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ボッチ22 ボッチと武技その2

 


『では、次に移りましょう』


 女神様は何事もなかったかのように振る舞う。


 俺も一々突っかかるなど、無粋な事はしない。


『魔術の完成形を意識して、武技を使用してみてください。ウォーターボールの形、大きさ、速さなどですね』


 形は球形、渦巻く球形。

 大きさは人の頭程、両手で包めないくらい。

 そして速さはプロの魔球、高速のドッジボール。


 出でよ、ウォーターボール!


 すると、想像した通りウォーターボール出てきた。


 そして気が付く。


「何故か武技のときよりも消費魔力が少ないんですけど? 余計な注文をした筈なのに何故少なく?」


 武技の魔術でも自力で発動した時のように、ある程度自由がきく事は分かったが、普通に考えたらオプションを付けたほうが使う魔術は多くなる筈だ。

 セットメニューは何かとお得だが、元のメインよりも安い事は無い。


『それは本来の武技の術式の一部を自力で変化させているからです。つまり術式を出現させる工程を一部カットし、それに伴っていた魔力コストも減ったと言う訳です』


 どうやらセットメニューで考えると、自分で一部調理したら安くなるパターンのようだ。


「でも、イメージしかしていませんけど?」

『そのイメージも、魔術の発動方法の一つなんですよ。基本的に地球にあった物語の魔術発動方法の殆どが、ここでは実際に使えます。勿論発動し易さの優劣がありますが』

「じゃあ、イメージだけで魔術が使えたりします?」

『はい、ですがそれはかなり上級者向けです。ステータス的には魔法適性、魔法の欄にある魔法のレベルが高い程、イメージ魔法は使えるそうです。そしてこれはスキルよりも上がり難いものです。貴方の場合は魔力操作や感知ができるので、術式で発動した方が簡単だと思いますよ?』


 試しにイメージだけでウォーターボールを発動してみる。

 すると確かに水球が現れる。


 しかし遅い。

 術式での自力発動は勿論、武技よりも発動速度が遅い。


 そして疲れる。

 明らかに集中力が必要だ。

 それと魔力でイメージを強引に現実のものにしている。


 これは俺が魔力操作出来るからそう思うのかも知れないが、少し油断するとすぐにぶれて別の魔術に変わってしまいそうな気がする。

 イメージを現実に変えるのも大変だが、すぐに色々なものへと変わろうと定まらない魔力を制御するのも難しい。


 でも術式なんか要らない。

 勝手に魔力がイメージによって流れて術式になろうとする。

 書こうとする必要は無い。

 元の術式を欠片も知らなかったら、こっちの方が断然楽だ。

 魔力さえ有れば何とかなる。


 魔導書を取り出せない急を要する状況下の為にも、使えるように練習しておいた方が良いかも知れない。



『ウォーターボールはイメージだけで発動出来るようですね。ですが、一度も発動した事の無い魔術はそう簡単には使えません。使えたのは術式で発動したときの感覚もイメージとして込められたからです。自力で使った事の無い魔術を発動するには細かくイメージを補完する必要があります。

 効果的なのは実物を見る事ですね。まあ、貴方には魔導書が有るので必要無いかも知れませんが』

「それなら、武技はどうやって覚えるんですか? 魔術は魔導書読んだりイメージすれば良いって分かりましたけど」


 武技を発動してみたものの、やはり今一武技がどう言うものなのかはっきりしない。

 型を魔力で呼び出すものと言う本質みたいなものは分かった。

 しかしそれを、自分が使うと言うところに繋いで考えると判らない事の方が多い。

 術式やイメージと言った身近な理解し易いものが無い。


『本来、武技の方が使い易い筈なんですが、貴方の場合は反対なんですよね』


 悩むようにそんな事を言う女神様。

 何やら俺に説明し難い理由があるような言い方だ。


『本当は原理がどうでも良くなるくらい、通常の魔術発動は難しいんですよ』


 どうやら頭がこんがらがるのは、考えなくても良いような難しい事からやっていたかららしい。


『結論から言いますと、武技の方が普通は簡単に発動出来ます。しかし、その原理は他の方法よりも難しい、と言うよりも複合したものです。そして武技以外の方法では技を成立出来ず、魔力がその差を埋めることで武技として発動する。これが武技発動、そして獲得の手順となります』

「つまり、どう言う事ですか? 結局武技はどうやって覚えるのが普通なんですか? やっぱり今一違いが分かりにくいんですけど?」

『まとめると、色々試行錯誤した末にいつの間にか使えるようになるって事です。

 そして重要なのは、本来武技とは自力で発動出来ない技を魔力を対価に無理矢理使う技です。よって自力で身に着けるよりも簡単に習得でき、自分の実力よりも高度な技を使う事により、結果としてスキルレベルが上がりやすいと言う訳です』


 最初のスキルレベルを効率的に上げられると言う話に繋がった。

 しかしだからと言って、この方法が実行出来るかは別の話だ。

 肝心の習得方法が試行錯誤ではどうにもならない。

 それに多分、魔術に関しては武技になる前に使える。


「結局、俺にとって魔術の武技はあまり意味がないって事ですか?」

『そう言う事ですね。魔力感知も魔力操作も出来る貴方にとっては、多分遠回りです』


 ……今までの話は何だったのだろうか?


 俺が始めた話ではあるが、何とも言えない気分になる。

 それもどちらかと言うと、高度な事が出来るからこんな話になったのに、喜びや優越感、正の感情が一切湧いてこない。

 だからと言って、抱いている感情が何なのかもいまいち分からない。

 有るのは脱力感だ。


『まあ、魔術系やアイテムボックスのように初めから使えるスキル以外では役立ちますから、覚えて置いて損はありませんよ』


 若干の慰め口調で励まさせる始末。


「……全部魔術か初めから使える系なんですけど?」

『……まだ異世界生活は始まったばかりです』


 取り敢えず言えるのは、これは俺の思い描いていた異世界生活とは違う事だ。

ハロウィン投稿は後二話あります。

今日中に投稿します。

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設定集
〈モブ達の物語〉あるいは〈真性の英雄譚〉もしくは〈世界解説〉
【ユートピアの記憶】シリーズ共通の設定集です。一部登場人物紹介も存在します。

本編
〈田舎者の嫁探し〉あるいは〈超越者の創世〉~種族的に嫁が見つからなかったので産んでもらいます~
【ユートピアの記憶】シリーズ全作における本編です。他世界の物語を観測し、その舞台は全世界に及びます。基本的に本編以外の物語の主人公は本編におけるモブです。ボッチは本編のアンミール学園で裸体美術部(合法的に女性の裸を見ようとする部活)の部員です。

兄弟作
クリスマス転生~俺のチートは〈リア充爆発〉でした~
ボッチと同じ部活の部長が主人公です。

本作
孤高の世界最強~ボッチすぎて【世界最強】(称号だけ)を手に入れた俺は余計ボッチを極める~
本作です。

兄弟作
不屈の勇者の奴隷帝国〜知らずの内に呪い返しで召喚国全体を奴隷化していた勇者は、自在に人を動かすカリスマであると自称する〜
ボッチと同じ部活に属する皇帝が主人公です。

兄弟作(短編)
魔女の魔女狩り〜異端者による異端審問は大虐殺〜
ボッチと同じ学園の風紀委員(ボッチ達の敵対組織)の一人が主人公です。

英雄譚(短編)
怠惰な召喚士〜従魔がテイムできないからと冤罪を着せられ婚約破棄された私は騎士と追放先で無双する。恋愛? ざまぁ? いえ、英雄譚です〜
シリーズにおける史実、英雄になった人物が主人公の英雄譚《ライトサーガ》です。

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