ボッチ49 ボッチ、転移門に拒まれる?
年末年始投稿です。
……何故か、転移門を開けた瞬間激しい光が現れて爆発した。
俺は直撃したが無傷だ。
例の如く空洞のおかげだ。
一層も突破されていない事から、大した威力が有った訳でも無さそうだが怖すぎる。
扉を開いて爆発なんて、悪質な罠と変わらない。
それに驚いた弾みに転移門も消してしまった。
「女神様、がっつり失敗したんてすけど? この魔法、本当にその効果合ってます?」
魔導書を広げながら女神様にクレームを入れる。
『そんな筈はありません。しっかり助けを求める者の所へ転移する魔法ですよ』
「じゃあこれは一体?」
『もしかしたら、魔導書に書かれた術式自体は固定化され応用が効きませんから、変な所に繋がったのかも知れません。この魔導書、実用品と言うよりも図鑑ですし』
「ああ、そう言う事ですか。そう言えばあまり応用が効きませんでしたね」
となると、自力で発動しなきゃならない訳か。
まあ幸い、この魔法なら何とかいける。
「“英雄の背中”」
空間が裂け、転移門が開く。
そして例の如く大量の密度の濃い炎の塊が―――。
「なぜえぇーーーっっ!!」
思い切り猛烈な勢いの炎に呑み込まれた。
慌てて転移門を閉じる。
今回も空洞のおかげで無傷だが、そう言う問題じゃない。
「女神様、無理ですこの魔法! やっぱり変な所に繋がります! 本当に合ってますか?」
『そんな筈は…、そうだイメージです、ちゃんとメリアヘムで助けたいとイメージして使いましたか? この魔法はただの転移魔法では無く、助けたい相手の場所に行く為の魔法でも有ります。ただの座標指定以外にも助けを求める場所に繋ぐと言う座標指定も必要です。つまり、片方だけを目指しても上手くいかない魔法なんだと思います』
「メリアヘムを目指すだけ、助けに行く事を求めるだけじゃ正しく使えないって事ですか?」
『おそらくはそう言う事です。なので、何方も明確にイメージして使ってみてください』
「分かりました」
正直、今日初めて聞いたメリアヘムと言う都市の事は勿論、同級生に対しても明確なイメージと言うものは興味が無かったので懐き辛いが、絞り出してイメージする。
「“英雄の背中”」
そして開いた。
空間の門からは真っ黒な雷が―――。
「やっぱりいぃぃーーーっっ!!」
当然のように俺に直撃した。
凄まじい音を轟かせて弾ける。
俺はまたしても転移門を閉めた。
「何ですこれ? もはや転移魔法云々では無くて、使った人間を殺す魔法かなんかなんじゃないですか?」
『……その可能性も無きにしもあらずですね。ですが、その魔法自体から感じたのは空間属性の力だけです。少なくとも、殺人的な要素は組み込まれていないと思います。多分』
「確かに、空間属性以外は使っていませんね」
と言う事は、やはり座標指定を間違えたのか?
いや、ならあの光線や炎は一体?
あんなのが飛び交う環境が普通に有るとも考え難い。
もう一度だけ、イメージを新たに発動してみよう。
メリアヘム。
名前だけじゃイメージが不十分だ。
今襲われている、この世界最大の城塞都市。
このイメージなら、本当の姿を知らなくとも被りようが無い筈。
同級生。
これは助けたいと言う気持ちを何よりも一番に。
思い入れ深い事なんか無いから、余計な事は思い浮かべない。
良し、イメージが整った。
「“英雄の背中”」
はい、闇の槍こんにちは。
うん、知ってた。
もはや動じる事なく転移門を閉めた。
「無理ですね」
『無理そうですね』
「と言うか結局、炎とか雷は一体何なんでしょうね?」
『魔法自体は改めて見ても空間属性しか有りませんし、だからと言って炎や雷の荒れ狂う環境は兎も角、槍らしきものが飛来する環境は考え難いですし。
これはもしや、空間を裂く反動では? 空間を裂くエネルギーが炎や雷の形をとっているのかも知れません』
「そう言えば、映画とかで空間の穴を開ける時に雷が発生する演出がありますね」
『もしかしたら、発動したまま閉めずにいれば普通に収まるのかも知れません』
黒い槍は反動として聞いた事が無いが、あれで空間をこじ開けた結果、色々な反動が生まれているのかも知れない。
超過酷な環境にばかり繋がっていると考えるよりも納得がいく。
まあ、どれも空洞を一層も破れていない事から、ただの環境の可能性もまだ捨てきれないが。
「じゃあ、何か溢れてきても開いたままにしてみますね」
何が溢れて来ても、結局実害自体は皆無だからやる価値は十分に有る。
多少長く被害に遭っても問題ない。
「“英雄の背中”」
今度は何が出るか。
もはや何も出ないと言う選択肢すら浮かばない。
そしてその予想は違わない。
今回出て来たのは大量のスパークだ。
単発の雷と言うよりも嵐のような雷、いや雷のような何か。
それが嵐のように激しく苛烈に襲いかかって来る。
まあ、それでも問題無く無傷なのだが。
勿論、相変わらず空洞の一層も破れていない。
空洞以外の場所に当たったらどうなるかは、空洞が完全に転移門を塞いでいて漏れていない為に分からないが、感じる魔力からして災害魔法の方が断然上だ。
仮に空間を開いた反動で無く、環境による災害だとしてもそこまでの威力じゃないだろう。
問題点を挙げるとすれば、予想以上に長い事だ。
もう十秒くらいは経っている。
そして雷は時と共に激しくなっていた。
収まると思っていたが逆だ。
そして予想外の事が起きた。
何やら空間属性の波動、それも高密度なものが現れて転移門が砕けたのだ。
そして盛大に爆発した。
爆発したのは空洞のおかげで門の先だが、何であれ転移門が壊れてしまった。
『どうやら、転移門の維持は時と共に難易度が増すようですね。これも空間が安定して行く反動でしょう』
「これ、もっと術を強固に維持すれば安定しますかね?」
『おそらくは安定するでしょう。普通に考えれば、安定する直前の反動が最も大きい筈ですから』
どうやら、やっと成功への道が切り開けたようだ。
後は術を維持すれば良いだけ。
そう思っていると、何故かステータスの声が聞こえ始めた。
《経験値を獲得しました。
ステータスを更新します。
“異世界勇者”のレベルが70から71に上昇しました。
“勇者”のレベルが0から30に上昇しました》
そして、何故かスキルでは無く職業のレベルが上がっていた。
次話は明日投稿したいと思います。




