ボッチ42 ボッチの五日目の朝
ハロウィン投稿です。
新章開幕。章題は仮です。
「……尿意が……」
まだ布団の中で微睡んでいたかったが、尿意には勝てない。
俺は布団から何とか抜け出しテントの外に出た。
霧がかった冷たい風が俺の頬を撫でる。
辺りは暗い。どうやらがっつり眠っていたらしい。
早朝の出来事であったが、魔王討伐はしっかり精神の体力を奪い取っていたようだ。
そう思っていると、地平線の彼方が色付き始めた。
……想像以上に疲れていたようだ。
夜までの長い昼寝を越え、ほぼ丸一日眠っていたらしい。
用を足すと、途端に目が覚めてくる。
長時間眠っていたからか、もう二度寝する気も起きない。
もうこのまま、朝食にしてしまおう。
円環状に並べた状態で石を生成し、そこに薪を生み出し並べ、火を着ける。
もはや当たり前に魔法が使える。
慣れたのに加え、レベルアップの影響かかなりスムーズに使えた。
石を生み出すのも前は一つ一つ意識して生み出していたが纏めて望んだ形で生成でき、更に他属性への切り替えも楽だ。やろうと思えば一つの魔法として焚き火を生み出せそうですらある。
そして魔力の消費もかなり少なくなった。
無駄が殆どない。
使った魔力と回復する魔力が釣り合うどころか、回復量の方が多いくらいだ。まあこれは魔力の回復量が凄まじいのもあるが、それでも無駄がかなり少なくなったのは確かだ。
これなら、空間属性魔法を習得するのもすぐかも知れない。
アイテムボックスから尽きないパンと尽きない味噌汁水筒を取り出し、まずパンを頬張る。
そして味噌汁で一服。今朝の味噌汁は豆腐とワカメのシンプルな一品だ。肌寒い中、丁度いい温もりを提供してくれる。
あっ、焚き火、必要無かったかも。
そもそも火が必要な食材なんて持っていない……。
火はパンの焼き加減を変えるのに使おう。
朝食はパンと味噌汁か。
昼食も夕食も……。
この場所から移動しない限り永遠にこのメニューが続いてしまいそうだ。
やはり食を考えると人里が恋しくなる。
空間属性魔法の習得を急がねば。
食事を終えた俺は早速空間属性魔法の修行、では無く朝風呂に入る事にした。
目の前に温泉があるのだから、入ると言う選択肢以外は存在しない。
「ふはぁぁ〜」
元魔王の残り汁とは思えない気持ち良さだ。
今になってもとても信じられない。
空が朝に染まって行くのを見ながらの温泉は最高の一言に尽きる。
そうだ、どうせなら温泉に入ったまま空間属性魔法の練習をしてみよう。
早速、水晶球を取り出す。
出よ空間!
念じながら魔力を流すと空間の歪みが生まれた。
魔法適性の無い属性には膨大な魔力を消費するこの修行だったが、魔力が爆上がりした今では全く苦にならない。
幾らでも何回でも連続的に発動出来る。
そして魔力操作とかのスキルレベルが上がったからか、これがどう言う属性なのか理解しながら発動出来た。
《熟練度が条件を満たしました。
ステータスを更新します。
魔法〈空間属性魔法〉を獲得しました》
そして何と、あっという間に魔法適性の獲得に至った。
まだ一時間も経っていない。
感覚的には十五分程度だ。
これは幸先が良い。
外の世界も近そうだ。
次はこのまま空間属性魔法のスキルを獲得してしまおう。
空間の歪み生成を自力で発動する。
一回ずつ発動するのは効率が悪い。
いっその事、初っ端から多重展開に挑戦してみよう。
おっ、あっさり出来た。
しかも魔力が莫大に増え魔力操作のスキルレベルが上がった事で、視界を埋め尽くすほど空間の歪みを生み出せた。
《熟練度が条件を満たしました。
ステータスを更新します。
アクティブスキル〈空間属性魔術〉を獲得しました。
アクティブスキル〈空間属性魔術〉のレベルが1から3に上昇しました》
そして最速でスキルを獲得し最速でスキルレベルが上がった……。
驚きを通り越して感情が湧いて来ない。
想像以上にレベルアップの影響は大きいようだ。
今日中に人里へ出る事も出来るかも知れない。
何にしろ、このまま続けて見よう。
あっ、そうだ。
こんなに多重展開出来るなら、空間属性魔法を維持しながら他の魔法の獲得も出来るかも。
そう思って空間の歪みを生み出しながら再び水晶球を手に取り水を望むと水が生成された。
やはり出来るようだ。
よし、多くの属性の獲得を目指そう。
属性属性、何があったか?
火水土風、光に闇、聖属性に氷、後は氷と空間、ここに分類されていない別の属性。
そうだ。空間と言えば時だ。
時属性が存在するかは定かでないが試してみよう。
出よ時!
…………何も出ない。
でも魔力は吸われた。
これは発動しているのか?
一応魔力が何かしらの形になった痕跡はあるが、それが何か判別出来ない。
暫く続けてみる。
すると待ちに待ったステータスの声が響いて来た。
《熟練度が条件を満たしました。
ステータスを更新します。
アクティブスキル〈空間属性魔術〉のレベルが3から4に上昇しました》
そっちか……。
いや嬉しいけれども。
空間属性魔法の獲得に要した時間は早くも過ぎて行く。
やはり時属性魔法は存在しないのか?
そう思いながらも魔力の消費は続いているので魔力を流し続ける。
《熟練度が条件を満たしました。
ステータスを更新します。
魔法〈時属性魔法〉を獲得しました》
暫く続けると時属性魔法の獲得に成功した。
やはり時属性は存在していたらしい。
しかし時間がかかった。
もしかして潜在的な適性が低かったりするのだろうか?
もしくは時属性自体が難しいとか?
何だったら空間属性が特別相性が良かった可能性もある。
《熟練度が条件を満たしました。
ステータスを更新します。
アクティブスキル〈時属性魔術〉を獲得しました》
まあ何であれ、大魔法使いへの道も案外近そうだ。
こうして今日も、俺は魔法の練習を続けるのだった。
次話は本日中に投稿したいと思います。




