ボッチ32 ボッチVS温泉???
もう十分スキルを手に入れ磨けたし、上がるのに丁度良いかも知れない。
『グゥゥゥオオォォォォォォォ!!!!』
そう思っていると、地響きが桁違いに大きくなった。
まるで断末魔のような、力を振り絞った強い音だ。
地響きが鳴り響いた直後に、源泉から灰色の、灰色の中にほんの少し赤黒い地獄の炎のような色が混じった光が、莫大な湯と共に噴出してきた。
光は、可視化された魔力だ。
急ぎ全身を聖属性の魔力で満たす。
更に今まで放出し、湯と共に丘の下へと流れて行った魔力をかき集めた。
俺の聖属性の魔力も可視化され、清々しく光輝く。
しかしそれでも温泉に呑み込まれそうになる。
もはや感じるのはのぼせる感覚どころでは無い。
意識や思考どころか、感情も感覚も、全てが奪われそうになる。
豊富な聖属性の魔力を届く限り集める。
駄目だ、補充が追いつかない。
苦し紛れに空洞を発動。
灰色の空間が広がる。
しかし極寒の地で空に撒いた熱湯のように霧散した。
五重になっていた、その全ての層がだ。
しかし一瞬は防げた。
聖属性魔力の生成吸収、ペット皿での回復、それに加え幾度も空洞を発動するも、まだ押し負けている。
《熟練度が条件を満たしました。
ステータスを更新します。
ギフト〈風景同化〉のレベルが4から5に上昇しました。
魔法〈聖属性魔法〉のレベルが6から7に上昇しました。
パッシブスキル〈状態異常耐性〉〈精神耐性〉〈毒耐性〉〈病耐性〉〈瘴気耐性〉〈呪耐性〉〈炎耐性〉〈石化耐性〉〈腐食耐性〉〈酸耐性〉〈崩壊耐性〉のレベルが9から10に上昇しました。
〈邪属性耐性〉のレベルが7から8に上昇しました。
〈魔力回復〉〈再生〉のレベルが6から7に上昇しました。
〈並列思考〉〈高速思考〉のレベルが5から6に上昇しました。
アクティブスキル〈魔力操作〉のレベルが5から6に上昇しました。
〈聖属性魔術〉のレベルが4から5に上昇しました。
〈魔力感知〉〈浄化〉のレベルが3から4に上昇しました。
〈連続魔法〉のレベルが2から3に上昇しました。
パッシブスキル〈魔力吸収〉〈魔力回収〉〈魔力貯蔵〉〈魔力耐性〉〈体内術式〉を獲得しました。
アクティブスキル〈限界突破〉〈魔力収集〉〈魔力精製〉〈魔力変換〉〈体内術式〉を獲得しました》
大分こちらの押す力が増えた。
数多のスキルが上がったと言うのもあるが、魔力操作や並列思考に高速思考がレベル6になったのは大きい。
今までもそうだが、5と6のレベルアップには、おそらく壁がある。しかしその分だけ、上がるとスキルの力が増大するようだ。
魔力を操作する力もその範囲も、そしてそれを制御し変換する能力も格段に上がった。
耐性スキルの最大レベル10への変化も大きいが、5から6への変化の方が大きい気がする。
そして今までやっていた事がスキル化され、自然に、当たり前のように出来るようになった。
特にパッシブスキルは、まるで生態が変わったかの様に、行えるようになった。
無理矢理かき集め自分のものにしていた魔力が、当たり前のように自分のものになってゆく。
だが、それでもまだ足りない。
《熟練度が条件を満たしました。
ステータスを更新します。
パッシブスキル〈魔力吸収〉〈魔力回収〉〈魔力貯蔵〉のレベルが1から5に上昇しました。
〈魔力耐性〉のレベルが1から3に上昇しました。
アクティブスキル〈限界突破〉〈魔力収集〉〈魔力精製〉〈魔力変換〉〈体内術式〉のレベルが1から5に上昇しました》
新たに獲得したスキルが急激にレベルアップしてもそれは大して変わらない。
まだ押し負けている。
《熟練度が条件を満たしました。
ステータスを更新します。
ギフト〈空洞〉〈風景同化〉のレベルが5から6に上昇しました》
しかしこのレベルアップで、大きく力関係は変わった。
空洞の灰色の世界は五重から六十四重に代わり、より聖属性の魔力と一体化した。
押され続けていたのが、押し合う状態へと変わる。
が、向こうの押す力が変わる訳では無い。
あくまでも拮抗しただけだ。
微かにも手を抜く事は出来ない。
温泉から出ようにも、一歩も動けない状況だ。
完全に囚われている。
そしてそれで済ます為に全身全霊。
このままでは温泉卵ならずの温泉ボッチになってしまう。
「うぉおおおおぁぁあっ!!」
声に出して、精神論頼りの気合いも全開で温泉を押し返す。
《熟練度が条件を満たしました。
ステータスを更新します。
ギフト〈空洞〉〈風景同化〉のレベルが6から7に上昇しました。
魔法〈聖属性魔法〉のレベルが7から8に上昇しました。
パッシブスキル〈邪属性耐性〉のレベルが8から9に上昇しました。
〈魔力回復〉〈再生〉のレベルが7から8に上昇しました。
〈並列思考〉〈高速思考〉のレベルが6から7に上昇しました。
〈魔力吸収〉〈魔力回収〉〈魔力貯蔵〉のレベルが5から6に上昇しました。
〈魔力耐性〉のレベルが3から4に上昇しました。
アクティブスキル〈魔力操作〉のレベルが6から7に上昇しました。
〈聖属性魔術〉〈限界突破〉〈魔力収集〉〈魔力精製〉〈魔力変換〉〈体内術式〉のレベルが5から6に上昇しました。
〈魔力感知〉〈浄化〉のレベルが4から5に上昇しました。
〈連続魔法〉のレベルが3から4に上昇しました》
一体どれ程の時間が経っただろう?
いや、日の昇り方からして一分も経っていない。
再び怒涛の勢いでスキルレベルが上がった。
新獲得スキルのほとんどがレベル5の壁を越え、空洞は六十四層から倍の百二十八層へと変化した。
この変化はかなり大きい。
特に新獲得スキル、魔力をかき集める系のスキルが5の壁を越えた事、更にそれぞれの相乗効果で俺の生み出した魔力なら一気に全て掌握出来た。
相当な魔力を放出していたようで、かき集め可視化された聖属性の魔力は眩しい程に輝いている。
「ぐぅおおぉああっ!!」
その魔力を全て一度体内に入れ、風景同化で一体化、再び完全な自分の魔力とし、放出した時よりも高い聖属性の適性で生み出せる最高純度の魔力に変換精製、一気に源泉に向け、放出した。
自分由来、再度一体化させた魔力ではあるが、剰りの量に身体が焼き切れそうになる。
しかし最後まで、自分を保護する分だけ残して全てを一気に絞り出す。
度重なる変化で、鉄錆のような色合いだった濁り湯が、魔力に触れる側から清い光を発し底まではっきりと透き通った澄んだ清水に変化してゆく。
源泉から放出されていた黒ずんだ灰色の魔力も、清水色の光に分解。
源泉の入り口まで進むと、ダイヤモンドダストのような光を噴出させ、源泉口を聖属性の魔力は突き進む。
湯気の代わりに清水のようなオーロラ光が昇り、魔力が熱源まで到達すると、いよいよ地鳴りは叫びとしか言い得ないものとなった。
『―――――――――ッッッ―――!!!!!!』
それも断末魔としか捉えようの無い叫び。
『ッッッッ!!!!!!!!――――――』
全ての魔力が熱源に到達すると、爆発の如き断末魔が轟き、爆発の如きオーロラ清光の波が丘全体、いやこの高原全体に広がった。
そしてそこら中から光の粒子が昇ってゆく。
身体の内から、そして温泉からのぼせる力が引いた。
同時に温泉の勢いも無くなる。
《【原悪の魔王】ディオネルザオルを討伐しました》
「へっ?」
次話は今日か明日に投稿します。




