ボッチ33 気付かないボッチと女神の急報
2021
《【原悪の魔王】ディオネルザオルを討伐しました》
「へっ?」
衝撃過ぎるアナウンスはそこで終わりではなかった。
《経験値が一定値を上回りました。
ステータスを更新します。
“異世界勇者”のレベルが1から50に上がりました。
“異世界勇者”のレベルの上昇を確認。
“スキルポイント”機能を解放します。
“異世界勇者”のレベルが10に到達。
“セカンドジョブ”機能を解放します。
“異世界勇者”のレベルが20に到達。
“サードジョブ”機能を解放します。
“異世界勇者”のレベルが30に到達。
“勇者武装”機能を解放します。
“異世界勇者”のレベルが40に到達。
固有スキル〈勇者直感〉を獲得しました
“異世界勇者”のレベルが50に到達。
“勇者”の職業を獲得しました。
称号【勇者】を獲得しました。
勇者と認定します。
【魔王】の討伐を確認。
【魔王の眷属】の討伐に成功したと認定します。
“異世界勇者”のレベルが50から70に上がりました。
“異世界勇者”のレベルが60に到達。
“ポイント交換”機能を解放します。
“異世界勇者”のレベルが70に到達。
固有スキル〈絆の力〉を獲得しました。
ギフト〈空洞〉〈風景同化〉のレベルが7から10に上昇しました。
魔法〈聖属性魔法〉のレベルが8から10に上昇しました。
パッシブスキル〈邪属性耐性〉のレベルが9から10に上昇しました。
〈魔力回復〉〈再生〉のレベルが8から10に上昇しました。
〈並列思考〉〈高速思考〉のレベルが7から10に上昇しました。
〈魔力吸収〉〈魔力回収〉〈魔力貯蔵〉のレベルが6から10に上昇しました。
〈魔力耐性〉のレベルが4から10に上昇しました。
アクティブスキル〈魔力操作〉のレベルが7から10に上昇しました。
〈聖属性魔術〉〈限界突破〉〈魔力収集〉〈魔力精製〉〈魔力変換〉〈体内術式〉のレベルが6から10に上昇しました。
〈魔力感知〉〈浄化〉のレベルが5から6に上昇しました。
〈連続魔法〉のレベルが4から6に上昇しました。
パッシブスキル〈精神耐性〉が固有スキル〈不屈〉に覚醒しました。
アクティブスキル〈魔力操作〉がパッシブスキル〈魔力操作〉に覚醒しました。
称号【全裸の勇者】【湯の勇者】【原悪を打ち滅ぼしし者】を獲得しました。
世界神【露出教主】マリアンネの介入を確認。
加護〈マリアンネの祝福〉を獲得しました。
称号【露出教名誉司教】を獲得しました。
アクティブスキル〈聖職者〉〈全裸強化〉を獲得しました》
押し潰されそうになる程の膨大なエネルギーが俺に押し流れてくる。
しかし感じるのは全能感。
圧倒的だが、暴力的では無い。
寧ろ安らぎすら覚える。母に還り、生まれ変わっているようだ。
そうしてエネルギーが、俺になる。
作り変えられたのでは無い。型に沿って拡がった。そんな不思議な感覚だ。
だが、それで終わりでは無かった。
『……ありがとう…』
『異界の…勇者よ……』
『…あなたは…人々を救った……』
『誰も見ていなくとも…我らだけは知っている……』
『……君は…闇を……払って…くれた』
『…私たちの……代わりに…』
『…心よりの…感謝を…』
『どうか受け取って……欲しい…』
『我らに出来る……最後の力……』
『…あなたの為に……』
『『『感謝を込めて』』』
そんな掠れているが身に染み込むような声が突然聞こえ、地中から六つの光の柱が昇った、と思うと、俺に向って降りて来た。
優しい光が俺を包む。
《【光と法の旧神】セルアモール、【闇と術の旧神】ガゼアノート、【火と鍛冶の旧神】フルアシュアー、【水と流通の旧神】ウィルセアン、【土と農業の旧神】マルダモネ、【風と旅の旧神】エシュフロンが介入しました。
ステータスを更新します。
称号【旧神の後継】を獲得しました。
加護〈旧神の力〉を獲得しました》
『『『さらば…愛しい子ら……さらば………異界の勇者よ…………』』』
それは子の巣立ちを見送るような、そして憂いなく眠りにつくような声音。そんな声は空に溶け消えるかの様に消えて行った。
ゆっくりと湯気のように、光もその気配も、静かに完全に無くなる。
が、感傷に浸っている暇は無かった。
今度はステータスの変化では無い。
目の前の空に、直視せざるを得ない程神々しい、巨大な魔法陣が現れた。
木々の成長を早送りで見ているかのように魔法陣は描かれ拡がり、緻密な魔法陣が完成してゆく。
魔法陣と言っても、魔力は感じない。ゼロではないが、別の力で画かれている。
そんな魔法陣は完成すると、神々しい光を更に強め、そこから木漏れ日が漏れるかのように、光芒が降りてくる。
そして女神が降臨した。
「…………何しているんですか? 女神様?」
降臨したのはうちの女神様だ。
派手な登場で、それしか頭に入って来ない。
目立つ登場を何故ここでするのだろうか?
実は目立ちたがり屋だった? 陰キャの俺には理解できない。
「……それはこちらのセリフです。登場はそう言う仕様です。あと私、正真正銘の女神ですからね? 女神が降臨した感動とか無いんですか?」
「今更感動とか言われても…」
と言うか、来るなら温泉でのぼせそうになって困っていた時に来て欲しかったものだ。
「私も忙しいんですよ。神域も地上も大騒ぎなんですから。現在進行形で」
「大騒ぎ?」
「はい、ですから特に用も無いなら呼び出さないでください」
困っている時に来て欲しいと思っていたら、じゃあ困ってない時には呼ぶなと言われた。
ごもっともな意見ではある。
だが、前提を間違えている。
「俺、女神様を召喚なんかしていませんけど?」
「はい? じゃあ何で私がここに居るんですか?」
「知りませんよ。と言うか女神様、何で今回は映像みたいなのじゃ無くて、実体があるんですか?」
「実体? ……本当ですね。確かに貴方の力では、と言うよりも人間の力では神を実体のある状態で降ろすなど、まず不可能な芸当です」
女神様は、本気で俺が召喚したと思っていたようだ。
しかし女神様が言うとおり、やるやらない以前に女神様を召喚するなど出来ない芸当だ。
まだまだ異世界初心者の俺でもそんな事は分かる。
神を召喚なんて、チートですらない。
「ところで、大騒ぎって何が起きたんですか?」
だが、そんな女神降臨問題よりも、こっちの方が気になる。
地上どころか神域も大騒ぎって、どう考えても尋常じゃ無い出来事だ。
一体何が?
「魔王が現れました」
「魔王って、ラスボス的なアノ?」
「その魔王です」
あまり現実味のある話では無いが大事件だ。
どんな創作物でもそれは共通した事実だろう。
「あれ? でも、そもそも魔王が現れたから俺たちが召喚されたんじゃ?」
「その通りです。今回現れたのはその魔王とは別の新たな魔王です。だから大騒ぎになっています」
「新たな魔王!? 魔王が二体になったって事ですか!?」
「なので地上も神域も大騒ぎです。おまけに誰もこのような事態は想定していませんでした。魔王はその時代に一柱、それも最短で三百年の年月を経て現れていたそうです。未来を見通す予知の女神も巫女もこの事態は予見出来ず。更には新たな魔王は現れて間もなく、その気配を完全に消しました。神をも欺く大魔王が誕生したのでは無いかと、それは大変な大騒ぎになっています」
そんな事になっていたなんて、今回ばかりは周囲に人っ子一人いないボッチぶりに感謝だ。
巻き込まれずに済みそうである。
「貴方も異世界の勇者の一人なんですが……?」
とジト目な女神様。
「俺は勇者である前にボッチなんです。残念でしたね」
もういっそ、空間属性の練習もやめて平穏な余生を目指そうかな?
「……もはや清々しいほどのボッチですね……」
女神様の視線は痛いが、何事も安全第一だ。
次話は明日投稿します。




