ボッチ51 ヘルプボッチ
年末年始投稿です。
転移門の先に広がる燃え盛る都市。
この世界で初めて目にする人里。
良い意味でも悪い意味でも感慨深いが、今回の目的は人里に向かう事では無い。
やるべきは同級生達の救出だ。
まだここはスタートライン。
そして想定していたスタートラインよりも遠い。
同級生達の居場所が分からないからだ。
てっきり、助けを求める者の所へと繋ぐ転移魔法だと思っていたので、同級生達は転移門を開けばすぐ近くに居ると思っていた。
しかし現実は、同級生達の大雑把な居場所である都市からも全容が見渡せる程度に離れている。
それも小さな街を見渡せるでは無く世界一の都市を見渡せる距離、空という遮るものの存在しない環境に転移門が開いた事を考慮しても、相当遠い。
人が居るかどうかの判別も怪しい距離だ。
「女神様、どこら辺に同級生が居るのか分かりますか?」
『メリアヘム唯一の学校に勇者軍の貴賓館から通っていたのでその付近、都市の中央付近に居た筈です』
「つまりそこから脱出を試みたとして、何処に向かったとしてもおかしくないと言う事ですね?」
『……そう言う事ですね』
うん、全く役に立たない情報だ。
都市の中央から退避するってルートは無限大だ。
せめて北より東よりだったらそこから近い出口に向かったのだと推測出来るが、中央部は最も逃げ難い故にどこへでも向う可能性がある。
『まず捜索から始めましょう。幸い私の授けたギフトは消えていません。まだ一人も欠ける事なく生きています』
「ギフトで生きてるか判断出来るんですね。それで正確な位置が分かったりは?」
『ある程度の位置なら。しかし、今はメリアヘムから気配を感じません。恐らく、結界か何かの中に居るのでしょう。本来は探知能力と言う訳ではありませんから、障壁が有れば探知出来ません』
「前にハニーなトラップに遭っている映像を見せてくれましたけど、それは?」
『それなら出来ます。ただ、直接神の力で見守る力なので、この力に距離も位置も関係ありません。その者、信者自体が目のようなものですから』
「つまり?」
『見れますが場所は分かりません』
「……とりあえず、見てみましょう」
『そうですね』
無いよりはマシと女神様に映像を広いてもらう。
同級生それぞれを映した映像が次々と現れた。
そこに映るものから大まかな場所を推測する。
そしてまず一つ、残念な事が判明した。
映る風景が揃ってない。
同じ場所に居るらしき同級生もいるが、場所が数箇所ある。ぱっと見だが、十箇所には別れてしまっている。
加えて、全員室内だ。
こんな所は揃えなくて良いのに……。
幸い、どの場所も大きな傷は無く無事そうだが、その場所を特定出来る材料がまるで無い。
「ヒントすら無さそうですね」
『こうなれば、近距離から探知魔法など探すしか無いでしょう。私も近くでなら場所が分かると思います』
「やっぱり、行かないと駄目ですか?」
『駄目です。幸い、あなたには風景同化があります。隠れながら探れる筈です』
確かに、隠れる対象が居なかったから試したことはないが、空洞の性能からして風景同化もボッチ力を存分に活かして強い力を発揮してくれるだろう。
仕方がない。行こう。
「分かりました。でもちょっと待って下さい」
早速風景同化を全開で発揮しながら、転移門から半分身を乗り出す。
「“英雄の背中”」
すぐさま引っ込む。
そして確認。
転移門の隣しっかり新たな転移門が有った。
覗くとその先には燃え盛る都市。
「帰りも大丈夫そうですね」
『大丈夫そうですね。では、失礼します』
「え? 女神様? 何処に!?」
女神様が急に消えた。
『ここに居ます』
「何処ですか!?」
声は聞こえる。
しかし姿はまるで見えない。
『仮面に宿っています』
「仮面に!?」
『この聖域でしか降臨出来ないので、一緒に行くには依代が必要なんです。そこで仮面に宿りました』
「そんな事も出来たんですね」
『はい、ただ無理矢理なので、ここを出てからは魔力供給をお願いします。仮面に流してくれれば後は私が運用します。
では、助けに行きましょう』
こうして俺達は、メリアヘムに転移した。
風景同化全力全開、かつ空洞も全力展開して―――
落下する。
「女神様ぁぁーーー!! 俺飛べませんでしたーーー!!」
『お馬鹿あぁぁぁーーー!!』
やばいやばい!!
かなりの高度だし、落ちて無事でもドボンしたら確実に魔王軍にバレる!!
『飛行魔法! 飛行魔法を早く!』
「飛行魔法飛行魔法! 何でも良いから飛行魔法来い!」
来た! 飛行魔法!
「”空暗地青“!」
フラフープのように光の輪が現れると、火を吹いた。
落下が止まり、上へ進む。
成功だ!
『飛行手段も手に入れました。後はメリアヘムへ飛ぶだけです』
「後はこの魔法が一旦止まった後、自力発動するだけですね」
ただ落下しない事を望んだからか、俺達は上へ上へと飛び続ける。
何か加速している。
風圧は空洞で感じないが、相当速い。
光の輪は炎を吐き続け、俺達は上に加速して加速して加速する。
「……あの、止まる気配が無いんですけど」
『……一体、どんな魔法を望んだんですか?』
「さあ? ははっ……」
『…………』
もう、笑うしかない。
とっくに元の高度は越えた。
メリアヘムはどんどん遠くなる。
そして何故か霧が立ち込めてきた。
視界が塞がれる。
メリアヘムが見えなくなる。
おっ、視界が晴れた。
メリアヘムは―――
雲の下だ……。
雲を、突破してしまった。
それでも止まらない。
雲がなくてもメリアヘムが見分けられない高さまで到達してしまう。
そして、やっと止まった。
止まったが、全く落ちる気配が無い。
もはやメリアヘムは何処か分からず、メリアヘムの全景どころか―――
「『フィーデルクスは青かった……』」
星が見えた……。
飛行魔法は飛行魔法でも、宇宙飛行魔法だったらしい。
ははは、人里に出たと思ったら、何故か星からも離れてしまった。
誰か、助けて……。
次話は明日投稿したいと思います。




