだよ!」
今日何回目か分からない不適な笑み。
そして煙…。
煙が晴れた時にはグリエスは消えていた。
「蒼井君、これからどうするの?」
「ちょっと待て!逃げたのが当たり前みたいに話題を変えるな!!」
何を考えているんだこいつは?
と言うかいつ仕事のスイッチ切れた?
「だって、蒼井君はグリエスさんがどこに行ったかわかるの?」
うっ…痛い所を突かれたな…。
てか何故さん付け?
「はぁ、仕方がないか…」
「ん?蒼井君どうしたの?」
署長…長い付き合いなら分かってくれそうだがな。
バタンッ!
…。
……。
………。
「え?蒼井君!!」
「…………。」
「蒼井君!?」
「すやすや……。」
「ムカっ!」
「ぐ〜ぐ〜…。」
「自分の家で寝ろ〜!!!!」
「うるせ〜!」
気持ち良く寝ていた俺を起こした署長の首根っこをひっつかみ警察署から放り出す。
そしてしっかり鍵をする。
「ちょっと!蒼井君!これは立派な犯罪だよ!」
ドアに向かって必死に拳を叩きつけ開けてもらうよう説得する署長。
「だったら寝たい人を眠らせないのは人権無視!」
中途半端に目覚めているせいか眠いせいか何やら滅茶苦茶を良い始めた蒼井。
「それなら考えがあるからね…」
蒼井に聞こえない声で不適な笑みをこぼしつつ言う署長。
後にこの不適な笑みは『グリエスより危険な笑み』として蒼井の心に残るのだった……。
今回も読んでくれてありがとうごさいました。
いつの日か人気が出る事を祈って書き続けます。